「A Quiet Sun」田口和奈展(東京)

「A Quiet Sun」のための構想|2022|ゼラチン・シルバー・プリント|サイズ未定
Courtesy of the artist

オーストリア・ウィーンを拠点に制作、活動をする田口和奈さんの個展「A Quiet Sun」が、東京・銀座メゾンエルメスフォーラムにて開催中。

田口は、多重的な構造を持つモノクロームの作品を通じて、時間や空間といった目に見えないものの存在を見出そうと制作を続けているアーティスト。自ら制作した絵画や彫刻を多重露光で撮影し、それをプリントした印画紙の上に油彩のドローイングを描き、再び撮影をするといった重層的な工程を経て生まれる作品は、写真でありながらも、長い時間をかけて描く絵画のようにも感じられる。

《エウリュディケーの眼 #39》|2021

ゼラチン・シルバー・プリント|14.7×10.5cm

《Exercise in shape》の習作|2021

展覧会「A Quiet Sun」
リーフレットのためのイメージ|2022

《エウリュディケーの眼 #5》|2019|

ゼラチン・シルバー・プリント|14.7×10.5cm

作品には、過去の美術作品の参照や、匿名のファウンドフォトや雑誌といった、既存のイメージの応用を含み、収集した過去のイメージから象徴を読み取ろうとするその身振りは、アビ・ヴァ―ルブルグ(1866-1929)の「ムネモシュネ・アトラス」からの影響も受けているのだという。

《11の並行宇宙》|2019|ゼラチン・シルバー・プリント|サイズ可変

「A Quiet Sun」は、本展のために制作した作品群と、田口が収集するファウンドフォトで構成され、神話や匿名の記憶は、ゼラチンシルバーの中に息づく様々な身体の身振りや触覚からもたらされる。ギャラリーに差し込む自然光を活かしながら、空間を整え、レイヤーを与えていくような大胆かつ繊細な展示方法は、写真制作における問題意識を異なる角度から解釈する試みでもある。

「A Quiet Sun」展示風景 |2022
©Nacása & Partners Inc./ Courtesy of Fondation d’entreprise Hermès

私の関心であり同時に問いであるのは、集めたファウンドフォトが非常に魅力的である理由である。

「エウリュディケーの眼」は、神話のイメージを拠りどころに、現実の予感が入り混じったイメージで、 これまでの作品より即興的かつ多層的な構造をもっている。

ファウンドフォトの発見、修復、修繕というプロセスは、ゼロから作りだす私の制作のプロセスとは違う地点から同じ空間に向かっているようだ。この展覧会について考えることは、私の関心が交差しているその空間について考えることである。

ーー田口和奈「A Quiet Sun」のノートより

「A Quiet Sun」田口和奈展
会期:開催中~2022年9月30日(金)
場所:銀座メゾンエルメス フォーラム 8・9階
   東京都中央区銀座5-4-1
時間:11:00~19:00(入場は18:30まで)
休館日:7月14日(木)、8月17日(水)
入館無料
TEL:03-3569-3300
主催:エルメス財団
WEB:https://www.hermes.com/jp/ja/story/maison-ginza/forum/220617/

田口和奈  Kazuna Taguchi
1979年、東京都出身。2013年よりオーストリア、ウィーンを拠点に制作を続ける。東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻 を卒業後、同大学院美術研究科博士号取得。近年の主な個展に、「Due」(ERMES ERMES、ローマ、2021年)、「エウリュ ディケーの眼」(void+、東京、2019年)。主なグループ展に「TOPコ レクション 光のメディア」(東京都写真美術館、東京、2022年)、「The Terrorizers」(ERMES-ERMES、ローマ、2021年)、 「Why do birds suddenly appear?」(Galerie Martin Janda、ウィーン、2020年)、「The Unremarkableness of Disobedient Desire」(Lucie Drdova Gallery、プラハ、2020年)。2010年、五島記念文化賞美術新人賞受賞。

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