
2026年3月7日(土)、文化服装学院の学生によるファッションショーと展示「individual」が、Rakuten Fashion Week TOKYO 2026年秋冬の関連イベントとして青山グランドホールで開催された。
参加したのは、ポートフォリオによる1次審査と、デザイナーやメディア関係者、学内教員による2次審査を勝ち抜いた6ブランドの学生たち。うち5ブランドがランウェイショーを開催し、1ブランドが展示で作品を発表した。「装苑ONLINE」では、前後編に分けて学生たちのクリエイションにフォーカス。前編では、ショーや展示の舞台裏とショーレポートを、後編では、6ブランドを手がけるデザイナーたちへのインタビューをお届けします。
photographs : JJun Tsuchiya, Tsubasa Ito (B.P.B.)
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デザイナーインタビュー
- 1. 榊原 叶真(KYOMA SAKAKIHARA)
10年、20年後も着用できる洗練されたシルエット


――榊原さんは前回のIndividualにも参加されています。今年もまた挑戦しようと思った理由を教えてください。
榊原 叶真(以下、榊原 ):自分のブランドを本格的にやっていきたいという将来的な目標に直結するイベントだと思ったのが理由の一つです。ブランドを立ち上げたとしても続けていくことは難しいと感じているので、前回から続けてやることに意味があると思い、2回目に挑戦しました。

――昨年にインダストリアルマーチャンダイジング科から、アパレルデザイン科メンズデザインコースに進学されましたね。メンズデザインコースでの学びは、制作にどのように繋がりましたか?
榊原:メンズデザインコースでは、主に伝統的なテーラリングの技法を学びました。学んだことで、ジャケットやスーツはより着心地がよく、シルエットも美しくなっています。
例えばスーツの骨格とも言える芯地ですが、既製品のジャケットでは布の前面に接着芯を施して裁断をしていきます。一方でテーラリングジャケットでは、馬の毛で編まれた毛芯を使用します。毛芯は生地同士を縫い合わせて使うので、身体のラインに沿って仕立てることができるので着心地が断然よくなるんです。
テーラリングはとても手間暇をかけた作り方です。なので、すぐに飽きられるようなデザインではなく、10年、20年と長く着用していただけるような洗練されたシルエットも意識して制作しています。元々、テーラーリングの技法やジャケット自体に装飾的な要素がないので、ラペルの高さなど、ちょっとした変化によってリラックス感やかっちり感といった全体の印象や見え方に大きな影響をあたえています。そういった基礎的な部分やディテールにまつわるスキルを学ぶことができてよかったなと思っています。



――今シーズンのテーマは?また、6体制作する中で特に印象的だったルックを教えてください。
榊原:今回のシーズンテーマは「被覆の再構築」です。ドイツの建築家、ゴットフリート・ゼムパーによる、「建築の起源は、石ではなく、編まれた囲いにある」という言葉からインスピレーションを受けて制作しました。ゼムパーが建築の本質だと考えた「被覆」を、衣服のスケールで再定義しました。


自身の中で一番印象的なルックは、ラストのモーニング(画像上)です。格式が高く、歴史ある正装の代表格のようなモーニングをランウェイに出すという試みが、自身の中で新しい領域に足を踏み入れた感覚でした。
「壊すことがデザイン」と言いますが、伝統的なスタイルの良さをいい意味で壊すバランス感に難しさを感じます。格式の高い服をどうリアルに落とし込んでいくのか、日常で着てもコスプレのようにならないように、受け継がれてきた要素を無くさない範囲で崩していき、雰囲気に変化をだしました。
――スタートのルックでみられる、テーラリングの過程におけるしつけや八刺しといった技法をビーズやスパンコールで装飾として表現するなど、伝統的なテーラードの技法とモダンな表現のミックス感が絶妙です。その「伝統的なスタイルのよさをいい意味で壊していく」というのは具体的にどのような部分になりますか?


