お笑い芸人 くっきー!(野性爆弾)×
映画監督/写真家 枝 優花
それぞれのキャラクター創造論

2025.06.10

一言で「キャラ設定」や「キャラ作り」といっても、その方法論は作る人の数だけ存在する。優れたキャラクターを送り出してきた様々な分野のクリエイターたちが、その独自のメソッドを特別に開陳!

photographs : Norifumi Fukuda (B.P.B.) / interview & text : SO-EN

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それぞれのキャラクターの創造論 

くっきー! ええ、ほぼ主役ですわ。

枝優花(以下、枝) まあまあ(笑)。"ご飯もの"は主人公が一人であることが多いのですが、「ゲレンデ飯」はそれを男女二人でやるというところと、ゲレンデが舞台になることがベースにありました。自分たちの世代にある「別に恋愛なんていらない」みたいな空気の中で、あえてそれを裏切って男女のロマンスをご飯ものでやろう、と。その中で、ゲレンデと東京の場面をシーンバックさせたいという話があがった時に、東京パートはわちゃわちゃさせたくて、バーにいる人たちが奇想天外になっていったんです。こんなキャラクターを誰がやれるのと思ったら、プロデューサーが、スッとくっきー!さんを提案して。

くっきー! とても丁寧にやらしてもらいました。何回バーに行って役作りしたことか。

枝 いやいやいや(笑)。くっきー!さんの場面は全員で笑いをこらえてましたよ。

くっきー! 地方とかにある、誰がくんねんみたいな帽子屋に入って、誰も買えへんわけわからん帽子を買って合わせていくうちにキャラができて、名前をつけようみたいな流れが多いですね。アイテム発信が多いです。

くっきー! ザビエルみたいなエリザベスカラー、あれ、昔から憧れだったんです。首に輪っかつけるってどういうこと?って。チェチェナちゃんは最初、首回りが寂しくてヒラヒラした布を巻いてたんですけど、衣装を作れる人と知り合ってからは、色違いで4つくらい作ってもらいました。首回りは一番人間味が出ますからね。顔と違って、首って隠し忘れがちっていうか、隙が出るんですよ。

 首に人間味……? か、考えたこともなかった。私はものからの発想はほぼないので面白いです。人からの発想もあるんですか?

くっきー! 誰かとかぶってしまうのが好きじゃなくて、基本的にロールモデルはいないですね。イメージから膨らむことはあります。ベンジャミン・ボーナスっていうキャラクターは、ホラーやサイコ系のイメージから、白髪で三つ編みのキャラ造形になりました。

 私はそこまでファンタジーをやっていないので、自分自身の内面や、身近にいる友達から登場人物を作ることが多いです。

くっきー! それは志村けんさんスタイルですね。実在する居酒屋の女将さんから「ひとみばあさん」が生まれるみたいな。

 光栄です!

“大切なのは、表側ではなく心の動き”—枝 優花

 そうですね。映画やドラマの演出法として、人物は内面から作っていくのが基本です。「この人は笑顔のキャラクターです」というのではなく、笑顔になるまでの心情を伝えて、その結果、笑ってもらえるようにします。大切なのは表側ではなく心の動き。ただコメディは全部にリアルを込めると重たくなっちゃうので、「ゲレンデ飯」の主人公の(矢野)翔平なら(広瀬)雪を好きな気持ちはガチ、とかおいしい!っていうリアクションは本当のものを撮れるようにしました。

 めっちゃキャラクターでやりました。

くっきー! おかしいですやん。一番自分が納得してへん形ですやん。

 特例です(笑)。芸人さんには細かいことを言うより「キャラクターはこういう感じです」とお話ししたほうが伝わる感覚があって。

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