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『スパゲティコード・ラブ』文化学園学生限定試写会レポート!
丸山健志監督×皆川bon美絵さんトーク、学生Q&A

フードデリバリー配達員、シンガーソングライター、広告クリエイター、カメラマン…東京でもがく13人の若者たちの日常を追った群像劇『スパゲティコード・ラブ』。11月26日(金)の公開を前に、文化学園の学生100名が本作を鑑賞。丸山健志監督と、衣装を手がけた皆川bon美絵さんのトークイベントの様子を含めて、当日の様子をお届けします!
photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.)

『スパゲティコード・ラブ』
舞台は現代の東京。フードデリバリー配達員の羽田天、シンガーソングライターの桜庭心、ノマド生活を標榜する大森慎吾、気鋭の広告クリエイター黒須凛……。現在と過去の恋人同士、仕事仲間、客と従業員など、13人の若者の人生が交差してつながっていく。やがてそれぞれの物語は思いも寄らないエンディングへ。丸山健志監督、倉悠貴、三浦透子、清水尋也ほか出演。

11月26日(金)より、東京・渋谷の「ホワイトシネクイント」ほかにて全国公開。ハピネットファントム・スタジオ配給。©『スパゲティコード・ラブ』製作委員会
WEB:https://happinet-phantom.com/spaghetticodelove/
Instagram:@spaghetticodelove
Twitter:@SCL_movie

https://youtu.be/NjnOzQgwUkY

参加した学生をスナップ!

丸山健志監督×皆川bon美絵(スタイリスト)トークイベント

左からMCの映画ライターSYOさん、皆川さん、丸山監督

映画『スパゲティコード・ラブ』より

「ザ・ノンフィクション」や「情熱大陸」、「プロフェッショナル 仕事の流儀」のようなドキュメンタリー番組が好きだという丸山健志監督。『スパゲティコード・ラブ』は、そうしたドキュメンタリー番組のように、観た後「自分も頑張ろう」と思えるようなストーリーを作りたい、という思いからスタートしたという。

 スタイリストの皆川bon美絵さんは、『スパゲティコード・ラブ』が映画衣装を手がけた初めての作品。「13人の物語」という本作ならではの苦労も楽しさもあったとか。

「登場人物だけでなく、登場人物の友達もたくさん出てくるな〜と(笑)。ミュージックビデオ(以下、MV)やCMの衣装であれば登場人物のスタイリングをすれば良いので、まずは、スタイリングする人数の多さに驚きました。けれど監督やヘアメイクさんと一人一人のキャラクターを考えながらスタイリングを作っていくのはとても楽しかったです」(皆川)

 これまでタッグを組む中で、すでに互いの仕事に信頼を置いていた丸山監督と皆川さん。しかし全てがスムーズというわけでなく、イメージのすり合わせが必要なキャラクターもいたという。

「土村芳さん演じる剣持雫は、初めにマーガレット・ハウエルを着ているような子を想像して監督に提案したのですが、『違う』と。印象に残っているのは、そのとき監督が『この子は相手の男性のことしか考えていなくて、彼だけに可愛く見てもらいたい女の子だから』と言っていたことです。そこから、イメージブランドをジル スチュアートに切り替えました」(皆川)

『スパゲティコード・ラブ』より、スタイリングを決めるのに苦労したという剣持雫。

「ドラマや映画の場合、ストーリーや人物像と、スタイリングに辻褄が合うことが大事です。観ている人に『この人、相手に依存しているような人なのにこんな服を着るはずがない』などと、違和感を感じさせてしまってはいけない。それがMVの場合は考え方が逆で、映像の空間に対してスタイリングが強いものを選択していきます。例えば、MONDO GROSSOの『ラビリンス』では、出演している満島ひかりさんがオレンジのボーダーのトップに、赤いパンツ、黄色のサスペンダーというスタイリングなのですが、これは日常では見たことのないような組み合わせにすることで、記憶に残るヴィジュアルを志向していたためです。方法論が違うんですよね」(丸山)

 人物像を作るのと同時に、「真似できるスタイリング」を目指していたという皆川さん。では、皆川さんが影響を受けてつい真似していた映画のスタイリングは?という質問には、『パリ、テキサス』(ヴィム・ヴェンダース監督)のナスターシャ・キンスキー演じるジェーンの服装が。

