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知っておきたい!
2025年のファッショントピックス From Paris

2025.12.27
Luca Tombolini
Luca Tombolini

 モード展ブームに沸くパリの今年は、 “ハンドメイドの価値”にオマージュを捧げたドルチェ&ガッバーナの大展覧会「フロム ザ ハート トゥ ザ ハンズ(心から手へ)」で幕を開けた。時代を映す文化の殿堂「グラン・パレ」を会場に、連日長蛇の列を生んだ同展は、約3か月で41万人以上の動員数を記録したという。

 近年のファッション界では、大量生産・大量消費への反発がいっそう明確になり、短命なトレンドを追う服よりも、長く着続けられ、修理や継承が可能な服への関心が高まっている。多くのメゾンが“クラフツマンシップ”や“メティエダール(芸術的な手仕事)”を打ち出し、ラグジュアリーの定義も変化した。

 高価であることよりも時間・技術・人が費やされていることに価値が置かれ、特にデザインチームの交代が相次ぐ昨今では、揺るぎないアトリエの存在がメゾンの信頼性や正統性を示す拠り所となっている。その根幹を支えるサヴォアフェールが再評価されているのは、必然の流れといえるだろう。

Luca Tombolini
Luca Tombolini

 サヴォアフェールは、次世代デザイナーにとっても重要な要素となっている。躍進する彼らの多くは、それを単なる伝統の継承ではなく、独自のクリエイションを成立させるための表現方法として用いているのである。これにより、サヴォアフェールは過去の遺産ではなく、現代性を得るための手段となった。

 若手デザイナーを支援するLVMHプライズが、2024年度から新たにサヴォアフェール・プライズを設けたのも、こうした潮流を反映している。この賞は、現在のファッション界で重視される“職人技”、“イノベーション”、“持続可能性”という三つの価値を見据えたものだ。

 この秋、東京で開催されたシャネルの文化プログラム「la Galerie du 19M Tokyo」も記憶に新しい。「le19M」は 11のメゾンダール(芸術的な手仕事の工房)が集結する複合施設である。フランスのファッション界にとって産業を支えるアトリエの後継者不足は深刻な問題であり、シャネルは1985年より技術の継承と保護を目的にメゾンダールを傘下に収めてきた。

Luca Tombolini
Luca Tombolini

 2025年末のパリでは、フランス屈指のモード美術館ガリエラ宮で、サヴォアフェールに焦点を当てた展覧会が開幕した。ここでも「le19M」に入居する刺繍の「ルサージュ」、羽根・花細工の「ルマリエ」、ジュエルボタンの「デリュ」など、複数のメティエダールが紹介され、その重要性が語られている。

 さらに、惜しまれつつもファッション界の表舞台から去ったドリス・ヴァン・ノッテンが、サヴォアフェールを守り育てることを目的とした財団を、来年春に開設するという。その拠点となるのは、ヴェネチアの歴史的建造物「パラッツォ・ピザーニ・モレッタ」である。ファッションをはじめ、アート、デザイン、建築、ガストロノミーまでを横断する文化施設となるそうで、その行方に大きな注目が集まっている。

 ものづくりに終わりはない。豊かな創造性とともに成長するサヴォアフェールは、ファッション界の未来を切り拓くための力なのである。

NEXT:先進的なスマート素材の深化

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