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映画と写真の道で刺激し合う二人の対話
内山拓也(映画監督)、川谷光平(写真家)

2023.08.14

左から川谷光平さん、内山拓也さん

文化服装学院スタイリスト科(現・ファッション流通科スタイリストコース)出身で、気鋭のクリエイターとして注目を浴びる映画監督の内山拓也さんと写真家の川谷光平さん。10代最後の時間を共有していた二人が、文化時代に過ごした日々と得たものは。

photographs: Norifumi Fukuda (B.P.B.)

「高校4年生」な時間から始まった未来への一歩

内山拓也(以下、内山) 川谷とは入学式の席が隣で、そこから1年生の間はほとんどずっと一緒にいて。

川谷光平(以下、川谷) クリストファー・ネメスでしょ。

内山 ネメス着てたなぁ。家も近かったから、川谷が近所で写真を撮ったり、一緒に下北沢や原宿に行ったり。学校の中もくまなく歩いてて、アパデ(アパレルデザイン科)の人が「そんな場所あるの?」っていうようなところもちょこちょこ行ってた。他科より課題に追われていないぶん時間があったし、何より、いろんなことに興味があったんですよね。よく一緒に図書館で写真集や雑誌を読みあさってたよね。

川谷 うん。設備はもちろん、立地や撮影場所としても、文化のリソースみたいなものは学生時代に十二分に活用したと思う。それを自由な時間に活かして本当に多くのことを学んだ気がするね。文化にはあらゆることを試す環境を提供してもらった感覚。

内山 そうだね。その自由な時間に自分が何をしたいかが見えた。ある種、高校4年生的な(笑)。

川谷 それは本当にそう(笑)。

内山 僕は1年の頃はスタイリストにしかならないと思って川谷とも作品撮りをしてたけど、2年の時にスタイリストのアシスタントで経験した映画の現場に魅せられてしまい、180度変わって映画作りそのものに携わりたいと思うようになった。服は好きだけど、本質的にしたいことはこれじゃないんじゃないかという気づきがあったんです。文化で学んで課題をやっていたからこそ、違う世界に生きる場所を見いだせたんだと思ってます。

川谷 写真は好きだったけど、自分にとってそれが一番ではなかった。それが作った服を撮影する課題を通じて、写真の位置づけが自分の中で変わった。思えばずっと雑誌が好きで、図書館でもよく昔の雑誌を見てたし、結局、ずっとファッションのビジュアル表現の部分が好きだったんだよね。自分がこの先何をしていきたいのかはっきり分かっていなかった中、課題をきっかけに写真に一気に舵を切った。それで部活(写真部)の特別講師だったカメラマンの方に紹介してもらって、2年の途中から撮影のアシスタントをするようになったら学校を休みがちになって……。文化祭の舞台係を内山と一緒にやってたのに僕が全然学校に行かず、内山に怒られたっていうのを、今思い出した(笑)。

内山 そんなこともあったね(笑)。

出会ったことがすべて

内山 僕は映画を作っていますが、学校では映画だけを学んでいなくてよかったな、と今にして思います。映画学校に行っていたほうがその世界に行きやすかったのかもしれないけど、ほかのジャンルのカルチャーに触れてきた時間や知識が、自分の血肉になってると思うから。そういう知識を最初に持っていたのは川谷で、教えてもらったことは今思うと本当にありがたかったな。

川谷 自分もほかの写真家とはキャリアが全然違くて、それがコンプレックスだった時期もあるけど、今は前向きに捉えてる。あとは地方出身者からすると、東京まで来て、ここでいろんな人たちに出会ったことがもうすべて。僕はくすぶっているような時期に、内山が監督した『ヴァニタス』をこっそり見に行ってて。入学式で隣だったやつが大きなホールで上映される映画を撮ったことは刺激になった。自分にとってあのタイミングであれを見たことは重要でした。

内山 僕は川谷のおかげで写真家や音楽、映画をたくさん知ったし、そう思うと、東京に来て一人でビクビクしながら入学式に行った日から、自転車に乗って毎日のように一緒にどこかに行っていた時間は、確実に今につながってるんだよね。違う人と友達になってたら、東京で今のように仕事ができている可能性は……。

川谷 もっと活躍してたかも!

内山 まあそれも人生(笑)。クリエイターとして生きるのが大変な時代に、入学初日に隣だった僕らがそれを続けてるのは運命的だと思うよ。

川谷 ドラマのネタみたいだね。

内山 物語に書きづらいくらいベタなことが現実では起こるね(笑)。

Takuya Uchiyama
1992年生まれ、新潟県出身。初監督作『ヴァニタス』が国内外で評価され、2020年の劇場長編映画デビュー作『佐々木、イン、マイマイン』で新人監督賞を総なめにする。King GnuやSixTONESのMVも話題に。

Kohei Kawatani
1992年生まれ、島根県出身。ロエベのウォレットキャンペーンやキコ・コスタディノフ×アディダスなどを撮影。2021年、ドイツのKASSEL DUMMY AWARDを日本人で初受賞し、写真集『Tofu-Knife』を出版。

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