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人工スエード第一号「ウルトラスエード®︎」で作品制作!「第3回 三越伊勢丹ミライアワード」大賞ほか各賞決定。ミナ ペルホネン 皆川明さんが感じた “将来性”とは?

2026.10.16

新たなファッションの発信と、ファッションの高揚感を届けることを目的に、残布やユーズドストックなど様々な素材を活用して新たなアイテムを作り上げていく、三越伊勢丹グループ主催のアップサイクル企画「ピース de ミライ」。その一環として、服飾学生たちによるファッションコンテスト「三越伊勢丹ミライアワード」が開催されている。

第3回となる今年は、東レによるスエード調人工皮革「ウルトラスエード®︎」の端材と規格外反をピースにした21作品が誕生。

エスモード・東京校、東京モード学園、文化服装学院の学生たちが手がけた力作を、ミナ ペルホネンの皆川明さん、WWDJAPAN編集長の村上要さん、東レ、環境省地球環境局の岩尾素光さんと山内里美さん、三越伊勢丹のバイヤー等が審査し、「ミライアワード大賞」を含む各賞が決定した。

この記事では、去る9月に東京の文化服装学院で開催された審査会の様子と、未来のクリエイターたちへのメッセージも込めた皆川明さん、東レの中島健太郎さん、横川美都さんのインタビューをお届け。

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【ウルトラスエード®︎ ってどんな素材?】

東レが開発した人工皮革で、1970年にデビューした人工スエードの第一号。一時期は「エクセーヌ」とも呼ばれていた。開発直後は欧米を中心に人気が高まり、’70年代半ばから後半にかけて、ホルストンやビル・ブラス、イッセイミヤケなどのコレクションブランドが次々に使用し人気を博す。

裁ち切りで使用できて皮革よりも縫製しやすく、裏地をつけなくても着られるという素材特性があり、さらにホームクリーニングが可能なため、直接肌に触れるシャツなども仕立てられる。現在はファッションのみならず、インテリアや自動車、航空機の内装、靴、カバン、スマートフォンやモバイル機器のケースやアクセサリー製品など幅広く使用されている素材。

【審査会レポート】

学生たちが直接プレゼンテーション!

審査会当日は、学生たちが自ら審査員の方々に作品についてプレゼンテーション。制作意図、パターン、縫製、仕様上のこだわりなどを直接伝えた。貴重な機会に学生たちも気合い十分。

皆川さんからの講評
「近年、最も将来性を感じたコンテスト」

「造形力、素材へのアプローチ、プロセスへの考えといった各軸がある中、皆さんそれぞれに優れた点がありました。点数をつけ、賞を選出することに意味を感じられなくなるほど、各々の強みが際立っていましたね。結果的に賞は発表されますが、ここにいらっしゃる皆さんの作品に優劣はほとんどありません。今後、参加者自身が自分の考えでブランドを作り、運営できるかどうかという点において、私がこれまで見てきたあらゆるコンテストの中で、最も将来性を感じたコンテストでした。ファッションは人々の暮らしの根本を作る産業です。これからも意味と喜びのある仕事を続けてください。皆さんの未来に期待しています」(皆川さん)

【皆川明さんインタビュー】

「奇抜さ」だけが才能の証明ではありません

「第3回 三越伊勢丹ミライアワード」では、ウルトラスエード®︎の素材特性を理解し、しっかり服に落とし込んでいる力作を多く見ることができました。特に印象的だったのは、素材の重量への意識です。

例えば、田中柴亜羅さん(文化服装学院ファッション高度専門士科3年)の作品は、フリルやフリンジ装飾がある下の部分に重さが出ます。その下側のパンツをつなぐリボンのみを二重にして、強度を持たせることで重量にまつわる課題を解決していました。そうした物質的な条件への観察眼を学生の間から持てるというのは、素晴らしいことです。

また、このコンテストが三越伊勢丹の主催であるということも重要な点です。つまり、市場の視点が入ったコンテストだということ。既存のファッションコンテストは新奇性が重視されることが多く、市場性を考えながらものを作りたい学生には、必ずしも有利ではない側面があります。すると「奇抜で、ランウェイで目立つものを作らなければデザイナーとして認められないのではないか」という、ある種の間違った誤解が共有されやすい。

ですが、プロのファッションデザイナーとして仕事をしていく際、市場への視点は必要不可欠です。この「第3回 三越伊勢丹ミライアワード」では、カッティングの美しさや着やすさ、生産性も考えられたプレーンで市場性のある作品を見ることができました。それはおそらく、審査にマーケットの視点が入っているからだと思います。若い人のアイデアに、市場の視点を加えること。それが今後、将来性のあるデザイナーを輩出するコンテストの条件になっていくのではないでしょうか。

ファッションを志す若い人たちに私が伝えたいことはシンプルです。「こうじゃなければいけない」という刷り込みがあるなら、そこから離れて「自分がしたいことを望む人が、世の中にきっといるはずだと信じる」、その気持ちを大切にしてください。そしてファッション教育もコンテストも、正解を教えるのではなく、それぞれが自分の答えを見つけ、信じていけるような取り組みが根付いていくことを願っています。

審査会場に並んだ作品。皮革のように扱うことも、布のように扱うことも可能なウルトラスエード®︎へのアプローチは、学生によってさまざまだった。

各賞受賞作品はこちら!

