映画『PERFECT DAYS』が生まれた背景に注目。アートプロジェクトの力が人の心を変える！THE TOKYO TOLET

　ヴェンダース監督の新作は、東京・渋谷の公共トイレが舞台となっている。これらは、THE TOKYO TOILET プロジェクト（以下TTT）によって生み出された色とりどりの個性あふれるユニークなトイレたちだ。

●映画制作の背景—明るく、美しいトイレの社会的ミッション

　TTTは、2018年から始まった公共トイレ改善の建築プロジェクト。世界的に活躍する16名の建築家やクリエイターが各々の個性を発揮して、東京・渋谷区内17カ所の公共トイレを新たなデザインで改修し、生まれ変わらせた。TTTにより、4K（暗い、汚い、怖い、臭い）といった従来の公共トイレのイメージが刷新され、明るくて、居心地の良い、デザイン性に富んだトイレが渋谷の街のあちこちに出現し、周辺の風景・空気感を変えた。

　例えば、世界的な建築家の伊東豊雄氏が手がけた代々木八幡にあるトイレは、背後にある森から生まれた3本のキノコのようだ。神社の森の雰囲気と調和しながら、回遊性を生み出し、行き止まりが無く視線が抜ける設計で、防犯性を高め、お年寄りや子供も安心して使える。伊東氏は、建築を作るとき、大きな美術館も、トイレも、まず、その中で居心地が良いか五感を使って考えることが要だという。彼は、均質だった公共トイレが、美しく、明るく、個性的に生まれ変わったことを喜び、TTTプロジェクトが、他府県の公共トイレにも変容をもたらすだろうとポジティブに受け止めている。

　アートの力を使って公共トイレを変容するTTTを構想し、イニシアティブをとって推進してきた柳井康治氏は、「トイレそのものに文化や建築としての価値を感じてみんながきれいにつかうようになることが最高のメンテナンスだ」と考えた。柳井氏は、クリエイティブ・ディレクターの高崎卓馬氏とともに、世界中の人々が心を動かすような「清掃員を主人公にした物語をつくる」「その主人公に役所広司を」「フィクションの存在をドキュメンタリーのようにとらえたい」というアイデアの下、THE TOKYO TOILET Art Film Projectを始動させた。ヴェンダース監督が、その趣旨、社会的意義に賛同して参加することになり、当初は、短編映画の依頼だったが、長編映画をつくるというダイナミックなプロジェクトに発展した。

▼THE TOKYO TOLET▼

撮影：永禮賢　提供：日本財団

恵比寿東公園トイレ
場所：恵比寿 1-2-16
槇文彦

写真：(c) J.C. Carbonne

鍋島松濤公園トイレ
場所：松濤2-10-7
隈研吾

写真：閑野欣次

神宮通公園トイレ
場所：神宮前6-22-8
安藤忠雄

写真：藤塚光政

代々木八幡公衆トイレ
場所：代々木 5-1-2
伊東豊雄

代々木深町小公園トイレ
場所：富ヶ谷1-54-1
坂 茂

はるのおがわコミュニティパークトイレ
場所：代々木5-68-1
坂 茂

写真：Kazumi Kurigami

恵比寿公園トイレ
場所：恵比寿西 1-19-1
片山正通 / Wonderwall®︎

西原一丁目公園トイレ
場所：西原1-29-1
坂倉竹之助

恵比寿駅西口公衆トイレ
場所：恵比寿南 1-5-8
佐藤可士和

神宮前公衆トイレ
場所：神宮前1-3-14
NIGO®

東三丁目公衆トイレ
場所：東3-27-1
田村奈穂

七号通り公園トイレ
場所：幡ヶ谷2-53-5
佐藤カズー / Disruption Lab Team

写真：Prudence Cumming Associates, Gagosian

裏参道公衆トイレ
場所：千駄ヶ谷4-28-1
マーク・ニューソン

写真：(c) David Vintiner

西参道公衆トイレ
場所：代々木 3-27-1
藤本壮介

幡ヶ谷公衆トイレ
場所：幡ヶ谷 3-37-8
マイルス・ ペニントン / 東京大学DLXデザインラボ

広尾東公園トイレ
場所：広尾 4-2-27
後智仁

笹塚緑道公衆トイレ
場所：笹塚1-29
小林純子

提供：日本財団

映画の中で主人公の平山も着ていた、清掃員のブルーのユニフォームはNIGO®のデザイン！