先人が築いた文化の一つ「お茶」をたしなむのもデザイナーとしてのアイデンティティだと語る上田碧さん。

「『The Book of Tea』という本の『茶気』という表現の中に込められた、『不足』『未完成』を大切にする心得に共感し、ブランド名にも引用しています。伝統を重んじながらも、自由なものづくりを目指し、最後は着用者の想像力を生かせる『器』のような服を作っていきたいです」

米軍研究施設の実験様子をイメージしたルック写真

米軍研究施設で、実際に作られた軍服のテストサンプルのリプロダクトをはじめ、当時のパターンや素材、工程などの実験の記録を様々な角度から参照し落とし込んだファーストコレクション。研究施設で記録のためだけに撮られた雑多な写真をイメージし、あえてポールや壁が映り込むように撮ったコレクションルック。

右 Tシャツ￥25,300、中に着たサーマルパンツ￥35,200、パンツ￥79,200  左 レインパーカ￥96,800、パンツ￥46,200

無駄を省いたシルエットと洗練されたメンズアイテムの数々は細かなところに職人技のような意匠が見られる。ファーストコレクションでは、マサチューセッツ州ネイティックの米軍研究施設で1960年代後半から’80年代前半にかけて研究されたユニフォームテーラリングの実験記録における様々な資料から着想を得たのだそう。

イメージルックでは当時、行われた軍服のテストの様子を再現。

「当時、軍服をテーラーが制作していたことから、ミリタリーのデザインをベースに、テーラリングのパターンやディテールをアップデートし随所に落とし込んでいます。服作りに限らず、ものづくりにおいて、歴史に立ち返る作業は大切です。なぜ今の服の形になったのか、経緯を見て知り、観察することで、より自然なフォームを模索できる。世のすべてのものは自然物ではなく、先人の努力の証しで、僕たちは彼らの遺産の相続人です。作り手として次世代に昇華し、つなぐ責務があると思っています」

米軍のCPOジャケットをベースに、衿やカフスの芯地にテーラリングで使われるフラシ芯を使用したジャケット￥118,800、セットアップのパンツ￥79,200

アメリカ空軍のラインマンが着ていたジャケットがベース。腕を上げる動作を想定した後ろ身頃と袖が一続きになったパターンが特徴。ジャケット￥50,600

ミリタリーのアンダーウエアをイメージし、肌にストレスのないアメリカンドライサーマルを使用。パンツのウエスト周りはあえてスラックスのディテールで仕上げている。トップ￥30,800、パンツ￥35,200

ステッチの上糸を生なり、下糸を紺色で固定し、縫製工場に一番合理的な縫い方を依頼し、縫い手の利き手によって向きが変わるステッチカラーが表出。さらに、リジット生地を採用することで、はく人が育てるデニムに。人とお茶が対等であった教えを用いてデザイナー・生産者・消費者が平等に服作りに関わる仕組みを実現。デニム￥41,800

古本から古本へブランド名を見つけた本

「昔から紙媒体でインスピレーション源を収集しています。古いアメリカのカタログ誌（上右）に載っているものを買って集めたりもしていて、東京藝術大学の創設者、岡倉天心さんの著書『The Book of Tea』（上左）もその中で出会いました」