榊原:大切にしているのはモダンとのバランス感です。現代的な要素が多すぎると、伝統的な要素のいい部分を悪い意味で壊すことになってしまうので、基礎的な技法やルールは大切にしています。あとは、テーラードを制作する過程の無駄のない必然的な美しさに僕は惹かれるので、それを新しい魅せ方で現代に提案したいなという思いがあります。
――卒業後(2026年3月に卒業)の展望を教えてください。
榊原:卒業後は、ロンドンの芸術カレッジ、セントラル・セント・マーチンズの半年間のコースに留学したいと考えています。ロンドンには、伝統的なテーラーが店を構えるサビルロウもあるので、色々と学びながら海外のコンテストにも積極的に作品を出していきたいと思います。

Kyoma Sakakihara 2004年生まれ、広島県出身。’26年、文化服装学院インダストリアルマーチャンダイジング科を経て、アパレルデザイン科メンズデザインコースを卒業。REKROW HIROSHIMA × 文化服装学院コラボレーション企画デザインや、KAJIF × 文化服装学院コラボレーションブランド企画立案などに参加。2024年度学院長賞受賞。2025年には、JFW New Creator Awardを受賞。Instagram @kyo_sakaki
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2.西脇 駆(Deadbooy)
実際に着たときにかっこいいと思ってもらえるような服を作りたい


――2回目の参加となる今回。ショーを終えてみていかがですか?
西脇 駆(以下、西脇):昨年も参加していたので、前回と比べて完成度が上がったものを見せられるようにかなり気合を入れて取り組みました。最後の最後まで出すアイテムも吟味して、学生最後のショーとしては自分の中で満足がいく出来になったのでほっとしています。
――アーティストへの衣装提供をはじめ、市場への本格的なアイテム展開など、活躍の場も広げてブランドとして大きく成長しているように感じます。そのきっかけとしては、前回のショーの反響も大きかったのでしょうか?
西脇:ショーはもちろん、その後のSNSでのプロモーションを積極的にやったこと、そして展示会を開催したことでより多くの人にブランドを知ってもらえたのだと思います。展示会には想定していたよりも沢山の人が来てくださり、実物を見て欲しいと言ってくださる方も多く、思っているよりもブランドが広まっていることを体感しました。ショーや展示会の前は量産のアイテムを作ることは全く考えていなかったのですが、そういった声を実際に聞いたことで販売の意欲がでてきて、ファーストコレクションで展開したゾンビのプリントのダウンジャケットや、今シーズンにも登場したとげのニットパンツ、最新ではシューズなどを実際に販売しはじめました。
展示会を経験したことで、アート作品としての服ではなく、着用していただいたときにかっこいいなと思ってもらえるような、日常服として着用でき、購入できるものを作りたいという意識の変化がありました。なので前回と比べて、服の作りや質感、機能性など、全体の完成度はレベルアップしているかなと思います。
素材の加工や装飾においても、グルーガンを利用したようなインスタントな手法をやめて、ファーを燃やした加工など、素材そのものに加工を加えて展開しています。

実際に販売しているシューズ


――ファーを燃やした加工はラストルックのパンツに使われていますね。ファーに見えなかったので驚きました。どのような技法なのか、また、異素材の組み合わせが印象的なファーストルックについても詳しく教えてください。
西脇:アクリル素材のファーが元々生地についているのですが、ファーを燃やすことで地の生地が出てきて迷彩柄のように見えるんです。質感も面白いものになりつつ、生地をそのまま加工しているので、着用もしやすくなっています。
ファーストルックは、実はジップをあけると内側がメッシュになっていて、リバーシブルで着用できます。裏にはスプレーアートで描かれたカエルのペイントが見える仕様になっているなど、ショーではみえない部分までギミックを仕掛けています。


ラストルック


ファーストルック
――今シーズンのテーマは「ICE HELL」。ファーストコレクションからゾンビはそのままに、新たに加わったICEの要素がまた違った印象を与えていますが、このテーマ性の生まれた背景を教えてください。また、今後もゾンビを軸にコレクションを展開していく予定ですか?
西脇:今後もブランドのテーマであるゾンビを軸に、フィールドを変えていくようなイメージで展開していけたらと考えています。
今シーズンのテーマである「ICE HELL」は、「寒いやつばっかりだから俺も凍った」という言葉が、ぱっとひらめいた。というのがきっかけです。元々雪山という要素がかっこいいなと思っていたので、自分の好きな寒色系の色味をまとった凍る質感をコレクションで出せたらいいなと思って制作しました。

