
“軸じゃなく、ど真ん中にいないキャラがいい” —くっきー!
──作り手としてのお話を伺ってきましたが、受け手として、お二人がつい惹かれてしまうのはどんなキャラクターでしょうか?
くっきー! サブキャラとか弱いやつ、カッコ悪いやつが好きです。子どもの頃、脚が速いみたいなタイプじゃなかったので、それを自分の中でカッコよくないもんやと思い込んでいるのかもです。別のやつのほうがカッコええって。
枝 私も真ん中にいけないタイプなので、そういう登場人物を描くのがあまり得意ではないです……。
くっきー! 僕、持論があるんですけど、もの作る人は、ひねくれてたから今があるんちゃうかと思いますよ。
枝 そうか、「脚が速かった人」も楽しめるものを届けたいから悩むのかもですね。今、31歳なのですが、ものを作る友達は、皆、お茶の間に行くか、自分を貫くかで悩み始めていて。くっきー!さんはそういう時期はなかったですか?
くっきー! 僕はやりたいことだけをやっているからないですね。それは、もともと芸人になろうと思ってなかったからかも。嫌なことやって稼ぐくらいなら、好きな貧乏でいいっていうままこられてラッキーという感じなんです。幸運にも気持ち悪いキャラを面白いと言ってくれる人が出てきて日の目を浴び始めてから、ずっとこういう(写真上)、ねじ曲がった状態です。チェチェナちゃんも急に「かわいい」って言われ出したけど、40過ぎのおっさんがレオタード着てエリザベスカラーつけてるのは、普通は激ヤバです。
枝 時代が追いついた!
くっきー! その時期から仕事が増えて、飯いっぱい食えるようになって太り出していくんですけど、それもキャラにはよかったのかもしれないですね。ほら、太刀魚よりジュゴンのほうがかわいいじゃないですか。
枝 太刀魚とジュゴンは別物では……。私が好きなキャラクターはコジコジです。さくらももこさんの作品には「ちびまる子ちゃん」しかりブラックジョークが多いのですが、それがよくて。コジコジは特に、地球人が苦しんでいるような一般的な概念をひっくり返してくれるようなところがあって痛快です。
くっきー! "邪"はいいですよね。
──では、お二人が互いをキャラクター化するならどんなキャラを作りますか?
枝 えっ、なんですかその質問……(しばし考えて)。「走らない人」。
くっきー! すごいな、なんだそれ。
枝 走ってる人の横でずっと体育座りして、絵を描いているだけの子で決定です。
くっきー! 枝さんはあれですね、今ずっと聞いてたら「我関せず」という人なので、野鹿みたいに森をへたへた歩いてるビッグフットみたいなキャラクター。
枝 ちょっと?
くっきー! そういったキャラが町に下りてきて人と触れ合って、最後に、毛むくじゃらやけどセーラー服着て学校に通った! みたいな話、泣けるじゃないですか。すごくいいですね。 枝 私というか、それ、全然くっきー!さんで脳内再生されてます(笑)。
COOKIE!
1976年生まれ、滋賀県出身。’94年にロッシーとお笑いコンビ、野性爆弾を結成。独創的なキャラクターとネタに多くのファンが。絵画制作や音楽活動でも活躍。バイクやヴィンテージへの深い造詣でも知られる。近著に『愛玩哲学』(ポプラ社)。
Yuuka Eda
1994年生まれ、東京都出身。2017年に初長編映画『少女邂逅』を監督し、高い評価を得る。主な監督作にドラマ「神木隆之介の撮休」「墜落JKと廃人教師 Lesson2」「コールミー・バイ・ノーネーム」など。連載「主人公になれないわたしたちへ」は本誌p126へ。
装苑2025年7月号掲載