同級生スタイリスト集合! 座談会
相澤 樹、小松嘉章、髙山エリ、山口壮大

2023.08.14

左から小松嘉章さん、相澤樹さん、髙山エリさん、山口壮大さん

1970年代の「花の9期生」に代表されるように、文化服装学院にはいくつものゴールデンエイジが存在している。現在、ファッション業界で活躍する多くの優れたスタイリストを輩出した、スタイリスト科(現・ファッション流通科スタイリストコース)の黄金世代である、相澤樹さん、小松嘉章さん、髙山エリさん、山口壮大さんの同級生座談会をここで。4人が過ごした情熱的な日々から現在大切にしていることまで、たっぷり語っていただきました!

photographs: Jun Tsuchiya (B.P.B.)

エネルギーにあふれた、「黄金世代」の日々

相澤 樹(以下、相澤) 1年生の時に、こまっちゃん(小松嘉章さん)と私が同じ7組で、エリと壮大が廊下を挟んで向かいの8組だった。学生時代からいまだに仲がいい、数少ない友達がこの3人。

小松嘉章(以下、小松) 正直、文化卒で会ってる友達なんてそんなにいないんだけど、3人とは会い続けてる。頑張ろうって思える存在なんだよね。

髙山エリ(以下、髙山) 同じスタイリストといっても、みんな異なるジャンルに行ったよね。

山口壮大(以下、山口) この人はこの分野が得意とかすごいみたいなことは、学生時代から意識してたかも。

相澤 個性を認め合ってたよね。それを「うんうん」って聞いてまとめるのが小松。スタイリスト科のショーの企画係でこの4人が一緒になって、小松はその係の長だった。その時から今も全然変わらないよね。

小松 今、コレクションの演出などを手がけている保科路夫さんが先輩で、保科さんから「俺の次は、小松がやるんだ!」みたいなことを言ってもらえて、ついその気になっちゃって企画長を。本当に大変でしたよ! わがままな人ばっかりでさ。

一同 爆笑。

小松 でもサボる人なんていなくて、みんな熱心だった。係の中でモメたりもするけど団結力があって。

髙山 企画係の中のあるチーム長を壮大がやってたけど、壮大の見切り発車を、いつも後からフォローしてサポートしてたよ。今でも同じことをしてる気がする……(笑)。

山口 いやいや(苦笑)。学生の中でディスカッションは多かったけど、先生も厳しかった印象があるな。入学してすぐ、担任の先生にこの中の1%しかスタイリストになれないって言われてビビりました。

小松 そもそもアシスタントにつくまでのハードルが高かったよね。

相澤 当時はインスタのDMなんてないから、まず連絡が取れない。だから編集部に行って連絡先を教えてくださいって頼み込んだり。

髙山 私は、大森伃佑子さんが行くお店を常に張ってた。

相澤 私も飯嶋(久美子)さんが行く店を雑誌のクレジットでチェックして、そこでアルバイトしてたよ。

山口 僕も、北村道子さんのオフィスに向かう道すがらで朝6時から待ち伏せするのを1か月くらいやってた。

小松 そういう時、僕はすでにアシスタントについている同級生の存在が励みになってた。この年代は、スタイリストをやっている人が結構多いよね。影山蓉子ちゃんや杉本学子ちゃん、佐藤里沙ちゃんも同級生。

髙山 スタイリストだけじゃなくてRKみたいなカメラマンもいるし、ほかの分野で活躍している人も。

相澤 みんな面白いんですよね。私は特に、この3人の名前をクレジットで見ると感動しちゃう。「まれ」(2015年放送のNHK連続テレビ小説)で、衣装担当として流れてくるエリの名前を見た時は泣いちゃった。こまっちゃんは学生の時にやりたいって言ってたメンズの仕事をしているし、そうちゃんは東京2020オリンピックの表彰式の衣装の仕事をして。私もパラリンピックに関わったから感慨深かった。何年か間が空いても、会えば学生時代に戻ったみたいに話せる友達。

髙山 もう、すごく好き!

文化で学んでよかったこと、仕事をする上で大事なこと

小松 パターンから起こして服を作ったのは、やってきてよかったなって思う。テキスタイルの授業も。

相澤 私がやっていてよかったと思うのは、西洋服装史。クライアントは、私たちが当たり前に知っているものとして「1960年代のあの映画の感じにしてください」などと話を振ってくるもの。そう言われた時にすぐに対応できることが大事だから、朝日(真)先生の西洋服装史の授業は受けていてよかったな。今でもぱっと見て服の年代が分かるのは、授業のおかげ。