――卒業後(2026年3月に卒業)の展望を教えてください。
西脇:これからブランドを本格的に始動していきたいので、卒業してからが本番という感じです。一点ものに近いクオリティで量産していけたらと思っているので、本腰をいれることができて嬉しいですね。昨年はコンテストで色々海外にも行けたのですが、自分のブランド活動としても海外でなにかできるきっかけを作れていけたらいいなと思っています。

Kakeru Nishiwaki 2004年生まれ、神奈川県出身。’26年、文化服装学院アパレルデザイン科卒業。映像制作も手がけ、’22年に第5回フェローズフィルム フェスティバル学生部門でソニーミュージック賞を受賞。同年に文化服装学院ファッション画展最優秀賞受賞。’24年に日暮里ファッションデザインコンテスト東京商工会議所荒川支部会長賞受賞、文化服装学院ファッションコンテスト2024 デザイン部門で入選を果たす。’25年には、台湾・台湾ファッションデザインアワード 2025 2位入選のほか、中国・Hempel Award 2025 金賞 & デザイン賞/文化服装学院ファッションコンテスト 2025でグランプリを受賞。Instagram @iamdeadbooy
3.桂 日向映(HINAE KATSURA)
とにかく見た人に楽しいと思ってもらえるようなショーに


ー桂さんも前回から2回目の参加ですね。再度参加することにした理由、そしてイベント自体に昨年との違いがあれば教えてください。
桂 日向映(以下、桂):前回Individualに参加したことで、ブランドを知ってくださった方も多く、なによりショーでの発表を前提とした制作できてよかったです。
昨年は、参加の対象がファッション工科専門課程とファッション工芸専門課程の学生だけだったので、高度専門士科に進学した今年は参加できないと思っていたのですが、全学科が対象になったので、やれるならやらない理由はないなと思い今年も応募しました。
昨年との違いは、ショーの後に来場者の方と直接お話できるようになったこと。インフルエンサーの方をはじめとした沢山の方から、終了後に生の感想を聞けたのはすごくうれしかったです。
――セカンドコレクションを制作する上で意識したことはなんですか?
桂:今回1番大切にしたのは、見た人に楽しいと思ってもらえるようなショーにすること。服そのものを見て、楽しいとか素敵だな、こんなことやってもいいんだなとか、少し非現実的な要素で演出することができるのはショーのは魅力のひとつだと思うので、ランウェイショーを前提にデザインや制作の方向性を考えていったことが前回との大きな違いです。
昨年のコレクションは、プランニング演習という在学中にブランドをローンチすることを目的とした授業で製品として実際に販売する服を作るということを軸に制作していたので、ショーで発表することを考えては制作していなかったんです。今年は最初からショーでの発表を前提として1年間かけてコレクションに取り組めたので、ショーピースを作ったり、ショーで見たときに面白いと思えるものを意識して制作できました。
また、新たな可能性を追求して披露したかったので、クリエイションのクオリティに差をつけつつ、初めてのメンズルックを制作するなど、違う表現方法も取り入れています。



