歴史という偉大なインスピレーションをハッキング。アレッサンドロ・ミケーレが「Gucci in Kyoto」で伝えた、ファッションのあるべき創造と再生。

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「ファッションは素晴らしいイリュージョンです。
それは形との対話であり、色との対話であり相互作用であり、
しかもそれらがあなたの中で起こるのです。
どこからともなく現れるものではありません。
突然インスパイアされたという人もいます。どこかに座っているときにとか......
でも実際は、インスパイアされたのではなく、ただあなたの中にあるのです」


ファッションが好きな人なら、既にピンクとパープルに染まった清水寺のビジュアルをチェックしていることでしょう。100周年を迎えたグッチが、イタリア・フィレンツェの姉妹都市でもある京都で開催したエキシビション「Gucci in Kyoto」は、ブランド創設100周年を機にアレッサンドロ・ミケーレが最新コレクション「Aria」を通じて打ち出したビジョンと美学を体現するプロジェクトでした。清水寺、旧川崎家住宅、仁和寺宸殿の三か所で行われ、歴史とそれらを取り巻く自然界を称えながらも、単なる伝統の継承ではなく、時代とともに再生されることがfashionであることを示していた。ちなみに上の言葉は、グッチ バンブーハウスで上映されているショートムービー内で、アレッサンドロ・ミケーレが話している一部。装苑オンラインを見ている、クリエイティブな活動をする人、目指す人たちには伝えるべき言葉であると冒頭でご紹介しています。


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「Aria」コレクションでは創設者グッチオ・グッチのルーツ「サヴォイ」ホテルや、創設当時に深い関わりがある乗馬の世界と鼻に装着するファッションジュエリー、また、デムナ・ヴァザリアのバレンシアガデビューコレクションに深い感銘を受けたことからそのスタイルをハッキングし、「BALENCIAGA」と書かれた服やバッグなどを登場させていたが、それれは人を驚かせるだけではなく、歴史を理解し、それを伝えるためにレガシーに背くことを必然としたコレクション。GUCCIの100周年を記念し、伝統と革新が共存する京都の、再生を繰り返し、生命を宿し続ける清水寺においてインスタレーションを行うことも、「Aria」コレクションに込められた創造と再生のストーリだったのです。


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過去を理解し、美しいものを美しいと認識し、その上で今の時代に表現すべき物とは。2015年のクリエイティブ・ディレクター就任後、それまで富裕層の嗜好に沿った提案が当然とされていたラグジュアリーの概念を大きく覆し、年齢も国境も問わずファッションを愛する層に支持されるようになった成功事例こそが、まさにファッションの創造と再生。GUCCIの100周年を記念したコレクションを清水寺という誰もが知る場所に移し、さらには無償の体験型エキシビションを用意したことからも、ファッションが限られた人のためだけではない、ファッションの存在意義に関する提案でもあったことが伝わってきます。


8月22日まで一般公開「グッチ バンブーハウス」で感じる
クラフツマンシップと、"視野を広げるための"異物混入。


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このサイトを見ている人にはぜひ訪れて欲しいのが体験型エキシビション「グッチ バンブーハウス」。会場はグッチが創設された1920年代に建てられた京都市の有形文化財、旧川崎家住宅。1947年の誕生以来、愛され続けるバンブーハンドルのハンドバッグは第二次世界大戦後の物資不足により、安定供給が見込めることから生まれたもので、ちなみにハンドルに使用されているのは根の部分。当時は日本から輸入していたそうだ。グッチを象徴する素材としてだけでなく、節を持ちながら天に向かって伸びる姿にグッチの100周年という節目への思いを重ね合わせ、空間全体で竹をテーマにした物語を展開!
貴重なバッグのアーカイブ、竹を用いた作品で世界的に高評価を得るアーティスト 四代田辺竹雲斎氏によるアートワーク、また、ネオンカラーのレザーベルトをあしらった新たなハンドバッグラン「グッチダイアナ」などが展示されているが、装苑オンラインを見ている方に覗いてもらいたいのはライブラリー。当初のインテリアを残しつつグッチ デコールのフラワープリントの壁紙で装飾された部屋には、フィレンツェにあるグッチ ガーデン ブックストアのラインナップを参照しながら特別にキュレーションされた書籍が300冊! しかも、すべて手に取ってみることが可能。どんな本に心がときめくのか、自分自身が美しいと思うものを再確認できる場所になるのではないでしょうか。また一般公開後、これらの書物は京都工芸繊維大学に寄贈されるそうです。


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そして、必ず観てもらいたいのが(写真はないですが)冒頭の言葉も含む「Aria」コレクションにまつわる、約15分間のショートムービー。アーティストであり映画監督のフローリア・シジスモンディとの共同監督による短編動画とそのメイキング映像から、アレッサンドロ・ミケーレがグッチの歴史の扉を開き、ブランドにまつわる神話に対する彼自身のビジョンを深く掘り下げたことが伝わります。

そして、映像ではほかにこんなことも。


「最初に誰がやったか、誰が言ったかにこだわったところで
誰もが何でもコピーできる今という時代に、
そんな執着を持つのは意味のないことです」


デザインやスピリットを盗むように取り入れて、変容させるアプローチをアレッサンドロ・ミケーレは"ハッキング"と呼び、「Aria」コレクションで展開しているが、分かりやすく言えば、あえて異物を混入させることで、その本来の意味に、さらにはなぜそうしたのか、という発想にたどり着かせている。ファッション業界全体では他人のデザインをコピーし、安価で発売されることすら問題にされなくなった現在。そのすべてを肯定しながら、人の気持ちを動かす提案をすることで、流動的で、自由で、かつパワフルな自己表現としてのファッションを称えていることも含め、今回の京都でのエキシビションで改めて感じたのは、単なるハイブランドならではの贅沢なイベントなどではない、ファッションの創造と再生の物語でした。


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グッチ バンブーハウス
期間:2021年7月22日(木・祝)~8月22日(日) ※水曜日定休 入場無料(予約制)
WEB:guccibamboohouse.gucci.com

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『装苑』2021年9月号、7月28日発売!

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