まだまだ楽しむ!装苑的、2026年東京国際映画祭(TIFF)ガイド
映画の未来を見る日本人監督作5選 & 多様な世界の有様を知る映画

2026.10.29

日本の映画の祭典「第39回東京国際映画祭」(TIFF)が今年も日比谷・有楽町・丸の内・銀座エリアで開催中(2026年11月4日まで)。劇場公開前の作品をいち早く楽しめたり、世界中の注目作が一堂に会する特別な機会だ。会期が折り返しとなった今、この記事では、まだまだ映画祭期間中に見ることができる作品の中から、装苑読者に特におすすめしたい日本人監督による5作品を中心にピックアップ!

ADのあとに記事が続きます

ADのあとに記事が続きます

日本人監督による注目作5選

1『妖怪、化物をひろう』

ロシアのある村で、老婦人がエイリアンのように見える赤ん坊を保護して育てたという実話から着想を得た、池田暁監督のオリジナル作品。物語の舞台は、かつて嵐で壊滅的なダメージを受けた小さな町。そこに住む老婦人のタエは、人間ではない異形の赤ん坊、ハルを見つける。町の人々に気味悪がられながらも、ハルを愛し、大切に守り育てるタエは、安心して暮らせる場所を求めてハルと町をさすらい、様々な人に出会っていく……。

台湾の離島、金門島で全編撮影され、建物やその内部も島のものを生かしたというロケーションを楽しめる映像美や、主演の余貴美子さんをはじめ、オダギリジョーさんや佐藤菫(SUMIRE)さん、片桐はいりさんなどが演じる個性の強いキャラクターたちが織りなす奇怪な物語に引き込まれる作品。

見れば見るほど愛らしく思えてくる異形の赤ん坊、ハルの造形は、『シン・ゴジラ』や『ゴールデンカムイ』などの仕事で知られる特殊造形家・キャラクターデザイナーの百武朋さんが手がけた。「小津(安二郎の映画)とスタジオジブリを混ぜたような気持ちのいい映像体験」とは、監督の作品に惚れ込み、本作でプロデューサーも務めたオダギリジョーさんの言葉(2026年10月28日に開催されたQ&Aイベントより)。心躍る鑑賞体験を、ぜひ劇場で!

TIFF上映:10月30日(金)16:00、11月3日(火・祝)18:30
チケット情報: https://2026.tiff-jp.net/ja/lineup/film/39001CMP01

2026年12月25日より、東京の「シネマート新宿」ほかにて全国順次公開。
監督・脚本:池田暁
出演:余 貴美子、オダギリジョー、リウ・グァンティン、トゥオ・ゾンホア、スン・クーファン、チェン・ヤオアン、レオ・ワン、片桐はいり、きたろう、白石隼也、佐藤菫ほか
ハーク配給  ©2026 SHIMENSOKA Co.,Ltd. Oxygen Film Co., Ltd. All rights reserved 

2『過怠』

谷村志穂さんによる同名小説を映画化。受精卵取り違えの事実を知らぬまま大学生に成長したジヒョンと菜々子が偶然出会い、あるきっかけで真実に辿り着く。自分を形作るものは何なのか? 家族とは? 血の繋がりとは?見た人に様々な問いを投げかける長編。韓国人の家族に育てられ、韓国語を話すジヒョンを唐田えりかさんが演じ、日本で生まれ育ち、日本語が母語である菜々子をKARAの知英さんが演じるという意欲作でもある。

10月29日のQ&Aでは知英さんが、ほぼ順撮りの撮影期間中、ジヒョンと菜々子のようにだんだんと唐田さんとの仲が深まっていったことを明かした。また、「血が繋がっていなくても、国籍が違っても、環境が家族にしてくれる。そばにいる人を大切に」と語った。唐田さんは、韓国ロケを振り返り、撮影場所となった襄陽(ヤンヤン)郡を「これまで訪れた韓国のどことも違うような、静かで、生きている町」と表現した。

TIFF上映:10月30日(金)21:00、10月31日(土)16:05
チケット情報 : https://2026.tiff-jp.net/ja/lineup/film/39001CMP07

2027年2月5日より全国公開。
監督:山本英
出演:唐田えりか、知英、金子大地ほか
NAKACHIKA/フライフリーエンターテイメント配給  ©2026「過怠」製作委員会

3『男ともだち』

一見、順調に全てをこなしているようで、実は仕事にも恋にも行き詰まっている29歳のイラストレーター、神名。ある時、出会った頃から不思議と自分のことを深く理解してくれる「男ともだち」、ハセオからの思いがけない電話を受け、7年ぶりに二人は再会する。京都、富山、広島でともに時間を過ごし、そのことが神名の生き方にも影響を与えていく。

直木賞作家、千早茜さんによる傑作小説を『幼な子われらに生まれ』などの三島有紀子監督が映画化した。

駆け出しの頃の無謀さも、大人の割り切りも持てない20代最後の年を過ごす神名の鬱屈を、松岡茉優さんが生々しく体現。また、そんな神名を付かず離れずの距離で見守り続ける温かなハセオを、成田凌さんが魅力的に演じた。主人公たちの繊細な心の機微と出会いによる変化を、静謐な映像で味わうことができる。