――1年間かけてコレクションに取り組んだことで、より一層確立された個性と世界観が際立っていました。制作面など、ファーストコレクションから変化した部分はありますか?
桂:年齢を問わず楽しんでほしいという根本的なコンセプトはそのままに、今回はより今の自分が伝えたいことを表現しています。テーマの「My Gleen Glasses」には、人も自分もそれぞれかわいいよねと、人と比べずに思えるようになったらいいなという思いが込められています。
ファーストコレクションでは、服をはじめBGMなどの演出もパンクの精神に沿って、強く見せようと頑張っていたなと終わってから感じました。今回はより自分の好きなスタイルをパワフルな仕上がりに表現したいと思ったので、ファンタジックなムードやヘアメイクなど自分の好きな世界観を詰め込んでいます。
また、今まではデザイン画に合わせて服を作っていたのですが、今回は、世界一かわいい!と思った生地をメインに、合わせる素材を選んだり、デザイン自体を考えるアプローチにしているんです。
1番気に入っている生地は、メンズのルックのミントグリーンのファーです。オーガンジーにファーがたたいてあって、透け感がすごくかわいいんです。それにレースやオパール加工が施されたベルベット生地を合わせて、全体的に軽さがでるようにしました。
イラストをプリントした生地は、エプソンとコラボレーション制作のカリキュラムの際にご提供いただいたもの。お気に入りのファーの生地も授業で生地商社見学へ行った際に出会って一目ぼれしたものなので、授業にとても助けられたなと思います。




――メンズルックはどのような経緯で制作することになったのでしょうか?
桂:自分の中で新しいことをしたかったというのもありますが、なにより、メンズにも私のコレクションを見てほしいと思ったのが1番の大きな理由です。
展示会などを通して、男性の方でも私の世界観を好きだと言ってくださる方が沢山いたことを知りました。ですが、展開しているのがレディースのみだったので、着たいけど着られないという声も多かったので、初めてのメンズルックを制作しました。


――昨年のインタビューで、「東コレに参加して自分だけのコレクションを発表することが一番の目標」と伺いましたが、現在も同じ思いですか?桂さんは今年卒業(2026年3月に卒業)ですが、今後の展望について教えてください。
桂:卒業後は、イラストのお仕事を中心に、Tシャツやワンピースなどのアイテムの販売などを行っていきたいと考えています。楽天ファッションウィークの公式スケジュールでコレクションを発表したいという夢はあるのですが、それだけに縛られず、私の世界観を好きになってくれた人たちをずっと大事にしていくためにも、ひとまず私らしい活動を続けていくことを頑張っていきたいです。

Hinae Katsura 2003年生まれ、山口県出身。’26年、文化服装学院アパレルデザイン科を経て、ファッション高度専門士科卒業。文化服装学院ファッションコンテスト 2023 デザイン部門佳作受賞。Runhua Award 2025 ファイナリスト銅賞受賞。「NEWS 20th Anniversary live 2023 NEWS EXPO」や、XGのCHISAの衣装デザイン・制作、ハローキティの50周年を記念した展覧会「Hello Kitty展 -わたしが変わるとキティも変わる-」の衣装制作、シンガーソングライター コレサワのライブ衣装制作でも活躍。2023年より2025年3月まで、装苑ONLINEの占いページのイラストを担当。Instagram @hinaekatsura_official
4.小倉 拓海(OGURA TAKUMI)
学生のショーというだけでは終わらせたくない


——初めてショー形式でコレクションを発表してみて、いかがでしたか?
小倉 拓海(以下、小倉):自分の服をモデルさんが着てランウェイを歩いているのを見てすごく感動しました。昨年Individualに応募したときは落ちてしまったので、今年は無事参加できてよかったです。
——初めてショー形式でコレクションを発表してみて、いかがでしたか?
小倉:きっかけは、まるでドレスのようなハンガリーの男性の婚礼衣装を本で見て印象的だったこと。ちょうどその時期に友達や家族の結婚式に参列した際に、新郎をはじめとした男性たちの装いがスーツのみなことに気づき、それこそハンガリーの婚礼衣装のように男性がドレスのような服を着ていたら素敵だし、もっと幅広い選択肢があったらいいなと思ったんです。なので、ウェディングの要素と男性服の要素をミックスして、現代の男性服の装いの幅が少しでも広がればと思い、このテ-マで制作しました。




