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渋谷区東3丁目に登場した幅16m、高さ3.5mのバリー・マッギーの壁画。バリー・マッギーに尋ねた、新作壁画とストリート・アートへの思い。「私たちは皆、支配階級の抑圧にうんざりしている」

2024.03.22

(c)Shibuya Arrow Project

日本にも多くのファンがいる現代アーティスト、バリー・マッギー(Barry McGee)が、東京都渋谷区が始めた、災害発生時の一時退避場所をアートを通じて情報発信する「シブヤ・アロープロジェクト」に参加した。渋谷区東3丁目にある「庚申道架道橋」の幅16m、高さ3.5mの壁は、現在、バリー・マッギーの特徴的なジオメトリックなグラフィックとドローイングで彩られている。

アートで災害意識をアップデートするという試みに、バリー・マッギーはなぜ参加したのか?ストリートからキャリアをスタートさせたバリーに、今回のプロジェクトについて尋ねた。

interview & text : SO-EN

正直なところ、私はストリート・アートやそれに付随するものやトレンドが好きではありません。私はシンプルに、アートあるいはサイト・スペシフィック・アートと呼んでいます。——Barry McGEE

photograph : Matt Hawthorne

——災害時の一時退避場所をアピールするための壁画制作、という依頼を渋谷区から受けたときのお気持ちをお聞かせください。

Barry McGEEパブリックプロジェクトで東京の多様なコミュニティと関わることはとても光栄なことでした。トンネルというものや寂れた場所に私はいつも惹きつけられるので、そういう意味でも恵比寿にあるこの象徴的なJRのトンネルでのプロジェクトは、私にとってとても自然でぴったりだと思いました。地域の安全や意識を高めることは、常に私が意識していることでもあります。

——「庚申道架道橋」を見て、どんなことを思い浮かべましたか? (ここはいつも薄暗く、電車が通る音がうるさいので、私自身はなるべく早く通り過ぎるようにしています)

Barry McGEEトンネルを含むこのような場所では私たちの視界が狭い空間に集められ、より細かいディテールや音に意識が集中するので、たくさんのインスピレーションや楽しさが湧き出てきます。

また両サイドに、古いレンガと後から補強されたコンクリートの圧迫感ある壁が並んでいたことも素晴らしくて興味深かったです。都市環境においてはありきたりで気にもとめられないようなことが、アートや交流の場としては願ってもいないファンタスティックな条件になるのです。

バリー・マッギーと、本作品のパートナーであるAmazeの壁画が描かれた庚申道架道橋
(c)Shibuya Arrow Project

労働者階級に向けて、美とポジティブさを分かち合いたい

—— この壁画には、過去の作品にも多く登場する行き場を失った人々の顔も描かれていますね。これまでコミッションワークとして多くの壁画を手掛けてこられましたが、このプロジェクトのために描いた、あるいは実現できたアイデアがあれば教えてください。

Barry McGEEそうですね、この作品は私たちが生きている瞬間をとらえようとしています。私が知る多くの人々にとって、先の見えない不安や傲慢な人間によって長引く戦争はとてつもなく恐ろしいものです。今日に至るまで平和のために活動し戦ってきた私にとっては心底落胆させられる時代です。

そして労働者階級に向けて、美とポジティブさを分かち合いたいと思います。私たちは皆、支配階級のエリートたちの抑圧にうんざりしているから……このプロジェクトでぜひ達成できることを願います。

(c)Shibuya Arrow Project

—— ストリートアートへの思いをお聞かせください。今回は災害時に人命救助の役割も果たす作品でもあります。

Barry McGEE正直なところ、私はストリートアートやそれに付随するものやトレンドが好きではありません。多くの場合、私の経験では、違法なグラフィティのためにあるような完璧な壁にひどいタトゥーを入れたてしまったように見えます。私はシンプルに、アートあるいはサイト・スペシフィック・アートと呼んでいます。
この作品が避難や災害時の助けになれば幸いですが、その必要が決して起きないことを強く願っています。

—— 日本にもバリーさんのファンがたくさんいます。2007年と2017年のワタリウム美術館、2020年のペロタン東京、2022年のあいちトリエンナーレなど、これまで日本でも数々の作品を発表されてきていますが、国内のファンにメッセージをお願いできますでしょうか。

Barry McGEE今のこのタイミングに、東京での特別なサイトスペシフィック・プロジェクトに招聘されたことを光栄に思います。日本の様々な立場の方々からサポートや関心をいただきとても嬉しく思います。人類全体にとってより良い未来への希望が湧いてきますし、皆様ひとりひとりに感謝申し上げます。出会いとともに年を重ね、より賢明になっていければと願っています。

(c)Shibuya Arrow Project

「庚申道架道橋」
住所:東京都渋谷区東 3 丁目 庚申道架道橋(庚申橋西交差点脇)


バリー・マッギー 1966 年生まれ、サンフランシスコ出身。カリフォルニア州ベイエリアのアーティストの中では近年最も国際的に知られ影響力を持つ現代アーティスト。サンフランシスコで育ち、サンフランシスコ・アート・インスティテュートにて絵画と版画を学び、サンフランシスコ近代美術館やボストン現代美術館、ヴェネチア・ビエンナーレ、プラダ財団など世界各地で作品を展示して来た。ストリート・アートやグラフィティ・カルチャーをギャラリーや美術館という環境の中で紹介したパイオニアとして知られる。アメリカの民芸芸術、メキシコの壁画、サーフカルチャーなど、幅広い影響を取り入れたマッギーの作品は、都市生活の多様性を称え、社会の末端に存在する人物を描くことで、消費主義文化や商業主義主導の社会への警鐘を鳴らしている。

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