TIFF上映:11月1日(日)20:20
チケット情報 : https://2026.tiff-jp.net/ja/lineup/film/39001CMP14

2026年11月6日より全国公開。
監督:三島有紀子
出演:松岡茉優、成田 凌、井上祐貴、中島 歩、咲妃みゆ、三浦貴大、余貴美子、池畑慎之介
ハピネットファントム・スタジオ配給  ©2026『男ともだち』製作委員会

4『シルバー・エクスプレス』

他人に恋愛感情を抱いたことがなく、性的欲求も持たない智絵里。不器用な性格も相まって友達との関係はギクシャクしがちで、恋愛映画を見ても登場人物に共感することができない。孤独を感じ、いつも周囲から浮いていた智絵里は、ある時、同じように恋愛感情を持たないという男性、翔也と出会い、あっという間に意気投合する。しかし、「同じ」といっても、二人にはある決定的な違いがあった……。

Screenshot

短編『ジンジャー・ボーイ』で、第78回カンヌ国際映画祭ラ・シネフ部門(映画学生を対象とする公式出品部門)で入選を果たした新鋭、田中未来監督の初長編作。「セクシャリティが異なる人に、どこまで想像力を働かせることができるのか」という問いをはらんだ本作は、身近な誰かや遠くの他者に寄り添うための視点を与えてくれる。

岡本ゆいさん、栗原颯人さんが演じるキャラクターの憂いを帯びた佇まいの引力と、映画や音楽を愛する若者のファッションとしてリアリティのある、おしゃれな衣装も見どころ。

TIFF上映:11月1日(日)13:45、11月3日(火・祝)10:50
チケット情報 : https://2026.tiff-jp.net/ja/lineup/film/39003NCN05

公開日未定。監督・脚本:田中未来
出演:岡本ゆい、栗原颯人、中村里帆、山脇辰哉、高橋璃央、中島侑香、中井友望、斉藤里奈、佐久間祥朗、大瀧慶祐
KeyHolder Pictures SPOTTED PRODUCTIONS配給
© 2026 silver express Film Partners

5『いえないふたり』

児童劇団で出会った真琴と香純は、家族の合同キャンプで起きたある事件をきっかけに疎遠になってしまう。6年後、高校の演劇部で再会した二人は、互いに言葉にできない思いを抱えたまま同じ舞台に立つことに。これまで言えなかったことを舞台上で演じる二人は、演劇を通して失われた友情を取り戻していく。そして、二つの家族の時間がまた動き出す。

近年、数々の話題作に出演する注目の若手俳優、倉沢杏菜さんと川島鈴遥さんが、複雑な過去と大切な友情の間で揺れ動く思春期の少女たちを瑞々しく演じる。

TIFF上映:10月30日(金)16:55
チケット情報 : https://2026.tiff-jp.net/ja/lineup/film/39003NCN01

2027年3月より全国公開。
監督・脚本:まつむらしんご
出演:川島鈴遥、倉沢杏菜、菊池亜希子、臼田あさ美、斉藤 陽一郎、三浦 貴大ほか
スタイルジャム配給
©2026「いえないふたり」製作委員会


気になる2つの部門

難民を取り巻く世界の現実を見る
ディスプレイスメント・フィルム・ファンド

ケイト・ブランシェットが代表を務め、ユニクロが創設パートナーとして支援する難民映画基金「ディスプレイスメント・フォルム・ファンド」の第一弾助成作品が上映される。兵役で日常が一変し、その記憶に苦しめられるウクライナ人女性の催眠療法を描いたマリナ・エル・ゴルバチ監督による『ローテーション』や、自身と友人のイギリスでの難民認定までの困難な道のりを映し出した、シリア出身のハサン・カッタン監督のドキュメンタリー『アライズ・イン・エグザイル/故郷を追われた盟友たち』を含む5作品が公開。難民を取り巻く世界の現実を、映画を通して学ぶことができる。

TIFF上映:11月3日(火)17:00
チケット情報 : https://2026.tiff-jp.net/ja/lineup/film/39004GLS15

多様な生き方に触れる
ウィメンズ・エンパワーメント

女性監督の作品や、女性の人生やその活躍をテーマとする作品を上映する部門。今年は7作品が選出された。ウクライナのクィアカップルを描いた『夢から覚めることはそうない』や、サウンド・アーティストの女性を主人公に、ペルー山脈で消滅の危機に瀕する伝統的な言語、ケチュア語のサウンドマップを作る旅を描いた映画『木々から遠く離れて』などが上映されている。

『木々から遠く離れて』より

他にも、会期中は数多くの上映やイベントが続く。新たなベストムービーに出合うのはもちろんのこと、映画祭ならではの祝祭的な空気も味わいに、ぜひ出かけてみて!


第39回東京国際映画祭
期間:開催中~2026年11月4日(水)
会場:日比谷・有楽町・銀座地区
WEB : https://2026.tiff-jp.net/ja/
©2026 TIFF

RELATED POST

今日はなに観る?5つの気分で選ぶ配信「偏愛映画」リスト
グッチ家の知られざる秘話に迫る、スタイリッシュなサスペンス!リドリー・スコット監...
バリー・コーガン×フランツ・ロゴフスキ。名匠アンドレア・アーノルドによる最新作『...
謎の天才デザイナー、マルタン・マルジェラがついに沈黙を破る!映画『マルジェラが語...
『センチメンタル・バリュー』偏愛映画館 VOL.84
偏愛映画館 VOL.2『MONOS 猿と呼ばれし者たち』