——全員プロのモデルをキャスティングしたと伺いました。モデルや演出はどのように決められたのでしょうか?
小倉:学生のショーというだけでは終わらせたくない思いがあったので、全員海外や東京のランウェイショーを実際に経験しているプロのモデルさんにお願いしました。しっかりブランドとしての見せ方を意識して、学生のノリではない、洗練した作品を作れるということを示したかったんです。
演出やヘアメイクも、とにかく削ぎ落すことで服そのものを見せることに注力しています。ウォーキングは演出会社のKurokoさんと話し合って決めました。花婿は柔らかいイメージがあるけれど、逆に少し憧れの存在のように見せた方がカッコいいんじゃないかと判断して、シンプルに真ん中だけまっすぐ歩くというご提案をいただいたんです。モデルさんにプロの方々をキャスティングしたこともより効果的に働くなと思い、あのシンプルな演出になりました。

——メンズのルック5体に使用されているオリジナルのテキスタイルについて、どのような生地なのか、また、生地を活かしたルック制作について教えてください。
小倉:生地と生地同士を針でたたき合わせることで複数枚の布を1枚の生地にするニードルパンチで制作しています。下の生地の柄が上の生地にうっすらと出てくるので、あえてその特性を活かした表現を意識しました。
例えばLook2のジャケットは、ベルベットとチェック柄の生地を合わせて使用しています。前立て部分に生地の端を使用しているため、二つの生地の境界が見て分かると思います。Look5の後ろのフリルの端はあえて上に重ねた生地をはがすことで、アクセントにもなりますし、ニードルパンチングがどういう加工なのかも伝わりやすいと思ったんです。ニードルパンチは、実際に生地を合わせて針で打ってみないとどんな柄がでるかわからないので、とにかく手を動かして色々な組み合わせをやってみた結果、このような仕上がりにたどりつくことができました。
学生でもそこまで手を動かして考えてやっているという過程を含めて、ショーで実際に服を見て感じてほしいという思いもありましたね。


Look 2


Look5
——他の生地との合わせ方やスタイリングでこだわった部分などはありますか?
小倉:パンチングの生地は単体で見ると素敵なんですが、どうしても重さがあるので、さらに加える場合の組み合わせ方には特に気を付けていました。ウェディングのフェミニンさを感じるチュールやレース、サテンなどの軽やかな素材をミックスすることで、軽さはもちろんのこと、ギャップ、コントラストなどが生まれ、素敵な未来の花婿像ができるのではないかと思っています。
そういった生地の扱い方や、根本的なものづくりに対する姿勢は、僕が勝手に師匠と呼んでいるBFGU(文化ファッション大学院大学)の教授に教えていただきました。だからこそ、今回色々な方に素敵だと言っていただいたような生地の合わせ方やスタイリングができたんだとと思います。


——今後の展開を教えてください。
小倉:あと1年文化に通う予定なので、来年もまたIndividualに応募してみようかなと思っています。ゆくゆくは自分のブランドだけで、素敵な会場で今回お願いしたモデルさんたちを呼んでショーをやってみたいです。

Takumi Ogura 1997年生まれ、東京都出身。’26年、文化服装学院アパレルデザイン科卒業。文化服装学院アパレル技術科バーチャルファッションコース在籍中。’25年、学内コンテストをはじめとした国内のファッションコンテストに応募。YKK FASTENING AWRDS、ナゴヤファッションコンテスト、JFW NEW CREATOR AWARD、NEXT FASHION DESIGNER OF TOKYO2026(NFDT2026)ファイナリストに選出。26’年、第100回装苑賞ファイナリストとして現在最終選考に進出。
Instagram @ogura.takumi66
5.木佐貫 綾乃、青木 真那、山本 奈々(N.V.E.L)
3人の持ち味をひとつのコンセプトに

