寺田典夫さんインタビュー
変わらない軸と、卒業後に得た知見
国内生産の素材やパターン、縫製にこだわったオーセンティックかつ現代的なユニセックスウエアを提案するヨーク。デザイナーの寺田典夫さんは美術大学を中退後、1年アルバイトをして資金を貯め、文化服装学院服装科に入学。
文化服装学院生時代
1、2年は課題に必死にくらいつく日々。バイトを掛け持ちし、徹夜で学校に行くこともあった。グループ制作した3年の卒業ショーではオープニングを飾った。
「結果的に文化には3年通ったのですが、大学に2年行き、その後1年のブランクもあったので、最初は2年間で卒業できる学科を選択しました。同級生には雑誌『TUNE』に出ている人が多く、彼らの着こなしが何より刺激に。当時はエディ・スリマンの時代で、国内外のブランドに活気もあったんですよね。やはり3年通ったのは大きく、デザインに集中した最後の1年間は稀有だったと思います。学生時代に作っていたのも、今と変わらないリアルクローズ寄りの構築美を志向した服。縫製をきれいに仕上げることを当時から意識していて、それを先生や友人に褒めてもらったことが記憶にあります」
卒業後はOEM会社や国内ブランドの社員、フリーのデザイナーとして約10年の経験を積んだ。そこで学んだのは「売る意識」だという。
「〝川下〟を長く見てきたことで、どのくらいの量をどう売るかという視点ができました。誰でもデザイナーになれる今、作ったものをどう見せて売るかが重要で、それを学生時代から理解していたら、作るものが変わっていくはず。また、仕事はいろんな人に助けてもらって成立するものです。文化のあの課題量に耐える忍耐力は社会でも絶対に役立つので、一人で突き詰めること以外も学べたらいいな、と感じますね」
2023年春夏には初めてパリで展示会を行い、ブランドは新たなフェーズに入りそうだ。
「興味を持たせるフックやわかりやすい世界観がないと、見てももらえないことをパリで実感しました。また、国内の生産背景は今、とても厳しい状況です。生産の現場に貢献するためにも、良いルックを作ってきちんと実売につなげたい。上質でオーセンティックなだけではない魅力がある服作りの体制を整えていきたいです」
2023SS
職人の手作業でスプレー染色したトレンチコート ¥101,200
モヘアシルクのニットシャツ ¥44,000
インクジェットプリントニットパンツ¥52,800
ジャカードカバーオール ¥71,500 ヨーク(エンケル)
アメリカの抽象表現主義の画家、ヘレン・フランケンサーラーによるステイニング技法の色やそのにじみ、融合が着想源に。染料をスプレーで吹きかけ繊細なグラデーションを表現したトレンチコートや、インクジェットプリントでグラデーションを作ったニットパンツ、群馬県桐生産のオリジナルゴブラン素材のカバーオールジャケットが際立つ。
『Imaging Landscapes Painting by Helen Frankenthaler 1952-1976』Rizzoli
2023SSの着想源になったもの
’19-’20年秋冬より、一人のアーティストをフィーチャーしてコレクションを制作。’23年春夏コレクションでは、アメリカの抽象画家、ヘレン・フランケンサーラーをテーマにした。
photographs: Jun Tsuchiya (B.P.B.)
Norio Terada
1983年生まれ、千葉県出身。2008年、文化服装学院服飾専攻科デザイン専攻を卒業。卒業後はドメスティックブランドやセレクトショップなど数社でデザイン、生産管理を経験。’16年独立、’18-’19年秋冬にブランドをスタート。東京ファッションアワード 2022を受賞し、’22-’23年秋冬にショーを開催。
WEB:https://www.yoketokyo.com/
Instagram:@yoke_tokyo