新垣結衣と早瀬憩が感じた映画『違国日記』の衣装と美術の力。他者とのコミュニケーションで大事にすることは?

2024.06.03

制服一つとっても役の立ち位置を表してくれるもの。

新垣:原作を読んでいると、槙生ちゃんは意外と色々な服を着ています。部屋でのシーンが多いので、スウェットだったりリラックスできるようなラフな服装の印象が強いのですが、誰かと会って外食をしたり仕事の打ち合わせで着ている服には、パンツもスカートもあれば、アクセサリーを着けているときもあります。流行りに合わせているわけではなく、彼女が心地いいと思っているものを着ているのだろうな、ということを感じられますが、テイストが様々だったため「こういうアイテムで」と決めてしまうよりも、私が着てみて槙生ちゃんらしいシルエットになるところを探していくうえで、今回はサイズ感がポイントになったように思います。

新垣:衣装もそうですし、メイクも含めたビジュアルは、お芝居を助けてくれる大事な存在です。役を考えるうえで、メンタルに影響を与えてくれるものでもあります。

早瀬:今まで演じてきた役は幼少期が多く、大体の衣装が制服でした。とはいえ、制服一つとっても「どんな学校なのか」などを考えることができて、役の立ち位置を表してくれるものだと思います。例えば地方の学校に通っている子で、本人が「行きたくないけれど行かないといけない」感じだったら、着こなしにもその雰囲気が出てくると思うんです。今回の朝の制服はネクタイなのですが、私が朝に対して、勝手にリボンのイメージを持っていなかったため、とてもしっくりきました。

様々なことに納得して向き合っていきたいなと思っています。

新垣:こだわりというものは、ない気がします。基本的なことでいうと、不安になったりわからなくなったり、自分の中で呑み込み切れていないことがある場合は然るべき人にちゃんと聞いて、クリアにすることくらいでしょうか。そうするとその後の自分の気持ちが健やかになるので、心がけていることです。様々なことに納得して向き合っていきたいなと思っています。

私自身、新しい環境や人との出会いにちょっと構えてしまったり、初めてのことに不安を持ってしまうタイプなのですが、このお仕事はたくさんの人に出会い、どんどん新しい一つの作品を創り上げていくものです。だからこそ、いまのマインドとしては「できる限り楽しみたい」に重きを置いています。自分が楽しめる方法は何だろうと考えたとき、やっぱり力が入りすぎていると苦しくなってしまうから、力を抜くためにも「ふざける」ということをよくやっています。それが自分一人で完結するときもありますし、共演者の人やスタッフさんとのコミュニケーションを取るきっかけになることもあります。あくまで自分が楽しむためにそうしているのですが、今回、憩ちゃんがそういう一面を見て「良かった」と言ってくれたように、いい影響を及ぼせる瞬間に恵まれるとほっとします。

早瀬:私は、スタッフさんやキャストの皆さんとたくさんコミュニケーションを取ること、わからないことはちゃんと聞くこと、目を見て話すこと、以上です!

「一つの作品を作る」という同じ目標に向かって頑張っているから、コミュニケーションを積極的に取って良い関係を築いていた方が一致団結できるのかなと思いますし、私自身が“かまちょ(構ってちょうだい)”なのでおしゃべりしないと気が済まないところもあります(笑)。

新垣:撮影の2日目くらいに「そこまで聞かせてもらっていいんでしょうか」という大事な話をしてくれました。そのことによって「憩ちゃんはこちらを信頼してくれているんだな」とすごく感じましたし、自分にできることがあれば何でもしたい、そういった気持ちで憩ちゃんに向き合いたいと、より強く思わせてくれるきっかけになった出来事でした。

新垣:自分が出演している作品で申し訳ないですが、『くちびるに歌を』でしょうか。15歳のお話で、そのときならではの苦さと美しさがすごく感じられますし、素朴さもあって、私自身も10代の頃に観たかったなと思えた映画でした。良かったら、原作小説も素晴らしいので読んでもらえたらな、と思います。歌うシーンもあるので、ひょっとしたら今回の映画で歌に挑戦した憩ちゃんの役に立つかもしれません。

早瀬:私は結衣さんにオススメするというより、単に自分がいま昔の映画にハマっているのですが――原田知世さんが主演された『時をかける少女』や『転校生』がすごく好きです。いまはもうできなくなってしまったことがたくさんあるように感じて、観ていてとても面白いんです。元々、『違国日記』でショートヘアにしたのでショートヘアの女の子が主人公の映画を観てみよう、と思って出合ったのが『時をかける少女』でした。

新垣:そうなんだ。まだ観てなかったから、観てみるね。

Yui Aragaki 1988年生まれ、沖縄県出身。2007年に公開された主演映画『恋空』が大ヒットとなり、第31回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。『ミックス。』(’17年)では、第41回日本アカデミー賞優秀主演女優賞、第60回ブルーリボン賞主演女優賞を受賞。近年の主な出演映画は『劇場版コード・ブルー −ドクターヘリ緊急救命−』(’18年)、『ゴーストブック おばけずかん』(’22年)、『正欲』(’23年)などがある。テレビドラマでは、「コード・ブルー −ドクターヘリ緊急救命−」シリーズ、「リーガル・ハイ」シリーズ、「逃げるは恥だが役に立つ」、「獣になれない私たち」、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、「風間公親 −教場0−」などに出演。

新垣さん着用:
シャツワンピース ¥162,800 プルーン・ゴールドシュミット(メゾン・ディセット TEL 03-3470-2100)/ ネイビーのスウェットベスト ¥20,900 チノ(モールド TEL 03-6805-1449)/ ベージュのスラックス ¥46,200 ハイク(ボウルズ TEL 03-3719-1239)/ シューズ ¥51,700 ニードルズ(ネペンテス ウーマン トウキョウ TEL 03-5962-7721)/ ピアス ¥26,400、左手人差し指のリング ¥99,000 マリハ(TEL 03-6459-2572)/ 右手人差し指のリング ¥27,500 セルジュ・トラヴァル(アッシュ・ペー・フランス  hpfrance@hpgrp.com)/ 右手薬指のリング ¥26,950 プリュイ(プリュイ トウキョウ TEL 03-6450-5777)

Ikoi Hayase 2007年生まれ。’23年、日本テレビ「ブラッシュアップライフ」に門倉夏希の中学時代を演じて注目を浴びる。フジテレビ「うちの弁護士は手がかかる」(’23年)にも天野杏(中学生時代)役として出演。雪印メグミルク「雪印北海道バター」やSUPER BEAVER「決心」のMVにも出演し、これからが期待される俳優。

早瀬さん着用:
ブラウス ¥6,980 Somari(シアンPR TEL  03-6662-5525)/ パンツ¥34,100 PANORMO(TEL 03-6455-3466) / 左手人差し指のリング ¥71,500、右手中指のリング ¥85,800、左耳につけたイヤーカフ ¥55,000、右耳につけたイヤーカフ ¥35,200  e.m.(イー・エム 青山 TEL 03-6712-6797)/ その他スタイリスト私物

『違国日記』
監督・脚本:瀬田なつき
出演:新垣結衣、早瀬憩、夏帆、小宮山莉渚、中村優子、伊礼姫奈、滝澤エリカ、染谷将太、銀粉蝶、瀬戸康史
2024年6月7日(金)より全国公開。
配給:東京テアトル ショウゲート
©️2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会

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