――グループ制作のきっかけを教えてください。また、3人で制作する上でどのようなことに気をつけましたか?
山本 奈々(以下、山本):仲良くなったのは2年生の時。それぞれ好みも性格も全く違った3人が1つの制作をしたら面白い発想がでるんじゃないかとなったのが最初のきっかけです。
青木 真那(以下、青木):これまでアパレルデザイン科では、グループで制作した人があまりいなかったということもあって、イレギュラーなことや大変なことも多々ありましたが、だからこそ学びもたくさんあって、総じてみるととても楽しかったです。先生方にも沢山お力添えをいただきました。
木佐貫 綾乃(以下、木佐貫):グループで活動するにあたって工夫したことは、最初に何か意見が割れたら多数決にするというルールを決めたことです。それがのちのちとても役立ちました。ルックは1年で11体制作したのですが、トワルなども終わって実際に服を作り始めたのは10月頃から。コンセプトやリサーチ、デザインのすり合わせに半年使って、しっかりブランドの基盤となるものを作りました。コンセプトがぶれないように詰められたことも、後の制作で足並みを揃えることができた重要なポイントだったと思います。
青木:あとは、自分の好みのものをつくるというよりは、全員が設定したターゲットやコンセプトに向けて作るという意識で取り組めたのがうまくいった理由の1つですね。
――実際の制作はショーの10月頃からとのことですが、短い期間で11体制作するのは大変だったのではないですか?
山本:服作りはみんな1、2年生で学んでいたので、作業に入ってしまえば早かったです。
木佐貫:3人の得意分野が違っていたので、少しずつ役割分担をして、意見も積極的に取り入れたことが、スムーズにいった理由だと思います。
山本さんは立体でものをつくることと、illustratorやPhotoshopなどツールを使うことが得意でデジタル分野に長けているので、プリントの柄をはじめ、ロゴや刺繍のデータ作りを中心に担当してくれました。
青木さんは、リサーチ能力がとても高くて、柄や服の参考にしたギリシャの建築やスタイルもパパーっと調べて提案してくれるんです。あとは、ポケットの形や襟の高さといったディティールの部分にまで気を配ってくれました。
私は主に、テキスタイルと全体的な世界観作りを行いました。
山本:木佐貫さんはコンセプト作りのバランスの取り方が本当に上手。多分3人のうち誰がいなくても成り立たなかったと思います。
――ギリシャ神話×スポーツウェアという全く要素の違う2つをミックスしたユニークなテーマはどのように生まれたのでしょうか?
山本:ギリシャ神話をモチーフに描いた絵画作品の講義がきっかけです。その授業で知った、神様それぞれの個性だったりユニークな関係性が、3人の中ですごくインパクトが強くて。
木佐貫:サッカーの要素は、ギリシャ神話の神様がサッカーチームを組んでたら面白いねと会話の中ででたのがきっかけです。青木さんはギリシャ神話の要素が好きそうだけど、山本さんはどちらかというとスポーツの要素が好きそう、そして私はどちらにも興味があるので、その2つを組み合わせたら、それこそこのチームでやる意味があるんじゃないかなと思い、テーマにしました。



――2つの要素をどのようにデザインに落とし込みましたか?
山本:柄は基本的にスポーツの要素はなく、ギリシャの要素を取り入れました。
青木:ドレスはトーガというギリシャの一枚布からつくられる衣服から着想したほか、ギリシャ神話をモチーフに描かれた絵画に見られる、羽や光輪などの神様たちの特徴的な要素、古代建築の柱のデザインなどをサッカーのユニフォームやビブスなどのスポーツウェアにミックスしています。
木佐貫:ギリシャの古代文様などは青木さんがリサーチしてきてくれて、それをみんなでどうデザインに展開していくかを考え、山本さんが実際の柄に展開してくれました。




――N.V.E.Lは6ブランンドの中で唯一展示形式での発表でしたね。展示形式での発表はいかがでしたか?また、展示する上でこだわった部分を教えてください。
青木:思っていたよりも沢山の方が足を止めて見てくれたのでよかったです。
ディスプレイでこだわった点は、テーマがギリシャ神話×スポーツウェアというまったく違う要素がミックスしていることがスペースをみてすぐにわかるように、サッカーボールや芝を配置しました。あとはすべてのルックにスポーティーな靴下を履かせたことがポイントです。
山本:「クチュールを日常に」というブランドコンセプトのとおり、リアルで着てもらえる服を意識して制作していたので、制作の頑張りを見てほしいというよりは、欲しいと思ってもらえたらいいなという思いがありました。なので、こだわって制作したディテールや素材の部分を展示だからこそ近くでじっくり見ていただけてよかったです。
木佐貫:デイリーに着てほしいお洋服なので、ボリュームや華やかさで言うとショーよりも展示で見せることの方がとても合っていたなと、実際にやってみて思いました。当日は私たち自身もブランドのお洋服をきていたのですが、それを来てくださった方にお伝えすると、デイリーで着られるんだ!というとてもいい反応をいただけたので、ちゃんとコンセプトを貫けてよかったなと思いました。
また、展示を見て購入したいというお声もいただいて、すごく嬉しかったですね。

