フランスの地方には、意外と知られていないステキなミュージアムがいっぱい。
その土地に根づいた伝統工芸、アート、モードと共に、町の魅力も発見してみて。
Musée de la Bonneterie – Troyes
メリヤス産業博物館 – トロワ
シャンパーニュ地方の南部に位置するトロワ。人口6万人ほどの小さな町ですが、19世紀から20世紀にかけ、メリヤス(機械編みによる編み物)産業で“黄金時代”を築いた歴史があります。
この地域で作られたビンテージの靴下。19世紀のもので、凝った刺繍が施されている。Collection ville de Troyes – Musée de la Bonneterie – Photo by Carole Bell
もともとトロワは、中世からテキスタイルで栄えた町。編み機が発明されたのはイギリスですが、ルイ14世の時代にフランスに持ち込まれ、18世紀半ばからこの地域一帯にメリヤス産業が広がりました。1770年、トロワには40のメリヤス製造業者が存在し、1780年代末には1500近くまで増えたそうです。
その後も成長を続け、19世紀の産業革命により、町とその周辺はメリヤスの中心地となります。ポロシャツ、Tシャツ、靴下といったメリヤス製品で知られるラコステ、プチバトー、ディムなどの工場もここに作られました。
19世紀末頃から20世紀前半にかけてトロワで作られた肌着や子供服。壁には細かな数字が並ぶテクニカルシートの展示も。
大きく発展した理由は、品質はもちろん、トロワの発明家たちが編み機の改良に力を注いだこと、更には機械の製造から衣服の製造までと、生産チェーンを構築したことにあります。大戦とアジアからの輸入製品の波、ストッキング離れの影響を受け、産業は衰退していったものの、ここには現在も複数の国際的なブランドの工場があり、重要なメリヤス製品の産地となっているのです。
日々の生活に欠かせない身近な衣類に使われるメリヤス。その歴史をぜひ覗いてみてください。
博物館があるのは16世紀の面影を残す「ボリュイザンの館(Hôtel de Vauluisant)」。館内には国
内外で開発された編み機が年代順に陳列され、メリヤス産業の歴史を伝えている。
18世紀の家内工業の再現。この辺りの農家では冬は家でメリヤスを編んで生計を立てていた。多くの家庭では、男性が重い編み機を操作し、女性は糸を紡ぐなどの軽作業をしていたそう。
家庭にあったのは木製の編み機。ペダルを踏んで機械を動かしていた。
糸を紡ぐ道具などの展示。
電気が通っていない時代、水を入れた丸いガラスの容器に光を集めて手元を照らしていた。