
東京・東向島に店を構え、海外発の気鋭ブランドや国内外のデザイナーズヴィンテージ、アンティークなど幅広いジャンルのアイテムを展開して人気を集める「モードの悲劇」。
同店舗でオーナーを務めるのが、ビスポークテーラーやKei Kagamiの元で研鑽を積み、自身のブランド、オブセス(obsess)を手がける北田哲朗さんと、北田さんのパートナーであり、タカヒロミヤシタザソロイスト(TAKAHIROMIYASHITA.TheSoloist)で経験を積み、現在は自身のブランドであるジュース(JUICE)を運営するヤナ・ダーメンさんだ。

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墨田区の住宅街、路地裏にひっそりと佇む同店舗は、かつて私娼窟だった場所を改装している。場所の選定理由について「人目につくような場所ではなく、目指して辿り着くところ、僕たちの世界観に共感してくださるという方に来ていただきたいという思いがありました。この建物の歴史を知ったのは後のことでしたが、物件のストーリーにも意味を感じています」と北田さん。
店名の由来は、二人がこれまで洋服の作り手として感じてきたことを言葉にしたそう。「ファッションに対して悲観的に感じることが私たちの反骨精神となってやりがいに繋がっています。そういう名前をあえてつけることで、エネルギーが沸いてきます。ゴスマインドがあるのかもしれませんね」とヤナさんは、笑顔で教えてくれた。

店内には、ナンバーナイン(NUMBER(N)INE)やダーク ヴァン セーヌ(DIRK VAN SAENE)など国内外のデザイナーズブランドのアーカイブアイテムから、オブセス(obsess)をはじめとする現行ブランドのものまで、数多くのアイテムがラインナップ。
また、ビスポークテーラーとして長年勤めてきた北田さんの経験を活かし、着用者のスタイルや要望に合わせて作り上げるオーダーメイドのアイテムや、激しくダメージを受けたアイテムをただ直すだけでなく、現代的にアップデートして再び商品として販売する取り組みなども行っている。
それらの試みの背景には、これまで洋服の作り手としても活動してきたお二人だからこそ抱く、顧客と洋服の関係がもっと深いものになってほしいという熱い願いがある。
「SNSの存在やオンラインストアの影響による利便性の向上に伴い、深層的なレベルでの人との関わりは希薄なものへと移り変わっていると感じます。こんな時代だからこそ、お互いに好きなファッションを通じ、思いや気持ちを共有していきたいです。今までも、そしてこれからも、そうやってファッションの文化は続いていくと信じています」とヤナさん。
洋服の歴史や背景のみならず、顧客に対しても真摯な姿勢で向き合うその接客が、今では近隣に住む人々の間でも徐々に人気を集め始めているとのこと。洋服に対する新たな価値観を得たいと感じる読者のあなたは、是非足を運んでみては。
STAFF SNAP!!

オーナー 北田哲朗さん(左)/ ヤナ・ダーメンさん(右)
RECOMMENDED ITEMS

ジャケット ¥89,000 THIMISTER
「地中から掘り起こされた遺物がコンセプトとされるジャケット。
実際は “服のキャンパス”として様々な加工やペイントが重ねられ独特の経年変化を思わせる風合いが生み出されています。現在ではこうした“あえて”のエイジング加工が広く評価され、人気を博していますが、ティミスターが手がけた当時は極めて反骨的で先進的な表現でした」(ヤナさん)

トップス ¥170,000 obsess
「テーラリング技術を基盤に、構造に干渉するチェーン装飾によるドレープや、16世紀の美術様式であるグロテスク表現を用いたビジュアルプリントなど、古典的な技術や美学に根ざしながらも、まったく新しいかたちで生み出された衣服です」(北田さん)

ブラトップ ¥40,000 MILK OF LIME
「モードの悲劇では初の取り扱いとなる、ドイツを拠点に活動する2人組による現行ブランドです。服のシルエットやスタイリングの提案、制作へのアプローチは非常に現代的でありながら、アーカイブファッションの再評価が進む今の時代性も感じさせる、新しい感覚のブランドです」(北田さん)

モードの悲劇
住所:東京都墨田区墨田3-12-5
営業時間:14:00~19:00
定休日: 火・水・木曜日
Instagram:@modenohigeki
photographs: Josui(B.P.B.)