
「TYPE-XIV Eugene Studio project by A-POC ABLE ISSEY MIYAKE」より。
A-POC ABLE ISSEY MIYAKE(エイポック エイブル イッセイ ミヤケ)が、パリのアートフェア「アート・バーゼル・パリ」の期間中に、特別展「TYPE-XIV Eugene Studio project by A-POC ABLE ISSEY MIYAKE」を開催。現代アーティストの寒川裕人(かんがわ・ゆうじん)およびユージーン・スタジオとのコラボレーションによる新プロジェクトを披露した。

ADのあとに記事が続きます
ADのあとに記事が続きます
このプロジェクトは、寒川の代表作『Light and shadow inside me』シリーズから着想を得たもの。きっかけは約4年前。デザイナーの宮前義之(みやまえ・よしゆき)が、東京都現代美術館で開かれた個展「ユージーン・スタジオ 新しい海」を訪れたことだった。

絵画『Light and shadow inside me』と制作に用いた道具の展示。© ISSEY MIYAKE INC.
アイデアソースとなったそのシリーズは、太陽光の退色を用いた碧緑色の作品と、印画紙を用いたモノクロの作品の2種類がある。碧緑色の作品は、水彩塗料を全面に塗った紙を多角柱状に折り、太陽の光を数週間当てて退色させている。モノクロの作品は、カメラやフィルムを使わない写真であるフォトグラム。これらは、紙と光が持つ力という2つの要素によって、美しいグラデーションを生んでいるのだ。


ユージーン・スタジオによる作品制作の記録なども展示。碧緑色の作品は、150通りもの塗料と紙の組合せの実験を経て完成したという。

迫力あるフォトグラム版『Light and shadow inside me』の展示。
「すべての物事は、他者との関係の前に、存在する時点ですでに光と影を持ち合わせている。それを作品自らが実践するような絵画、平面作品を模索してきました。簡素な構造ですが、その日の気温や湿度、光の量など複雑な要素が絡み合い、同じものは一つとして現れません。私は本作を、光を唯一の画材とする絵画として捉えています」と寒川。

宮前さん(左)と寒川さん。展示会場にて。
今回の協業で、A-POC ABLE ISSEY MIYAKEはこのプロセスをさらに発展させ、一枚の布の本質へ立ち返った。そこから作られたのは、白と黒の糸のみを用い、織組織の密度によってグラデーションを実現させた特別なテキスタイルである。

会場には、そのテキスタイルで作られた複数のアイテム「TYPE-XIV」も展示。インスタレーションのデザインは、パリを拠点とする建築家の田根剛(たね・つよし)が手がけ、光と影が織りなす没入型の空間が来場者を迎えた。




日本では11月15日(土)より、ISSEY MIYAKE GINZA / 445のCUBE、およびISSEY MIYAKE SEMBAのCREATION SPACEにて、パリでの展示空間を再構成。絵画作品とテキスタイルに加え、両者が制作に用いた道具を通して、プロジェクトの全体像を紹介する。
また、同日より「TYPE-XIV」を一部店舗にて発売予定。
Photographs & Text:B.P.B. Paris