若手ファッションデザイナーの登竜門、イエール国際フェスティバル(International Festival of Fashion, Photography and Fashion Accessories in Hyères)の今年の受賞者が決定した。
注目のファッション部門のグランプリ(Grand Prix of the Jury Première Vision)に輝いたのは、ベルギー人のイゴール・ディエリック(Igor Dieryck)。昨年、アントワープ王立芸術アカデミーを卒業し、現在、エルメスのメンズセクションに所属するデザイナーだ。
イゴールはグランプリのほか、Le19Mメティエダール賞 (Le19M Métiers d’Art Prize)と市民賞(Public Prize – City of Hyères)も獲得。トリプル受賞の快挙となった。
三つのトロフィーを手にしたイゴール。右隣は今年の審査委員長、シャルル・ドゥ・ヴィルモラン(Charles de Vilmorin)、その隣はLe19Mメティエダール賞を授与したシャネルのファッション・ナラティブ・ディレクター、ローランス・ドゥラマール(Laurence Delamarre)。
作品の着想源となったのはホテルのロビー。学生時代にアルバイトでフロント係をしていた経験がきっかけとなり、ひとつの空間を共有するさまざまな人々の関係からイメージを広げていったという。ホテルマンの制服をベースにプロポーションで遊んだシルエット、ウェイターが持つトレイからインスパイアされたチューブドレスなど、ユニークなアイデアをコンテンポラリーなコレクションに落とし込んでいる。
また、スウェーデン出身のペトラ・フェゲストロム(Petra Fagerstrom)がアトリエ デ マチエール賞(L’Atelier des Matières Prize)とメルセデス・ベンツ サステイナビリティ賞(Mercedes- Benz Sustainability Prize)をダブルで受賞。
ペトラ(右から4番目)と審査員たち。中央のプリーツのルックは、アトリエ デ マチエール賞の作品。
「アトリエ デ マチエール」は、2019年にシャネルの主導で設立されたリサイクル工房で、ファイナリストにはここから提供されたマテリアルで各自一体の作品を製作することが課せられている。
昨年、パーソンズ・パリを卒業したペトラは、バレンシアガで経験を積み、イタリアの国際コンテストITS 2022のファイナリストにも選出されていた。
コレクションのテーマとなったのはパラシュート降下兵だったペトラの祖母。意思が強く、勇敢で夢想家でもあった彼女をリサーチすることからストーリーを発展させ、祖母が着ていた花柄のナイトガウンやパジャマもインスピレーションソースになった。多用されたレンチキュラープリーツは見る角度で柄が変化。テクノロジーとロマンティシズムが融合する力作である。
All Show Photos : ©Courtesy of the Hyères International Festival for Fashion
Photos : Chieko HAMA(濱 千恵子)
Text : B.P.B. Paris