『装苑』×LUMINEによる"LUMINE THE BARGAIN"のビジュアルクリエーション。その制作秘話をアートディレクター西岡ペンシルさんに聞きました!

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2019冬 LUMINE THE BARGAIN VISUAL
Visual Creation by SO-EN
art deirection & costume direction: Nishioka Pencil / movie production: Hiroaki Nakane(Knot.), Takahisa Sasaya(Knot.) / movie director: Daichi Miyazaki(PHONTO) / photographs: Chito Yoshida(AVGVST) / hair & makeup: Kenji Toyota(SHISEIDO) / costume & art: Atelier Inadome, Mayuko Nakagawa / model: yulia m.


『装苑』編集部が、アートディレクターと共に企業のビジュアルクリエーションを手がけていることはご存じでしょうか? そのなかでも代表的なのが、『装苑』×LUMINEによる"LUMINE THE BARGAIN"の広告です。人の記憶に残るものはどうやって生まれるのか? 12月26日(水)から街に登場する2019冬"LUMINE THE BARGAIN"のビジュアルをクリエートしてくださったアートディレクター西岡ペンシルさんにお話をうかがいました。








2019冬 LUMINE THE BARGAIN MOVIE

装苑(以下、装苑) 2018年の夏、そして今回の冬と、西岡さんには続けて"LUMINE THE BARGAIN"のアートディレクションをしていただきました。誌面で行うクリエイションは雑誌を手に取っていただいてはじめて人の目に届きますが、広告は街に掲げられ、多くの方々の目に触れるもの。バーゲンと言う心が躍る広告でもありますし、通りかかった人が目にした時に、"ときめき"や"わくわく"が生まれるものができれば、と思っていました。

西岡ペンシル(以下、西岡) 僕は広告の仕事を中心にしていますが、LUMINEの広告に携わるのも、そして『装苑』の仕事をするのも初めてでした。LUMINEはいつも錚々たるクリエイターたちが素敵な広告を作っているし、『装苑』もおもしろいことをやっていて、どちらもすごく気になる存在でした。ともにいつかご一緒したい!と思っていたので、今回はすごくうれしかったです。コンペからはじまりましたが、僕の場合はお題を必死に考えたというよりも、編集さんから「変われる7日間」という言葉を聞いた時に、花が開くようなイメージが浮かんできたんです。それとは別に、以前から、紙で服を作ったかわいいビジュアルを作りたい!というのが頭のなかにあったんですが、"花が開く"ならば紙の服と上手く組み合わせられるかもしれないと、今回のイメージと以前からやりたかったことが繋がっていきました。その結び目というか、象徴になったモチーフが"ハニカムポンポン"。あれで服が作れないかな?って。僕、ハニカム好きなんですよ(笑)。ハニカムって世界中どこにでもあって、中国、タイ、フランス......どんな国でも、スーパーや本屋さんとか身近な場所で売ってるんです。そういう、世界中の誰が見ても分かりやすくて、感度の高い人でも、子供でも、見たら誰もが笑顔になるような、そういう"開くもの"にしたいなと思ったんですよ。

装苑 この仕事で、初めて正式な名前を知りましたが(苦笑)、ハニカムポンポンは子どもの頃の七夕の飾りつけを思い出させてくれました。誰もがワクワクする気持ちになる、素敵なモチーフだったと思います。そして2019年1月3日(木)からはじまる、冬の"LUMINE THE BARGAIN"のビジュアルが12月26日(水)から公開になりますね。平成最後のバーゲン!盛り上がってほしいです。

西岡 冬のバーゲンは、"お正月"に近いことをかなり意識していて"紅白"の色使いでおめでたい感じを出しながら、"芸"というか"ストーリー"を要素として入れてパワーアップしました。ムービーで活かせるアイデアも入れたいなと考えていた時に、染之助染太郎が60年代にアメリカのTV番組でショーをした時の映像を見たことを思い出しました。もちろん観客は外国人ばかりなんだけど、ものすごくウケてたんですよ。和のテイストがそこにあるけど、外国人が見ても、誰が見ても楽しめるあの独特のニュアンスが作れたら......。じゃあ、ハニカムを着たモデルが挑むのは、この芸だ!って(笑)。あと縁起物として背景には扇を重ねていますが、それは派手なだけじゃなくて、末広がりの吉祥のアイコンなので、その文様を立体化しました。