――生地にもとてもこだわったとのことですが、セレクトの基準や指標など詳しく教えてください。
木佐貫:デイリーで着ていただきたいという思いが念頭にあるので、肌触りや品質はもちろん、皺の寄りにくさや洗濯のしやすさなども考えています。耐久性などのテスト結果が書かれた表までみてかなりこだわって選びました。
青木:スポーツの要素でいうとやっぱり軽くてシャカシャカした生地が多くなってしまうのですが、ポリエステル100%とシルクが少しでも入っているものだと光沢感が全然違うんです。実際の販売価格まで想定していたので、価格が高くなりすぎない程度に高級感がでる生地を選ぶことも大切にしていました。
プランニング演習という授業でそういった販売のことまで考えた経験があったからこそ、ブランドとして大切にしているポイントを底上げできたのかなと思います。
――卒業後(2026年3月卒業)の進路を教えてください。今後も3人でブランドを継続しますか?
木佐貫:このまま3人でビジネスとしてブランドを立ち上げられたら素敵だなという思いはあったのですが、1年間の制作を通して、まだまだ自分のスキルが足りていないと痛感することが多かったので、一度社会に出てそれぞれ勉強してから、将来的にできたらいいねと話しています。
青木:今回の展示を通して生の声を聞いた際に、実際にどんなものが求められているのかなど、知らないことだらけだなと感じたので、もう少し勉強していきたいなと思っています。
山本:学内だけのイベントだったらそういったことも知ることができなかったなと思います。なので、もっと学外の色々な方に作品を見てほしいと思っている文化の学生がいたら、ぜひIndividualに参加してみてください!

(右)Ayano Kisanuki 1995年生まれ、鹿児島出身。’26年、文化服装学院アパレルデザイン科卒業。’24年、Next Fashion Designer of Tokyo選出。同年にナゴヤファッションコンテスト入選。’25年にはN.V.E.LとしてNext Fashion Designer of Tokyoに選出される。
(中央)Nana Yamamoto 2005年生まれ、千葉県出身。’26年、文化服装学院アパレルデザイン科卒業。’24年、全国ファッションデザイン画コンテスト選出。’25年にはN.V.E.LとしてNext Fashion Designer of Tokyoに選出。文化服装学院の文化祭にて開催されるファッションショーのほか、BEATNIXS NAGOYA 2023などの学内外でファッションショーの企画運営に参加。
(左)Mana Aoki 2004年生まれ、神奈川県出身。’26年、文化服装学院アパレルデザイン科卒業。’25年、N.V.E.LとしてNext Fashion Designer of Tokyoに選出。
Instagram:@_n.v.e.l_
6.堀江 優花(Fluer Douces Philharm)
ウェディングドレスがあんな形になるのかというサプライズを演出


――初めてのショー形式での発表はいかがでしたか?また、応募したきっかけを教えてください。
堀江 優花(以下、堀江):色々な人の自由な意見が聞けるかなと思って応募しました。コンテストだと審査員の方の意見しか聞くことができないし、コンセプトやテーマが審査の上で重要な要素となってくるのですが、自分が実際に服を買うときに一回一回テーマを確認することがあまりないし、かわいいと思って買うことが多いと思ったんです。なので、ショーという、より実物をみせられる場で、視点が異なる様々な人の意見を聞きたいと思ったのが応募した理由です。