 一方、丸山監督が印象に残っているのは『バッファロー’66』(ヴィンセント・ギャロ監督)のヴィンセント・ギャロ演じるビリー・ブラウンのスタイリングだとか。

「超タイトなジャケットにスキニーパンツ、赤いサイドゴアのショートブーツという出立ちで、何もない田舎町を歩いているだけなのにかっこいいんですよね。そんな風に、スタイリングや映像を用いた映画というマジックで、日常を鮮烈に映したいと思って『スパゲティコード・ラブ』を作っていました」(丸山)

学生から、二人への質問

ーー普段の服装で気をつけていることはなんですか?

皆川:仕事でスタイリングするときはカラフルなのですが、自分は黒をよく着ていると思います。気に入っている服を好きなように着ているのですが、あとは、その時の仕事に影響を受けることもあります。ギャルのスタイリングをしていたら、ギャルっぽくなっていたり(笑)

 スタイリスト志望のかたであれば、自分自身で服を着る際、好きなテイストや服を絞ってしまうのではなく、いろんなスタイルや服に好奇心を持って着てみるのがいいと思います。それが、様々な人をスタイリングする仕事に生きてくるはずです。

ーー『スパゲティコード・ラブ』には色々な登場人物が出てきて、困難や夢、壁にぶつかりながらもそれを乗り越える様子が描かれていました。お二人が直面した最も大きな壁はなんですか?そしてそれをどのように乗り越えましたか?

丸山:今、僕はMVやCMなどの監督をして生活をしていますが、もともと、自主映画を作ってこの世界に入りました。なのでずっと映画を撮りかったのですが、仕事ではそれができないという状況が10年以上続いていたんです。そのフラストレーションで『スパゲティコード・ラブ』を作ったのも事実で。とにかくうまくいかない時期が長かったので、それを「嫌だ」と思わず、日常を肯定していくことで乗り越えられたかもしれません。

ーー映画、面白ったです。登場人物がリアルで驚いたのですが、キャラクターを作る上で観察対象や参考にされているものなどがあれば教えていただきたいです。

丸山:ありがとうございます。キャラクターは、実は最初50人ぐらいいたんです。普段から「この人面白いな」と思った人や、友だちの話なんかをスマホにメモしています。13人の登場人物全員に大体モデルがいたので、今おっしゃっていただいたリアリティにつながったのかな、と思います。

 脚本家と一緒に作り込んだ人物像を皆川さんにお伝えして、スタイリングを考えていただきました。「慎吾(清水尋也)は、こういう仕事をしていて、性格はこうで、ヨウジヤマモトの服を着ている。普通に描いたら痛いやつかもしれないけど、おしゃれにすることで好感を得たい」などというようにです。

皆川:それをうかがって、そういう人ならこのあたりのブランドや雑誌を見てるのかな、こういう所に遊びに行くのかな、そうしたらそこの物販で売ってるようなTシャツを着ててもいいな・・・と、一人一人の日常をどんどん考え込んで、スタイリングを掘り下げていきました。

丸山:映像作品を作る上で、ヴィジュアルを担うスタイリストの仕事は本当に大事。活躍されているスタイリストさんは、こちらが投げたものに対して自分のセンスや意見でバックできるかたばかりですね。最初にこちらがイメージしたものと全然違ったスタイリングがあがってきたとしても、それもいいな、リアルだなと納得することも多いです。

Takeshi Maruyama ● 1980年生まれ。石川県出身。2004年に脚本・監督を務めた学生映画『エスカルゴ』が2005年のぴあフィルムフェスティバルで入賞、第6回TAMA NEW WAVE審査員特別賞を受賞しプロデビュー。以降、ミュージックビデオ、TVCM、ドキュメンタリーなど、作品形式にとらわれることなく話題作を発表し続ける。監督を務めたMONDOGROSSOのMV「ラビリンス[Vocal:満島ひかり]」で、MTV VMAJ2017のBestDance Video賞を受賞。

Mie bon Minagawa ●スタイリスト、北澤momo寿志さんのアシスタントを経て、2012年に独立。現在は広告(テレビ、グラフィック、ウェブ)、エディトリアル、CDジャケット、MV、コンサート、映画衣装など様々なジャンルで活躍している。