装苑 和の要素をモダンに取り入れる、というのは西岡さんのお得意とされるところですよね。

西岡 僕の父親は友禅の職人で、祖父も元々は地図を描く鳥瞰図師をやっていた人で、その後、着物の図案を描いていました。そのせいか若い頃は伝統工芸なんてイヤだ!ポップアートとかの方がかっこいい! 僕は絶対に跡なんて継がないぞ、って(笑)。だけど世界のアートやデザインの成り立ちを知るほどに、フランスの芸術と日本の伝統工芸が互いに影響しあって生まれてきた歴史を知りました。すべてが回ったり、繋がったりしているんですよね。それに現代の僕らから見たら"伝統"となるものも、当時の人たちにとっては最先端のモダンで洒落たものだったはずですから。
この冬のバーゲンビジュアルには和と洋だけじゃなくて、ちょっとゴスっぽい要素も入ってるんです。例えたら、日本のビジュアルバンドのファンがヨーロッパとかアメリカとかにもいたりしますよね。全部回って今を感じるような"ミックス"になるような感覚で。あと、このビジュアルには独特のニュアンスというか気分みたいなのがあるじゃないですか。和とか洋だけでは語れないニュアンスがあって、それが僕的には出したかったところでもあるんですよね。ビジュアルで伝えるために、言葉で規定できない感情の動きとか、ニュアンスを形にする、視覚化することができたらいいなと思ってるんです。

装苑 エモーションの宿るビジュアルというか、そこにあるエモさというのは、ある意味『装苑』らしさでもあると思います。

西岡 華やかだけどちょっと憂いがあるっていうか。"お正月"って、家族や友達、周りの人たちのことを思ったり、あるいは自分自身のことも見つめたりこれからを思ったり。そういう季節ならではの"思う気持ち"が心のなかに満ちるような時期でもありますしね。

装苑 エネルギーの塊みたいなのを感じますよね。

西岡 このビジュアルが大きく掲げられるJR新宿の駅前とかもすごくたくさんの人が通るし、そのエネルギーにも負けないし、それをもっと盛り上げられるようなビジュアルにもなってるといいなと思いますね。


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2018夏 LUMINE THE BARGAIN VISUAL
Visual Creation by SO-EN
art deirection & costume direction: Nishioka Pencil / movie production: Hiroaki Nakane(Knot.), Takahisa Sasaya(Knot.) / movie director: Daichi Miyazaki(PHONTO) / photographs: Chito Yoshida(AVGVST) / camaraman: Akihiro Kajita / hair & makeup: Kenji Toyota(SHISEIDO) / costume & art: Atelier Inadome, Mayuko Nakagawa / model: Ira Polis, Vic


装苑 この冬のバーゲンビジュアルの前に、夏のバーゲンビジュアルも作りました。紙でできた、丸く広げる飾りものであるハニカムポンポンを、そのまま服にしてしまおう!だなんてすごい発想力ですよね。

西岡 意外とシンプルな話だから、それこそ文化や美大の学生など、すでにやってる人がいるんじゃないかと思って検索したけど、まだ誰もやっていないようだったので、よかったと。僕はアートディレクターなので服も縫えないし、形にもできない。そこで、僕の持っているイメージを形にしてくれる、その仕掛けや緻密な作り込みも一緒にできるのはこの人たちしかいない!と思って声をかけたのが、きゃりーぱみゅぱみゅの衣装やテレビCMの衣装なども手掛けてきたドレスメーカー、アトリエ イナドメのイナドメハルヨさんと中川真由子さんのチームです。スチールだけならともかく、ムービーもあるから360度ごまかしはきかないし、モデルが着て動いてもちゃんと成立するようなものにしたかったんです。このハニカムのドレスが今回のクリエイションの肝なんですが、構造がすごく難しくて大変でした。ミニチュアなら開くのに、大きくすると紙の重みで開き方が変わって異様に反ってしまったり、途中までしか開かなかったり。試作と実験の繰り返しでしたね。

装苑 フィッティングの時にてっきりトラックで運ばれてくるものだと思ったら、紙袋から書類を出すように畳まれたものがさっと出て来て驚きました!こんなドレス見たことない!発明だ!と。さっき、西岡さんはやった人がいなかったから、と言ってましたが、ものを作るうえで、見たことないものであるようにと心がけているんですか?

