


18時半。期待と興奮に包まれた様子のM A S Uファンたちが来場する。中央のランウェイに集まる人、脇のモデルたちにカメラを向ける人、音響など運営側を見つめる人など、皆それぞれに、今この空間に満ちるあらゆる要素を見落とすまいと、全霊で隅から隅まで注視する。そこには、全身をM A S Uで固めたグループも、仕事終わりのスーツ姿でひとり駆けつけたような人も見られた。
「新木場を会場に選んだ理由の一つは、純粋に熱量の高い人に集まってほしかったから。都心から離れた場所にすることで、M A S Uを本当に好きな人だけが足を運んでくれるなと考えました。業界人っぽい人がたくさん集まるような場ではなく、もっとぐちゃっとしている方が好きなんです」






19時になるとモデルがランウェイに登場し、ルック撮影がスタートした。今シーズンは、「完成されているものよりも、ミスやエラーのあるものをそのまま受け入れる」という後藤さんの言葉から、長年着古して生まれる日焼け跡を加工したMA-1や意図的にほつれを生み出したという刺繍のニットなど、ユーズド加工が印象的なアイテムが数多く登場。
ブランドのシグネチャーであるポップコーンブルゾンには、トロンプルイユの衿がプリントされており、姿を現すとともに会場からは「お〜!」という感嘆の声が響き渡る。ルックのポイントで登場した新作バッグは、モデルが観客に回して見せる演出も。


次に登場するモデルが決まらず、「誰か準備できている人いますか?」とスタッフがマイクを使って呼びかけたり、撮影した写真を映すはずのパソコンに画像が表示されないというハプニングに、後藤さんがトークでその場をつなぐという場面も。撮影現場ならではの臨場感に、観客の盛り上がりもピークに達していく。
イベント終盤には、後藤さん自ら手渡しするプレゼント会が開催。来場者に配られたカードパスに記載された番号の中から、スタッフがランダムで指名した番号が当選となる。当選者はランウェイに上がり、たった今発表されたばかりの新作バッグをプレゼントされた。会場からは拍手と歓声が沸き起こり、その熱は最高潮を迎えて幕を閉じた。



なぜ、ルック撮影をリアルなイベントに昇華したのか?そう尋ねて返ってきた答えには、後藤さんがファッションに抱く真摯で、純粋な想いが滲んでいた。
「ルック撮影の現場を公開することで、ランウェイや写真を見ただけではわからないことを感じてほしいと思いました。ヘアメイクの人ってかっこいいなあとか、モデルって実際見たらこんなに迫力があるんだなとか、少しでも見た人の人生に何かきっかけを与えられることがあれば良いなと考えたんです。
もちろんファッションはビジネスとしての側面もありますが、最近はそうなりすぎている気がしています。それに対して、大きい声で『なんかちげえんじゃないの』って言いたくて。ブランドのファンが見られるイベントは今後も開催していく予定です。今回のような機会を通して、もっともっとこの世界を良くしたいなと思っています」
MASU
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