ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)は、相反する二つの要素の融合を軸に、ルネサンスへの憧憬を込めて。
2025年春夏パリ・ファッションウィークより

2024.10.04

2024年9月23日から10月1日まで、9日間の日程で2025年春夏パリ・ファッションウィークが開催され、100以上のブランドが公式スケジュールで新作を発表。今シーズンの必見ブランドをご紹介します

ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)がアーティスティック・ディレクターを務めるルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)のウィメンズのショーは、さまざまな時代に作られたトランクを敷き詰めた床が高くせり上がり、ランウェイとなる驚きの演出で幕を開けた。後から聞けば、これらのトランクは1,250個ものアーカイブだという。

この特別なランウェイ上に最初に現れたのは、大ぶりのパフスリーブにペプラムヘムの構築的なジャケット、スイムスーツのようなボディスーツをあわせたルックだった。ここでジェスキエールが試みたのは、ルネサンス時代と現代の融合。肩周りが大きなジャケットはルネサンス期のメンズのアウターを参照したもので、ボディスーツやバイカーパンツのオールインワンと合わせることで、歴史服の要素に現代性をプラスしている。このジャケットはハリのあるコットンやツイード、ベルベットで展開され、コレクションを象徴的に彩っていった。

今季のルイ・ヴィトンが掲げたキーワードは「ソフトパワー」で、硬軟のように相反する2つの要素の融合だ。構築的なシルエットを得意とするジェスキエールは、シグネチャーの構築性に現代的なエッセンスを加えてモダンに見せた。例えば、スクエア・ショルダーのガウンやブラウスは滑らかなシルクで作ることで、硬さと柔らかさの豊かなコントラストを描き出す。ウエストがシェイプされ、腰でフレアに広がる建築のようなラインのトップには、ロングとショートパンツが同居するアシンメトリーなドレープのボトムをスタイリングして、シルエットに見たことのない新風を吹き込む。重心を下めに置くプロポーションも新鮮で目を引いた。

また、シルクのハイネックワンピースにシフォンのチューブトップドレスをドッキングしたミニ丈のドレスには玉虫色に輝く大ぶりのビジューが装飾され、柔らかさの中に硬質の要素をプラス。このビジューは一つ一つシフォンで包まれており、輝きに複雑な陰影がもたらされていた。

アートの要素も重要なファクターに。ルネサンス期の絵画やフランドル絵画の様式と技法を用い、当時は解明されていなかった天体現象を描くことで鑑賞者に違和感を与えるフランス出身のアーティスト、ローラン・グラッソ(Laurent Grasso)の絵画シリーズ「Studies into the Past」より5点が、複雑な織り柄を伴ったブラウスやバッグに取り入れられた。このローラン・グラッソのブラウスとスタイリングされたフリンジスカートはスパンコールやビジュー、ブレードを複雑に組み合わせて作られたもので、ここには二次元の絵画と三次元的な輝きの融合が見られる。

ルイ・ヴィトンの真髄である伝統的な匠の技(サヴォアフェール)は、トランクにインスパイアされたバッグや、トランクのハンドルをベルト装飾として取り入れたサンダルに継承された。近世〜近代と現代、さまざまな二つの対立する要素が混ざり合う50体のコレクションには、錬金術的な手法で無限の可能性を獲得するファッションの創造性があふれていた。

Courtesy of LOUIS VUITTON 
Text : SO-EN

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