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パリ市民の思い出が詰まった百貨店ラ・サマリテーヌが、16年の歳月を経て再開しました。
6月23日に新装オープンしたラ・サマリテーヌの店内。
安全上の理由から2005年に閉店し、大規模な改修計画のもと生まれ変わった新しいラ・サマリテーヌは、商業施設のほか5つ星ホテルのシュヴァル・ブラン(9月7日オープン)、公共住宅、オフィス、託児所を併設。多様性に富むサービスを提供する館内には、ガストロノミーのレストランやスパもあり、パリの新しいランドマークになることが期待されています。
パリの街に再び美しい姿を現したラ・サマリテーヌ。パリの中心、セーヌ川とリヴォリ通りの間にあり、ルーブル美術館やノートルダム大聖堂から徒歩数分の絶好のロケーションに恵まれている。
ラ・サマリテーヌは商人のエルネスト・コニャックと、ボン・マルシェ百貨店の売り子だった妻のルイーズ・ジェイによって1870年に創業。価格が明確に表示されていて、店内を自由に見てまわり試着できるという当時では革新的な販売方法が好評を博し、徐々に店舗を広げていきました。建築家のフランツ・ジュルダンに続き、アンリ・ソヴァージュが手がけた建物は、アール・ヌーヴォーとアール・デコがみごとに調和し、フランスの歴史的記念物にも指定されています。
LVMHグループ傘下のラ・サマリテーヌの改修事業は、フォンダシオン ルイ・ヴィトンと並ぶ一大建築プロジェクトとなり、今回の改築では遺産を保護しつつ、その価値を高めることを目指したそうで、建築設計を託されたのは妹島和世(せじま・かずよ)と西沢立衛(にしざわ・りゅうえ)の設計事務所SANAA。
SANAAが設計を手がけたガラスの新館。波打つファサードが特徴的。
刷新された商業スペースは他の百貨店と比べてコンパクトですが、ここでしか買えないエクスクルーシブな商品を揃え、パリの空気を存分に楽しめます。まさに「小さな百貨店、大きなコンセプトストア」という表現がぴったり。パリの見どころがまた一つ増えそうです。
ガラスの屋根は1905年のオリジナル構造に沿って再建。細部の装飾もすばらしい。孔雀のフレスコ画は建築家のジュルダンの息子で画家のフランシス・ジュルダン作。今回の修復作業によって色鮮やかに蘇った。
多様性は創業者が大切にしていたコンセプトなのだそう。新しいラ・サマリテーヌは機能や建築様式の多様性だけでなく、世代の異なるパリジャンからツーリストまで、利用者の多様性にも重点が置かれている。
創業者のルイーズ・ジェイの愛称がネーミングされたコーナー「ラ・ブティック・ドゥ・ルル(LA BOUTIQUE DE LOULOU)」。ここでは手頃な土産物などが提案され、セーヌ川を背景に記念撮影ができるコーナーもある。
ガラス越しに古い教会がそびえ、パリの情緒が感じられる店内。
ショッピングの途中で軽食をとれるフロアも。
地下にある「ダロワイヨ(DALLOYAU)」では、ラ・サマリテーヌ限定のパティスリーを販売。
村上隆の作品やアート関連のグッツが置かれる「ペロタン・ストア(PERROTIN STORE)」。
新進気鋭のブランドがセレクトされた新館の1階。
パン屋さんとレストランが合体した「エルネスト(ERNEST)」。エリック・カイザーのパン屋さんは通りに面し、朝7時から営業。2階のレストランは星を持つシェフ、ノエル・デノーが監修する。
La Samaritaine
9 Rue de la Monnaie 75001 Paris
公式サイト
Photographs:濱 千恵子 Chieko HAMA
Text:B.P.B. Paris