2023年6月3日、京都駅内に位置する京都劇場で「ファッション カンタータ from KYOTO」が開催された。京都の歴史ある和装文化と、現代のブランドが発信する洋装文化との交流・融合を図り、京都から日本の服飾文化を発信する本イベントは、今回で29回目。今年は「きらめく私に、恋をする。」がテーマとなり、イベントのオープニングを、田中大資がデザイナーを務めるtanakadaisuke（タナカ ダイスケ）の2023-’24AWのショーが飾った。この記事では、そのショーの模様をレポートする。

tanakadaisuke 2023-’24AWコレクション

1.月の裏側の物語をコレクションに

「Behind the MOON」をテーマに掲げ、月の裏側の物語をコレクションで描き出す幻想的なシーズン。「闇で輝く信号」を物語に落とし込んだといい、モノクロームを基調にブランドが得意とするビジュー使いを際立たせた。刺繍で表現された“月”は、今期ならではのモチーフで、アクセサリーにも天体を想起させる形が登場。タナカ ダイスケ流の宇宙服を表現した装飾的なオールインワンも目を引いた。

2.得意のロマンティックに大人の洗練をプラス

ドレスはエレガントなロング＆リーンが基本。まるで素肌をレースとビジューで丁寧に飾り立てたかのようなルックや、ブラックレースを切り替えたベロアのセンシュアルなキャミソールドレス、ショーの終盤に登場したティアードケープは、ロマンティックなタナカ ダイスケの煌めきの世界に洗練が加わったことを感じさせるものだ。ショーの中盤に登場したダマスク柄のセットアップにも、しゃらしゃらと揺れるビーズ装飾が、ラペルやフラップポケット、袖口に施される。

3.布帛で表現する、タナカ ダイスケの新たな美しさ

精緻な装飾に目を奪われる一方で、ファーストルックを飾ったのは、サイドから背面が大胆にカットされたシンプルな黒色のスーツ。さらにグレーのワントーンで彩られたメンズライクなスタイリングやプリーツスカートつきパンツも登場し、その凛とした雰囲気には、一面的なロマンティックを超えていく新たなブランドのフェーズと意志を感じさせられた。

女性モデルも男性モデルも同じステージを歩き、その傍らには、巨大な宇宙船や隕石を思わせるオブジェが。シアトリカルな演出は、通常のランウェイショーではない劇場空間で見せる「ファッション カンタータ」ならではのものだろう。

手仕事で生み出された特別な服を纏い、舞台上を練り歩くモデルたちの神秘的な姿はまるで、真実の美しさをこの世界に伝えるためにやって来た使徒のようだった。

Show Credit :
Show Direction / Set Design : Fuminori Sakai
Production : VISIONS AND PARADOX
Styling : Eri Takayama
Show Stylist : Yumiko Ito
Hair : Hirofumi Kera
Make-up : Ai Nieda
Casting : Daisuke Shimana
Runway Photographer : Koji Shimamura
Backstage Photographer: Mitograph
Music:Taro Kobayashi (VDL)