「梨泰院クラス」などの俳優、キム・ダミにインタビュー。
「心が通じ合っていた」、映画『ソウルメイト』の特別な経験と俳優としての核心

2024.02.12

©️UAA

大ヒットドラマ「梨泰院クラス」や「その年、私たちは」で世界にその存在感を示した俳優、キム・ダミ。出演最新映画である『ソウルメイト』(2024年2月23日公開)では、奔放な明るさの内側に悲しみを隠した“ミソ”というキャラクターの、10代から30代までを繊細に演じきった。『ソウルメイト』についての対話から、話題作への出演が続くダミさんの表現者としての核心をのぞくインタビューを。

interview & text : SO-EN

――本作『ソウルメイト』では、ミソ(キム・ダミ)とハウン(チョン・ソニ)の間の揺るがない友情を感じ取ることができ、特に映画の終盤以降は自分の友達のことを思い出して、胸を打たれました。見る人に真の友情を感じさせる表現のために、どんな物理的・精神的な準備をされましたか?

キム・ダミソニさんとはずいぶん話をしましたし、よく一緒にご飯も食べました。本当のソウルメイトのように感じられたらいいなと思って。でもなぜか実際、ソニさんとは数回しか会ってないのに心が通じ合っているような気がしたんですよね。まるでミソとハウンみたいに。だから、これといって何か特別なことをする必要もありませんでした。現場でもそんなソニさんがハウンを演じてくれたから、私もミソを演じきることができたと思います。

映画『ソウルメイト』は、20年に及ぶ女性同士の友情物語。キム・ダミさん演じるミソと、チョン・ソニさん演じるハウンの場面には、胸を打つシーンがたくさん。

――ダミさんは、ミソの10代から30代をお一人で演じられていますが、それには、衣装の要素がとても大きかったのではないかと感じます。衣装選びのポイントとなった点を教えていただけますか?

キム・ダミ若い頃に自由を追求していたミソが、成長と共に安定を求め始めた様子をファッションでも表現したかったんです。ミソは、子どもの頃に動きやすくてラフな服や、色なら原色系のものばかり着ていたのですが、大人になってからは落ち着いた感じの服や、体にフィットするような服を選ぶようになりました。

大人になったミソのスタイルは、シンプルでシック。カラーリングもチャコールやグレートーンでまとめられることが多い。

――ミソははっきりと自分の考えを表明できる強気のキャラクターですが、ハウンとはある時期からすれ違ってしまいます。ダミさん自身は、ミソのコミュニケーションをどのように捉えていたのか、気になりました。

キム・ダミその件については、私たちも撮影の時によく話し合いました。頼むから二人とも本音で語ってくれないかな、なんて。でも、ミソもハウンもお互いのことをすごく想い合っていたからこそ、本心を言えなかったんじゃないでしょうか。きっと、その時のミソにしか感じられない、ミソにしかできない表現があると思うので、私はそれを尊重しますね。ミソにとってはそれがその時にできるベストな選択だったのでしょう。

――ミソという役に対するダミさんの敬意を感じます。ある別のインタビューで、ダミさんはミソと似ている部分が多いとおっしゃっていましたが、逆に自分とは違って興味を引かれた点はありますか?

キム・ダミミソは私より自由だと思います。自分のやりたいことのためならば、人とぶつかることも厭わないんです。実は撮影の時、私がミソになりきれるようにハウンやジヌ、スタッフの皆さんが環境を整えてくださいました。もちろんセットもです。だからミソとしてのびのび過ごせたのではないかと思っています。

映画『ソウルメイト』より

――ミソは物語を動かすパワーのある役柄ですもんね。ダミさんが、ある種台風の目のような役柄をチャーミングに演じられる姿がとても好きなのですが、そうしたパワフルな役を演じるためにどんなことが必要なのでしょう。

キム・ダミ私は、どんな現場でもどんな役でも、相手との呼吸が大切だと感じています。毎回、私も新しい現場を経験するたびに成長させて頂いているのですが、常々実感しているのは、演技は一人ではできない、ということです。私自身ではなく、相手によって私の役が作られるような感覚も多々ありました。だからこそ、何か特別なことではなく、現場と相手の役者さんとの呼吸を大事にすべきだと思っています。

そして、役を演じるには自分がその役を一番理解すべきですよね。台本に出てきた役を信じて共感することで、ようやく次のステップに進むことができると思います。

――ミソは若い頃に音楽やアートの近くにいて、自分を「ジャニス・ジョップリン」とも名乗ります。そうした彼女のパーソナリティは役への理解にどんな影響を与えましたか?

 キム・ダミ自由に表現したいことがたくさんあって、その表現の仕方が型にはまらないのがミソだと思っていました。心のままに表現する人だな、と。でも、実はミソの自由さは、自分を守るための手段が形を変えたものではないかと思い始めたんです。行動や発言とは裏腹に、心の奥底では安定を求めていると感じましたね。

『ソウルメイト』
ある絵画公募展で大賞に選ばれた一枚の絵には、「作者・ハウン」という記載だけがあった。描かれていたのは高校時代のミソ(キム・ダミ)。ミソは、ギャラリーの担当者からハウンと連絡を取りたいと言われるが、ハウンとは幼い頃に遊んだだけの仲だと語る。しかし、ハウンのブログにはミソとの友情が綴られており、二人は小学生の頃からの大親友だった。ミソの希望となったハウンとの秘密とはーー。16年にわたる二人の女性の友情の物語。『少年の君』で知られるデレク・ツァンの単独監督デビュー作『ソウルメイト/七月と安生』のリメイク作。
監督:ミン・ヨングン
出演:キム・ダミ、チョン・ソニ、ピョン・ウソク
2024年2月23日(金・祝)より全国公開。クロックワークス配給。
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Kim Da-mi(김다미) 1995年生まれ。2017年『マリオネット 私が殺された日』で映画デビュー。その翌年、オーディションで主演を射止めた『THE WITCH/魔女』(’18年)で新人賞を数多く獲得。「怪物新人」と称される。’20年のNetflixドラマシリーズ「梨泰院クラス」では天才的な頭脳を持つヒロイン、チョ・イソを演じ、世界に名を知られることとなる。チェ・ウシクと共演したラブロマンスドラマ「その年、私たちは」(’21年)では、主人公の恋人役を演じて話題となった。出世作の続編『THE WITCH/魔女 -増殖-』にも姿を消した魔女として出演。