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パリのYMCAで開催されたパーソンズ・パリの卒展の様子。
パーソンズ美術大学のパリ校「パーソンズ・パリ(PARSONS PARIS)」の卒業制作展へ行ってきました!
パーソンズといえば、マーク・ジェイコブス、アナ・スイ、トム・フォードなど、著名ファッションデザイナーを輩出してきた世界トップレベルのデザインスクール。パリ校は本拠地ニューヨーク校のカリキュラムを取り入れつつ、伝統的なブランドやアトリエを擁するファッションの都パリで学べるという特色を持っています。
展示されるのは、ここで4年間学んだファッションデザイン学士課程(Fashion Design BFA)の修了生19人の作品です。
スポーツ施設として使われていた地下1階の会場。ここには修了生の作品1点ずつが展示されました。
上階には修了生ごとにブースを設置。彼らと話をしたり、ポートフォリオを見たりできる展示方法がとられていました。写真上はCelinda Woodwardさん、下はNile Guiraudさんの展示。
3度のロックダウンに見舞われたフランスではファッション界も教育現場もパンデミックに翻弄されましたが、「パーソンズ・パリ」では昨年秋より同課程のアソシエイトディレクターに、フィンランドのアアルト大学で手腕を見せたトーマス・ライティネン(Tuomas Laitinen)先生が就任。さらに今秋よりファッションデザイン&アートの修士課程(Fashion Design and the Arts MFA)が創設されます。
新たな取り組みについて「今年スタートする修士課程はファッションとアートのコース。より自由でオープンなクリエイティビティが期待できるはず。メンズ、ウィメンズ、ニットウェアといった特定のジャンルに縛られることもありません」とライティネン先生。「今のファッションに必要なのは喜び、楽しさ、創造性、エモーション、愛だと思います。それは計算するだけのプロダクトではない、心の底からくるもので、愛着を持ってずっと大切にしたくなるもの。コロナ後に人々が求めるものはそうしたことだと思うし、僕が学生に教えたいことでもあります」。
2006年からアアルト大学で教鞭を執り、ファッション科の目覚ましい向上に貢献したライティネン先生。ファッションとカルチャーの雑誌「SSAW Magazine」の共同創設者でありファッションディレクターを務めるなど、多岐にわたり活躍されています。https://ssawmagazine.com
また、パリとニューヨークのラグジュアリーブランドでデザイナーを務めてきた日本人の大森美希(おおもり・みき)さんもこの秋から両課程で指導にあたることに。大森さんは「20年間デザインの現場で働いてきました。そのリアルな体験や業界についての情報を学生たちに伝えていきたいですね」と話します。
パリのハイブランドでキャリアを積んだ大森さんは、ニコラ・ジェスキエールの「バレンシアガ」、アルベール・エルバスの「ランバン」を経て、「ニナ リッチ」のチーフデザイナーを務めた後、渡米。ニューヨークの「コーチ」ではシニアデザインディレクターを担っていました。渡仏前には日本の服飾専門学校で教員をしていたことも。https://note.com/mikiomori
ファッション教育を強化すべく、数年前から学校の新設や統合、学位制度の導入など、大改革が進むフランス。新メンバーを迎えたパーソンズはパリ郊外のロマンヴィルに700平米以上の校舎も開設したそうで、コロナ禍が収束に向かいつつある中、新体制への期待がますます膨らみます。
Photographs:濱 千恵子 Chieko HAMA
Text:水戸真理子 Mariko Mito(B.P.B. Paris)