西岡 どうなんでしょう......。ある程度分かりやすい部分がないと、人って、反応出来ないんですよ。まったく見たことのないものだと共感は芽生えないし、どう受け取ったらいいのか分からないから、心が動きづらいと思うんです。何か見て「おーっ!」って驚いたりすごいってなる時は、分かる何かがそこに入ってると思います。デザインに携わる人たちって、"見たことないもの"とか"新しいもの"をって必ず言いますよね。実際、僕もそうでしたけど、その、新しいものっていうものは、そんな良い形容詞じゃないのかもしれないと、最近あえて思うようになりました。要は、新しい〇〇出ましたっていうだけで、誰でも簡単にニュースを作れるけどそれは一瞬のことで、時間が経つと新しいだけだったものって誰の記憶にも残ってないし、捨てられたりします。古くて良いものでもいいわけですから、必死に新しさを探すよりは、単純に魅力があるもの、良いものを追求した方がいいですよね。

装苑 フィッティングの時に、モデルさんがハニカムドレスを見た瞬間にテンションがあがってとても嬉しそうでしたね。

西岡 現象として、目の前に起こっていることが面白いと、後はどう撮っても面白くなるんですよね。

装苑 現象として面白い、って良いですね。

西岡 そうそう。撮影の時にカメラの前で面白いことが起こりそうなことを仕込んでおくと、絶対面白くなる!というのは広告の仕事をしてきて感じたことです。モデルさんもポツンと立たされて「はい、笑って!」と言われても、......ってなるじゃないですか。だから現象が起こるような話を用意しておくだけでもいいし、美術や衣装と組み合わせてもいい。それを任せる時もあるし、自分で準備することもあるけど、目の前に何かが起こっているようにしておこうって。








2018 夏 LUMINE THE BARGAIN MOVIE


装苑 グラフィックとムービーで連動させたプロジェクトでしたが、並行して考えたんですか?

西岡 僕はまず手描きのラフスケッチですね。いわゆる広告の仕事の時は、カンプを作り込むんです。そうしないと伝わらないし、しかもそのカンプがある種の約束になるから撮影しながらアップデートすることが難しくなっちゃう。でも今回は、一枚の"絵"で提案が出来て、ラフスケッチでみんなが「面白いね」って言ってくれて、プロフェッショナルな人たちがそれぞれに想像力を膨らませて形にしていくセッションみたいになって楽しかったです。

装苑 ムービーではモデルが着ているハニカムが"開く"というアイデアに、背景に置かれたポンポンやゆらゆら揺れたり、モデルの動きに合わせてドレスがふわふわしたり、その"揺れる"という動きが加わりましたね。

西岡 いわゆるCGっぽくない動きっていうか、背景にあるハニカムを支えている棒の軸をずらすと、ブルブルと不規則な動きが生まれたり、倒した時に反動でボヨヨンって跳ね返るとか。そういうのが動画の中に捉えられてて、すごく面白いなって思いました。ドレスはダミーを作った真っ白がすごく可愛くて。バーゲンの盛り上がる感じとリンクするように、白をベースにカラーを足していくやり方にしました。あれは服飾用でフワフワしてるのに強度もある、水彩絵の具ではまったく滲まないのを、ガッシュをねじり込むみたいな感じで手で染めてもらった。相当大変だったそうですが、その分、その色の重なりが高揚感になりました。

装苑 このハニカムのドレス、実物を見ると本当に感動的なんですが、実は冬のバーゲンビジュアルの方でモデルが着用している紅白の衣装が、ビジュアル公開と同じ12月26日(水)から、JR新宿駅の東南口のウィンドーに展示されることになりました。

西岡 楽しみですね。僕も見に行きたいと思います!


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2018-19 LUMINE年末年始ティザー2019年を迎える直前から年越しまでの年末年始を彩るティザーも西岡ペンシルさんのグラフィックワークでクリエートしていただいたビジュアル。こちらもお楽しみに。来たるイノシシ年の足音を感じてください!

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photograph : Jun Tsuchiya (B.P.B.)

西岡ペンシル Nishioka Pencil

京都市出身。金沢美術工芸大学視覚デザイン専攻卒業。電通にて数々の広告キャンペーンを手がけた後、2006年に西岡ペンシルを設立。企業の広告やキャンペーン、ブランディング、ロゴデザインからテキスタイルデザインまで様々な分野で仕事をする。主な仕事に「Welcome! ほじょ犬」ロゴマーク、資生堂ザ・ギンザ「GINZA 心粋 COLLECTION」キュレーション、細見美術館琳派コラボレーション「RIMPOO」、私立恵比寿中学「穴空」、ルミネ・ザ・バーゲン「わたし、ひらく、夏」など。2014年にはパリと東京で2つの「ニュー・文様」展を開催し大きな注目を集める。

西岡ペンシルさんのお仕事
WEB:www.nishiokapencil.co.jp/


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