HAENGNAE(ヘンネ)がブランド初のショー形式で“愛”を紡ぐコレクションを発表
Rakuten Fashion Week TOKYO 2024 A/Wレポート

2024.04.08

アンナ・チョイさんが手がけるHAENGNAE(ヘンネ)が2024年秋冬コレクション(Chapter.07)をRakuten Fashion Week TOKYOにて発表した。

毎コレクションをChapterとして、物語を紡ぐようにコレクションを発表してきたヘンネのChapter.07となる2024年秋冬コレクションのテーマは「Loving Philosophy 愛でる哲学」。Chapter.01から06までのアーカイブを振り返り、象徴的なシルエットや素材を再構築。デザイナー自身が過去のアップデートをはかることで、新たな創作を探求した。

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Chapter.07は、ブランド初となるショー形式での発表となり、その会場はヒカリエ ホールA。ランウェイは夢を現実として魅せる“舞台”だと語るアンナさん。その言葉通り、ブランドの持ち味である二つの要素の融合——オートクチュールとプレタポルテ、ロマンティックとエッジィ、クラシックとモダン——を、視覚と聴覚のみならず、嗅覚にも訴えかけた。会場内には、ブランドコンセプトである“強きロマンチスト”を表すジャスミンとパチュリーから構成された爽やかな香りが漂い、シートにはブランドオリジナルのコレクションブックが置かれていた。クラシックピアノやバイオリンの音色をテクノミックスしたBGMにチェロの生演奏が重なり、ショーはスタート。

客席はひし形に配置され、中央ステージを囲うように座る。そこへモデルが1体ずつ登場し、観客に向けてゆっくりと1回転していく。足早にモデルがランウェイを歩くのではなく、ディティールやデザイン、素材をしっかりと見せるこの演出は、写真で見る往年のオートクチュールショーを思い起こさせた。

今コレクションでは、ブランドのキーカラーである赤(愛の色)・黒(芯の強さ)・ベージュ(それらを包み込む優しさ)を軸に、クラシックとモダンが入り混じるスタイルが展開された。大胆なシルエット、大ぶりのフリルやパフスリーブ、リボンがあしらわれたドレススタイルをその特徴とし、ニットやボディスーツ、レギンスなどの、街で人気のアイコンアイテムが登場。

これまではできなかった、糸の染めから行うものづくりが今季で実現したといい、そのことによってウールやカシミヤなどの素材も、デザイナーの目指すカラーに統一された。Chapter.05で作ったジャカードには新たにオリジナルのロゴを刻んで、上質に素材をブラッシュアップする試みも。シルエットは、マトリョーシカがキーワードになった。アンナさんが過去ピースと向き合った際に、オートクチュールメゾンが伝承するクラシカルなシルエットに繰り返しインスパイアされていることに気がつき、「リピート」という観念からマトリョーシカと結びつけてアイデアを広げていったという。ふんわりと大きく広がる洋服のシルエットに対し、小さなバッグを持たせることで人形のようなスケールのチグハグ感を表現している。

今回、初挑戦したキルティングは全てニットで制作され、新潟県のニット工場で1つ1つ丁寧に編み立てられているという。キルティングニットのAラインのフードコートは、シンプルになりがちな冬の着こなしに一石を投じるアイテムとして注目したい。

削ぎ落とされたメイクはメイクアップアーティストのUDAさんが担当。そのモデルの持つ素の美しさに、一点の少し癖のある口紅を刺すことで、今コレクションの強い女性像を現したという。ヘアーはNori Takabayashiさんが担当し、クラシカルなムードのあるミニマムなメイクに対し、異質な素材でクラシックなシルエットを作ることでモダンなヘアを作り込んだ。日本を代表する2人のアーティストのアイデアと技が見事に各ルックと調和していたのも印象深い。

モデルのキャスティングは、SAWAさんをはじめとするベテランモデルと新人モデルの混成で、新旧併せ持つブランドイメージが意識されていた。

ただ消費されていく“アパレル”を作るのではなく、生み出す責任を持ち、上質なものを作るという信条を持ったアンナさんにとって、作品のひとつひとつは、まさに慈愛の賜物。1stシーズンから愛を込めて制作した過去ピースと対話し、さらに愛情を込めてそれらを刷新することで過去に恩返しするようなコレクションとなった。

HAENGNAE
WEB:https://haengnae.com/
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