2024年春夏ウィメンズコレクションより。Photo : STYLE DU MONDE
ドリス ヴァン ノッテン(Dries Van Noten)の創業者兼デザイナーのドリス・ヴァン・ノッテンが、現職を退任することを表明しました。
6月に行われる2025年春夏メンズコレクションが最後のショーとなるそうです。続くウィメンズコレクションは長年にわたり仕事を共にしてきたスタジオ・チームが担い、後任デザイナーは適切な時期に発表するとのこと。そしてドリス自身、今後もメゾンに関わっていくとしています。
左は1994年春夏コレクション。Photo : RONALD STOOPS 右は2005年春夏ウィメンズコレクション。Photo : ANDREW THOMAS
1981年にアントワープ王立芸術アカデミーを卒業し、1986年にファーストコレクションを発表。“アントワープ・シックス”のひとりとして脚光を浴びた彼は、その後もメンズとウィメンズの両方で高く評価され、ファッション界の第一線を走り続けてきました。
左は2006-’07年秋冬メンズコレクション。Photo : PATRICE STABLE 右は2009-’10年秋冬ウィメンズコレクション。Photo : MATHIEU RIDELLE
今回の引退発表に際し、ドリスはその思いを手紙に綴っています。
「1980年代初頭、アントワープ出身の若者だった私が描いた夢は、ファッションの中に何かを伝える声をもつことでした。ロンドン、パリ、さらにその先へ私を導いたこの旅を通して、そして数え切れないほどの人々の協力や支えによって、その夢は実現しました。
そしてこれからは、これまで時間を割くことのできなかったすべてのことに焦点を移したいと思っています。
このように6月末をもって退任することをお知らせするのは悲しくもあり、同時に嬉しくもあります。私はこの時に備え、しばらくの間準備をしてきました。そして、新しい世代の才能がブランドに新たなビジョンをもたらす余地を残す時期が来たと感じています」
2010-’11秋冬ウィメンズコレクション。Photo : MATHIEU RIDELLE
手紙には、メゾンの設立当初から公私共にドリスを支えたパトリック・ファンヘルーヴェをはじめ、経営陣のプーチ関係者、生地メーカーやアトリエの職人、チーム全員への感謝の気持ちが述べられています。
そして最後に書かれていたのは、悔いなきデザイナー人生をしみじみと感じさせるメッセージでした。
「私たちの活動を愛してくださっているすべての人に、心からの感謝をお伝えしたいと思います。私たちの服が世に出るのを目にし、着る人の人生の中に、その服の居場所があることを知る…。そのことに、私は言葉では言い表せないほどの充実感を感じています」
左は2011-’12年秋冬メンズコレクション。Photo : PATRICE STABLE 右は2013年春夏ウィメンズコレクション。 Photo : PATRICE STABLE
2014年春夏ウィメンズコレクション。Photo : TOMMY TON
2016-’17年秋冬メンズコレクション。Photo : ANN VALLE
2020年春夏ウィメンズコレクション。Photo : MATHIEU RIDELLE
©️Chieko HAMA
以下は手紙の全文です。
A LETTER FROM DRIES
1980年代初頭、アントワープ出身の若者だった私が描いた夢は、ファッションの中に何かを伝える声をもつことでした。ロンドン、パリ、さらにその先へ私を導いたこの旅を通して、そして数え切れないほどの人々の協力や支えによって、その夢は実現しました。
そしてこれからは、これまで時間を割くことのできなかったすべてのことに焦点を移したいと思っています。
このように6月末をもって退任することをお知らせするのは悲しくもあり、同時に嬉しくもあります。私はこの時に備え、しばらくの間準備をしてきました。そして、新しい世代の才能がブランドに新たなビジョンをもたらす余地を残す時期が来たと感じています。
次の2025年春夏メンズコレクションが、私のドリス ヴァン ノッテンでの現在の役割における最後のショーとなります。
2025年春夏ウィメンズコレクションについては、長年にわたり非常に緊密に協力してきた私のスタジオ・チームが制作します。彼らは、必ず素晴らしい仕事をしてくれるでしょう。
今後適切な時期に、ドリス ヴァン ノッテンのメンズとウィメンズのストーリーを引き継ぐデザイナーを発表する予定です。
しかしながら、私は自分がとても大切にしているこのメゾンに引き続き関わることになります。
Marc Puig、Manuel Puig、Jose Manuel Albesa、Ana Triasをはじめ、私たちを信じ続け、さらに強力な会社の構築に協力してくれたプーチ(Puig)の関係者に感謝します。
また、ファブリックやアクセサリーのサプライヤー、アトリエ、メーカー、インドの刺繍に携わる人々、そしてたくさんの美しいアイディアを実現するために協力してくれたすべての人に感謝の意を表します。
ドリス ヴァン ノッテン・チームの全員にも感謝の気持ちでいっぱいです。この数年間、正確に言えば38年間、あなたたちは私にショーを開催し、ショップをオープンし、年に4つのコレクションを制作し、ドリス ヴァン ノッテンというブランドを今日の成功に導く機会とエネルギーを与えてくれました。
プーチが私たちのビジネスの一部となって以来、私たちが望むとおりに成長を続けることができました。ビューティーと香水のラインが加わり、アクセサリーを拡張し、eコマースをスタートし、エキサイティングで革新的なショップをオープンしました。このブランドには今、たくさんの花が咲き誇っている。庭と同じように、ここに何を植えるかを決めるのはあなたたちです。やがてそれは育ち、ある時が来れば花は咲き続けるのです。
そして言うまでもなく、私とともにすべてのコレクション制作に関わり、一番初めからこのメゾンを築くためにサポートし続けてくれたパトリック・ファンヘルーヴェに深く感謝します。
最後になりましたが、私たちの活動を愛してくださっているすべての人に、心からの感謝をお伝えしたいと思います。私たちの服が世に出るのを目にし、着る人の人生の中に、その服の居場所があることを知る…。そのことに、私は言葉では言い表せないほどの充実感を感じています。
そして今、私は確信しています。
ドリス ヴァン ノッテンの未来は、これからも明るく輝き続けることを。
ドリスの直筆のサインとポートレート。Illustration : Richard Haines
Courtesy of Dries Van Noten
Text : B.P.B. Paris