【東レ SPECIAL INTERVIEW】

ウルトラスエード®の進化と、「Beautiful Possibilities」な創造の未来

東レ ウルトラスエード事業部の中島健太郎部長と、繊維事業本部の横川美都さんにインタビュー。半世紀以上の歴史を持ちながら、絶えずアップデートを重ねる最高峰の人工皮革「ウルトラスエード®」の歩んできた道と現在地、次世代のクリエイターたちが解き放つ素材の可能性について教えていただいた。

東レウルトラスエード事業部部長 中島健太郎さんインタビュー

中島:ありがたいことに、ウルトラスエード®︎は、今年56周年を迎えることができました。おっしゃっていただいたように、世界的なデザイナーの方々に愛されてきた歴史は私たちの誇りです。

ビジネスの観点から見ると、ウルトラスエード®は「1.0から3.0」へとフェーズを深めてきました。 1.0時代には、リアルレザーの風合いや質感、タッチを完全に再現しながら、圧倒的な軽さと工業製品ならではの安定性・作業性を両立させた革新素材として、ファッションの世界で爆発的にヒットしました。

2.0時代にはインテリアやファニチャーの世界へ進出し、さらに3.0としては、オートモーティブ領域(自動車産業)へと用途を拡張してきました。

中島:はい。厚みや毛並み(質感)も含め、お客様の要望や用途に合わせて多種多様なバリエーションが生まれました。しかし、私たちのアイデンティティの本質は、ただ用途を増やすことではなく「素材そのもののアップデート」にあります。

ベーシックな製造技術や本質的な構造自体は50年前から変わっていません。ですが、例えば髪の毛の1/20という極細繊維をさらに一桁細くしたり、その繊細な風合いを保ったまま耐光性や耐摩擦性を極限まで高めたりと、常に進化させています。「昨日の素材よりも、明日はさらに良いものを届ける」。この絶え間ない姿勢こそが、ウルトラスエード®の根幹なのです。

中島:非常に新鮮で、大きな刺激を受けました。特に印象的なのは、学生の皆さんが「いかに自分の思いやコンセプトを社会へ発信・伝達するか」という、マーケティング的な視点を強く意識されていた点です。

ほとばしる情熱を言葉やデザインで直接表現する方もいれば、「これを見せれば一目で伝わる」というキラーコンテンツのような素材使いをされている方もいました。どうアプローチすればこの素材の価値が届くのかを客観的に捉えて作品を形にしていく姿勢に感銘を受けました。

中島:ここ数年でECや専用の受注サイトを整備し、小ロットでもスピーディにお手元へ届けられる仕組みを構築しました。これも時代やライフスタイルの変化に合わせたアップデートの一つです。また、近年はプリントや後加工による表現の可能性も追求しており、毎年独自のコレクションを発表しています。

私たちは今、次なるステージである「ウルトラスエード® 4.0」の未来を見据えています。学生の皆さんのような新しい感性と触れ合いながら、これからも常に進化し続ける素材でありたいです。

東レウルトラスエード繊維事業本部 繊維ブランド推進室 横川美都さんインタビュー

横川美都(以下、横川):東レでは長年、様々な教育機関の皆様と産学連携に取り組んできましたが、特にウルトラスエード®においては10年ほど前から、ファッションを学ぶ若いクリエイターの方々との取り組みを本格化させていました。

ウルトラスエード®には「Beautiful Possibilities(美しき可能性)」というコンセプトがあります。素材単体の美しさのみを追求するのではなく、素材を使ってものづくりをしてくださるデザイナーの方や、実際に身にまとうお客様とともに新しい価値や美しさを創り上げていく、というステートメントです。

素材メーカーとしてファッション業界全体を盛り上げ、若き才能が世に羽ばたくきっかけを少しでもサポートさせていただけたらと思っています。

また、私たちとしても、ウルトラスエード®を実際に使っていただくことで、次世代を担う学生の皆様に、まずはこの素材の面白さを知ってほしいという強い思いがありました。

横川:はい。ものづくりの過程や試作段階で、どうしてもお客様へ販売できない小さな端材が生まれてしまいます。かつては廃棄せざるを得なかったこれらの端材を「学生の皆さんの学びやものづくりに役立てられないか」と考え、約10年前から積極的に試作や実験用として自由に使っていただく取り組みを続けてきた経緯があります。

そんな中、「三越伊勢丹ミライアワード」の存在を知り、私たちが長年続けてきた活動と思いが強く重なると感じてお声がけをさせていただいたのが協賛のきっかけです。

普段はなかなか手に触れる機会がない素材かもしれませんが、試作段階から自由に触れて実験を重ねてもらうことで、素材から思考するものづくりの楽しさを体験してもらいたいと思っています。

横川:本当に感動しました。驚いたのは、まったく同じ厚み・同じ色のウルトラスエード®1品番(SKU)から、これほどまでに多様な表現やアウトプットが生まれたことです。

ウルトラスエード®は、コートなどのアウターだけでなく、インナー、パンツ、ドレス、さらにはバッグや帽子といった雑貨に至るまで、あらゆる形に変化できる強さと柔軟性を持っています。学生の皆さんは、その素材特性を見事に捉え、それぞれの情熱やアイデアと融合させて作品へと昇華させてくれました。

「Beautiful Possibilities」という言葉通りの大きな可能性を、学生の皆さんの圧倒的な情熱とクリエイティビティによって、私たちが改めて教えていただいた気がします。

参加作品は、伊勢丹新宿店のウィンドウにて下記期間に展示。

伊勢丹新宿店 本館ウィンドウ
期間:2026年10月7日(水)〜10月27日(火)
※展示期間は都合により変更する場合がございます。あらかじめご了承ください。
場所:東京都新宿区新宿3-14-1

photographs : Josui Yasuda,Yoshiyuki Kobayashi  (B.P.B.)
interview & text : SO-EN

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