髙山 私は満遍なく勉強していてよかったなって思う。そこから得意なことを見つけて、深める人もいた。

小松 確かに、広く浅くいろいろやれたのはよかったね。染めもやったし、中川(清美)先生のアクセサリーの授業も覚えてる。

相澤 自分が何を好きか知るチャンスがたくさんあったね。

山口 僕らが文化に通っていた頃は、クリエイティブなことができれば、仕事もできるようになると信じていられたから、比較的みんな、どうやってファッションを楽しむか、どんな着こなしをするかに関心が向いていたと思う。今の学生と接していると、違うのはそこかなって。せっかく文化服装学院に入っているのに、クリエイティブなことと仕事がつながっていない学生が多い気がする。厳しい社会だからこそ、夢のあるファッションを描いてほしいと思う。

相澤 今の学生はもう少し現実的かもしれない。それから情報があふれていたりデジタルネイティブなぶん、資料作りやプレゼンテーションは私たちよりも抜群にうまくて面白い。ただ、現実を突きつけられるとフニャッてなってしまう子は多いかも。やっぱり一番必要なのはパッション、「思い」なんじゃないかな。あれこれディスカッションしていたのも、みんなで頑張ろうっていう熱量があったからこそだった。

山口 「情報」は基本的に良い部分しか出てこないもの。一つの成功の陰に何百という失敗が積み重なってる。自分がアクションした結果をリアクションで測ろうとどこかで思ってしまうと、アウトプットにも臆病になってしまうかもしれないね。そこを恐れずにやることも大事なんだと思う。

それぞれの現在地

山口 コロナ禍以降、僕がより自覚的になったのは「ファッションの裾野を広げること」。普通はファッションの領域に入らないようなことをファッションの知見で行って、既成概念にとらわれず、フレッシュに表現する。そうすることでファッションの魅力そのものが広がっていくんじゃないかと思って、文化の学生と行っている有志団体「CULTURAL LAB.」は活動しています。ファッション業界以外の人と話すと、ファッションに対して分からない、怖いと言われることが多くて。そこを翻訳していけたらと思ってるんだよね。

髙山 私はいい意味で、いろんなことを諦めるようになった。服がすごく好きだからその思いを貫けないことは選ばない。スタイリストになる前から服が好きだから、それだけは続けられると思ったんだよね。元いた場所にいる感じかな。

小松 僕たちがアシスタント時代に経験していた仕事の流れと、今はだいぶ変わっているよね。昔は雑誌の仕事をしてるスタイリストが業界を作っていたけど、今は紙媒体自体が減っていて、影響力も小さい。それが悲しいなって思うんだよね。ネットでもかっこいいものは作れるかもしれないけれど、僕は、簡単に見られて流れていくものよりも、残っていくアナログなものを大事にしていきたい。時代の流れに逆行しつつ、新しくて良いものが作れたらって。

相澤 分かるよ。誰かの心に響く1枚を残したくて、皆、この仕事を全力でしているよね。あと私もエリと同じで、ずっと変わらずに洋服が好き。買いたいものを買える人生にするっていうのが私の永遠のテーマで、そして誰よりも消費者でいたい。それは自分の宝物を増やしていくような作業で、スタイリストの仕事もそこにつながってるんだよね。作品を残すことが自分の財産、と思ってこの仕事を続けているけれど、キャリアを重ねる中で自分の名前が邪魔になることもある。いつでも20代の子と同じ目線で物事を見られる人でありたい、というのは、毎日自分に言い聞かせてるところ。年齢もジェンダーも関係なく他者の考えを聞けて、咀嚼できる人でありたい。一緒に考えるスタイリストでいたいというのも揺るがない部分なんだよね。

Miki Aizawa
1982年生まれ、宮城県出身。2003年、文化服装学院スタイリスト科(現・ファッション流通科スタイリストコース)卒業。同校を卒業したスタイリスト、飯嶋久美子に師事。ʼ05年に独立。雑誌や書籍などの紙媒体、広告、CMなどのスタイリングや衣装デザインでも活躍。

Yoshiaki Komatsu
1982年生まれ、秋田県出身。2004年、文化服装学院ファッションディレクター専攻(現・ファッション流通専攻科)卒業。ʼ09年に独立。メンズファッション誌を中心に、広告、CM、俳優、ミュージシャンなど、幅広く活動中。

Eri Takayama
2003年、文化服装学院スタイリスト科(現・ファッション流通科スタイリストコース)卒業後、スタイリスト、千葉浩子に師事。ʼ07年に独立し、ファッション誌から活動を開始。現在は映画やドラマのスタイリングも手がける。アシスタント募集中。

Souta Yamaguchi
1982年生まれ、愛知県出身。2003年、文化服装学院スタイリスト科(現・ファッション流通科スタイリストコース)卒業。ʼ06年よりファッションディレクターとして活動を開始。ショップ、展示・イベント企画、企業、ブランド、工場、職人と連携した商品開発を行う。

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