――実際に参加してみていかがでしたか?
堀江:ショー後の反響がすごかったのと、想定していたよりも多くの方に興味を持っていただけたので、こういった機会をいただけてありがたかったなと思いました。
――交響楽団をブランド名にしているほか、ショーの演出ではDJパフォ-マンスがあったり、音楽の要素がとても印象的です。ブランドと音楽の関係性について教えてください。
堀江:音楽が好きで、普段からポップスをはじめオーケストラなど幅広いジャンルの音楽を聞いていますし、小学校のころからトランペットをやっていたので、音楽は昔からすごく身近なものなんです。
音楽は耳で聞くもので、ファッションはビジュアルでみせるもの。同じクリエイティブなものだけど、違う表現の2つを組み合わせたブランドにしたいと思ったのが発想のきっかけです。
今回は「ウェディングの再構築」がテーマなのですが、今後はコレクションテーマをクラシックの楽章名にして全体にストーリー性を持たせて展開させていくなど、音楽とファッションの関係性をより深めていけたらいいなと考えています。
なのでショーのBGMでも、いつも聞いているような幅広いジャンルの音楽をミックスできたらいいなと思い、command.tokyoというクリエイティブチームに所属するDJさんに依頼しました。一度、そのDJさんのイベントにいったときに、テクノとクラシックのリミックスをされていたのが印象深かったので、そこに今回のテーマのウェディングを彷彿させる鐘の音をいれてもらったり、色々と相談させていただきました。

――今回のテーマ「ウェディングドレスの再構築」について、また、ウェディングドレスを再利用して制作されたオリジナルの特殊生地について教えてください。
堀江:廃棄される予定のウェディングドレスを再利用したオリジナル生地を制作したきっかけは、ギフトショーでその特殊な加工生地を見つけたのがきっかけです。何枚もの生地を一気にプレスすることで1枚にしているのですが、元々デニムの染色工場があまった生地を再利用するために開発された生地なので、加工する際にものすごい量の生地を使うんです。ウェディングドレスは1着に使用する生地量が多いうえに、廃棄されるという話を聞いたことがあって。フェミニンな要素だったり、他に自分のやりたいことも色々と重なった結果、ウェディングドレスを使用して制作することにしました。


――ウェディングドレスを再構築する上で、どんな部分にこだわりましたか?
堀江:特殊生地を使用したアイテムでは、ウェディングドレスがあんな形になるんだっていう驚きを持ってもらえるよう意識して制作しました。
ウェディングドレスのベールなどは、チュールの上にレースやスパンコールが縫い付けてあってとても手が込んでいるので、それをそのまま活かして使用しています。
あくまでウェディングドレスの再構築がテーマなので、レースやチュール、リボンなどの要素は取り入れつつ、メンズのモデルを起用したり、スタイリストの方に入ってもらうことで、フェミニンになりすぎないように気をつけました。




――今後の展開を教えてください。
堀江:ショー後にインスタグラムでパーカーがほしいというコメントをいただいたんです。来年プランニング演習の授業をとる予定なので、そこで量産のノウハウを勉強して、実際に販売していけるようにできたらと思っています。
Individualは来年もできたらやりたいです。個人ではなかなかショーを開催できないので、それができる機会は貴重だと思います。やっぱり写真でみるだけだと世界観は伝わりづらいと思うんです。音楽もそうですし、雰囲気や空間演出など、すべての要素で感じることができるのはファッションショーだけだと思うので。
いつかは、道端でファッションショーを開催したりして、ファッションに興味がある人だけでなく、色々な人に見ていただいてファッションに興味を持っていただけるようなブランドにしていきたいです。

Yuka Horie 2006年生まれ、千葉県出身。’26年、文化服装学院アパレルデザイン科在籍中。文化服装学院ファッションコンテスト2025佳作受賞。’25年に装苑賞一次審査を通過。’26年には、第100回装苑賞ファイナリストとして現在最終選考に進出、Next Fashion Designer of Tokyoのフリー部門にてファイナリストに選出。
Instagram:@fleurdoucesphil





