伊藤:今の話で、小学生の時に見よう見まねで少女漫画を描いていたことを思い出しました。小学校の頃からずっと絵を描くことが好きで、描いたものを読んでもらう交換日記みたいなことを友達としてた。思えばその時から何かを「作る」ことが好きだったな。中学校にあがったら恥ずかしくなってしまったのと、クラシックバレエやダンスなどの「表現をする」ほうに夢中になって、やらなくなってしまったのですが・・・。高校生でアイドルになってからは、監督と話し合いながらMV撮影をするプロセスが楽しくて、映像の魅力を知ることができました。
高校時代、学校での一番の思い出といえば、優実ちゃんと同じでダンスの発表会。普段は仕事があったので学校の皆とあまり関われなかったけど、チームの皆とコンセプトを考えたり練習をしたり、衣装をどうするか話し合ったり、インスピレーションをもらいに展示会を見に行ったりしていました。その発表会で、優勝したんです。
―すごい!
伊藤:高校3年生というタイミングだったこともあって、とても印象深い、私の高校時代唯一の『サマーフィルムにのって』的な思い出です。
私は個展を開いたり、何か表現をしたりする時に、そこに関わってもらった他のクリエイターさんやスタッフさん達みんなと「いいね」って言い合いたい思いがあります。作品は、関わった皆それぞれのもの。そう感じるのは、高3のダンス発表会の経験を経ているからかもしれません。
―ありがとうございます。では今回、『サマーフィルムにのって』から受け取ったものは何でしょうか?
伊藤:さっきキララちゃんが言っていたみたいに、ただ好きだからやりたい、興味があるからやってみようという初期衝動が、今後ものを作っていく上で一番大事なことだと思いました。仕事として続けて慣れてくると、いつの間にか機械的に動いてしまうこともあります。「この時間までにやらなきゃいけないから、コンディションを整えなきゃ」とか。でもそんなことより、どれだけその時自分の感情が高まったか、が大事なんですよね。演者ならその瞬間を映像に残すことが大事で。好きなことにただただまっすぐ向き合うことの大切さを、今回すごく感じました。この映画は、松本さんと三浦さんの初めての長編映画で、私にとっては初主演映画。そこで感じたこの気持ちは、絶対に忘れたくないです。
河合:劇中の「ハダシ組」でも、実際の撮影現場でも感じたのは、大勢でのものづくりは、皆が同じ方向を向いていると良いものができるんだなということです。お仕事となると本当の意味でそれをするのは難しくもあるのですが、『サマーフィルムにのって』では、皆がこの物語を好きな気持ち、信じる気持ち、応援する気持ちが揃ってきたなという時に、一番いい熱が生まれていました。その体験は、とても貴重でした。
祷:私は、エンドロールが流れてこの映画が終わっても、未来のどこかでキャラクター達が「生きている」と思ったんです。こんな風に未来を信じられるってすごいことで・・・。というのも、『サマーフィルムにのって』は、コロナ禍で、一度撮影が中断してしまったんです。その時はいつ再開できるかもわからない状況で、もしかしたらこの映画自体無くなってしまうかもしれなかった。でもどうしても無くなってほしくなくて、皆で願ったり信じたりしているうちに撮影が再開し、映画を完成させることができたんです。その物語の中では、ハダシ達が映画を未来に残そうとしています。私達も『サマーフィルムにのって』を残すことができたので、きっと映画を作る未来の人に何かをつなぐことができる。そう信じられたことで、映画が一番好きで映画を一番やりたい、という自分の気持ちがさらに強くなりました。