洗練されたテーラードに込めた、個人史と日本史観。
SOSHIOTSUKI
Rakuten Fashion Week TOKYO 2024 A/Wレポート

2024.03.29

3月16日(土)19:00、渋谷ヒカリエホールA。漆黒のランウェイを、一列に並んだスポットライトが照らす。このようにいたってミニマルなセットでも、鮮烈な印象と余韻を残すのがソウシオオツキのショーだ。

SOSHIOTSUKIのブランドプロフィールはこちら

デビュー当時から「日本人の精神性」を題材にしてきたソウシオオツキ。今シーズンは、写真家、須田一政の作品集『風姿花伝』と出会ったことが創作の起点にある。須田の6×6判のモノクロ写真に日本人の思いやりを含有するような「品」と「死生観」を感じとったことが、重要な契機になったそう。

そしてもう一つ、大きな影響を与えたのは「父」の存在。長年、デザイナーの大月壮士さんの創作にインスピレーションを与えてきた父親が、制作期間中、病に倒れたことをきっかけに、長らくリサーチを続けてきた「神道」をいっそう個人的なものとしてとらえたのだという。日本人ならではの宗教観や道徳観、八百万の神などの日本古来の神観念を、洋服へと落とし込んだ。

「日本人の精神性とテーラーのテクニックによって作られるダンディズム」をブランドコンセプトに掲げる同ブランドは、今季もテーラードジャケットをコレクションの基調とした。1stルック(写真上左)はラペルを裏返し、裏地とポケットを表に見せたダブルブレストのスーツジャケット。通常であれば隠れるジャケットの内部構造をデザインとしたリバーシブルジャケットや、コンパクトなジレ、ウィメンズの服のディテールとして使われることが多いカシュクール風の前合わせを採用したジャケットも見られた。

ブラウンのニットには、大月家の家紋をモチーフにしたブランドロゴが、神社のしめ縄のようにあしらわれた。ケープコートやホワイトのオーバーサイズのダウンジャケット、コンパクトなきもの袖ともいえる変形スリーブのワークジャケットとパンツのセットアップも印象的だった。きもの袖が特徴の黒いロングコートは、袖に手を入れることで、腕や物を入れる所作の提案がなされており、実際に袖口から物を入れることも可能。

コレクションの変化球となったのは、経年変化を経て錆が付着したようなデニムや、薔薇モチーフを刺繍したベロアのスカジャンなど、メンズカジュアルの定番にひとひねりを加えたアイテム。2023AWに協業し、100円札グラフィックが話題を呼んだKOTA OKUDA(コウタ オクダ)とのコラボレーションも展開。全ルックを通じてネックレスやメガネチェーン、ウォレットチェーンなど数珠やタッセルがついたアクセサリーが登場した。これらは、シャコガイの貝殻や、サンゴ、翡翠、メノウ、オニキスなどの多種多様な天然素材で作られている。足元はMOONSTARのビジネスシューズライン「BALANCE WORKS(バランス ワークス)」のシューズをスタイリング。

紋付羽織袴を彷彿とさせるボクシースタイルのコートや、ステンカラーコートは、薄くしなやかに織られた尾州産のウールにオゾン加工を施している。強力な酸化作用によって毛のスケールを取り除き滑らかな生地に仕上げたことでドレープが強調され、美しいテーラードルックとして完成した。

フィナーレでラストルックのモデルを務めたのは、デザイナー大月さんの実父。どのモデルよりもソウシオオツキを着こなしていたのは、間違いない。コレクションタイトルは「good memory」で、より、個人史的な色が濃く現れていたシーズン。個人史と日本人の精神性、和装文化を結びつけ、西欧発祥の衣服にそれらを落とし込む。ソウシオオツキのイデオロギーが一つの完成形を見せていた。

SOSHIOTSUKI

WEB :https://soshiotsuki.jp/

Instagram : @soshiotsuki

RELATED POST

「洋服って楽しいなあ」ファッションの前向きなエネルギーを伝えたKota GushikenRakut...
2024AW 東京ファッションウィーク(Rakuten Fashion Week TOKYO 2024A/W)開幕!装苑的...
アイナ・ジ・エンドと広瀬すずが表紙を飾る『装苑』11月号の特集は「sympathy 共感がつ...
HIDESIGN(ハイドサイン)がファッショナブルに楽しむ機能服を提案。Rakuten Fashion ...
SHINYAKOZUKA(シンヤコヅカ)のISSUE #5は幻想と現実が交わる“冬のご馳走”をつめこ...
ラグジュアリーとは?大人になる道の途中で見せたYOHEI OHNO(ヨウヘイ オオノ)流の...
KANAKO SAKAI(カナコ サカイ)による女性身体への熟思とエンパワー。Rakuten Fashion...
脳が “バグ” を起こすような激しい表現でブランドの殻を破ったMIKAGE SHIN(ミカゲ ...
好きを諦めないでほしいから“永遠のお気に入り”をこめるコレクションFETICO Rakuten...
Marimekko(マリメッコ)が見せた、生誕60周年の人気柄ウニッコのポテンシャル。Rakut...
文化学園出身の100人のクリエイターをご紹介!