河合優実
「人をこういう気持ちにできるものがあるからまだ大丈夫、と思えます」
styling : Tatsuya Yoshida / hair & make up : Aya Murakami
――『少女は卒業しない』が河合さんの初主演作品です。2022年は8本の映画出演作の公開があり、本当に多くの作品で河合さんを拝見しました。2019年から作品を重ねられてきて、今フィルモグラフィを振り返り、本作までの歩みにどんな実感を持っていますか?
河合:すごく恵まれていることを感じます。’22年に公開作が多かったことは偶然のタイミングだとも思っていたのですが、最近は、周りの人達と自分が引き寄せあって、やりがいのある作品に出会えていたんだなと思います。
――作品はどのように選ばれるのでしょうか。
河合:内容はその時々で面白いなと思うものであれば、特にこだわりはありません。でも、なんでもいいということでもなくて。
一言で面白さと言っても、いろいろな面白さがあるものですが、変わらないのは、誰かが純粋に「撮りたい」と思ったものを皆が尊重している現場に行きたいという思いです。
――今作はどこに面白さを感じ、参加したいというモチベーションにつながりましたか?
河合:まず、朝井リョウさんの原作であるということがありました。朝井作品を原作として、これまで優れた日本の青春映画が作られてきたという部分です。あとは、中川駿監督の『カランコエの花』を、たまたま公開時に劇場で観ていて。限定的な規模で公開されていた映画だったので、お話をいただいて縁を感じました。
今まであまり多くなかった、等身大の高校生役を演じることにも意義を感じました。
映画『少女は卒業しない』より
――主演という立場で作品に参加されて、面白かったことや発見はありましたか?
河合:主演ということに気張らず、フラットに挑もうと思っていたんです。主演の人が現場の空気を変えたとか、主演の人が作品を引っ張っていたということって、よく聞きますよね。でもそういうことは不慣れな私にはできないと思っていましたし、群像劇でもあったので、あまり気負わずにいこうと思っていました。
ただ、やっぱり背負っている感覚はどこかにあって。その感覚を持って台本を読んでいると、常々思ってはいるものの、良いものにしたいなっていう思いが単純に大きくなっていったんです。「これも違う」「あれも違う」「うまくいかない」「どうしよう」みたいな試行錯誤を一人で繰り返している時間に、だんだんメラメラした想いが込み上げてくるーーということはありました。
――この作品にはある「仕掛け」があります。観客は、河合さん演じるまなみの表情の変化によってだんだん違和感を覚えていき、完全に状況を理解した時に衝撃や感動が訪れる。この仕掛けを成立させるための、表現の出力の調整がとても難しそうだと思っていました。
河合:まさにその出力の調整みたいなことを、本作に限らずいつも考えています。
次のシーンに移ったり物語を伝えるのに、何をどのくらいすればいいだろう?と一度自分で考えて、あとは監督と話したり現場に行ってみます。だけど実際の現場では、一つ一つのカットを細かくモニターチェックし、やっぱりどのくらいにしよう、みたいな修正作業はできません。いつも、台本を読んで考えていったものと同時に、監督の指示を聞いて感じたことからある表情を撮った、ということの積み重ねなんです。そこで出たものしか映すことができない。
――瞬間の集中力が問われそうです。
河合:そうですね。ただ、何か別のことに心が奪われていて映画を撮っている日もどうしてもありますし、その日の自分が映った面白さでいくしかないなと思っています。100%集中したくても、気分はどうしても変わってしまうので。最終的には、その日その日で映っていくしかないと思っています。
――卒業式の前日と当日という、限定的な時間が描かれた本作を観ることで、高校時代の特異さを思いました。小さくて大きい学校という場所の存在や、定められた終わりがあること、子供と大人との間の年齢である危うさなどです。今回演じられて、高校時代というものをどんな風に感じられましたか?
河合:『少女は卒業しない』は、世界の全てが学校にあった時代をテーマにしていますし、その世界には絶対に終わりがあることを描いています。18歳まで、多くの人はほとんどの時間を学校という場所で過ごしますし、その短い間に様々なことが起きますよね。入学して、友達ができ、受験して卒業して。そのことで人が大きく変わっていく時期なんだろうな、ということは自分が学生の頃から意識していました。
映画『少女は卒業しない』より
――その学校という世界の中に、登場人物それぞれの居場所があったと思います。まなみであれば調理室。河合さんにはそんな風に、自分の居場所とするところはありますか?
河合:家・・・ですかね(笑)。あとは、すごくすごくいい映画や舞台を観ているとき、その劇場の椅子に座っている瞬間がとても幸せで。「この時間、最高」と思う瞬間に、年に数回は出会えるんです。それはいわば観客の立場なので、このお仕事をしていてそれでいいのだろうかという思いもあるのですが、劇場の椅子が私の居場所だという感覚に浸ることがあります。
――観客としての感動が強いからこそ、向こう側にもいけるのではないでしょうか。
河合:そうですね。現場で納得がいかないことがあったりフラストレーションが溜まっても、そういう観客としての体験があると、希望のような、人をこういう気持ちにできるものがあるからまだ大丈夫、と思えます。それで保っています。
――大事なお話をありがとうございます。最後に、河合さんが卒業したくないことはなんですか?
河合:そうして仕事以外の時間に感動していることです。それは、必ずしも作品を観た感動じゃなくてもいいと思っていて。
この間、仕事でスペインに行って、とても綺麗な海に感動しました。そんな風に、生活の中でフレッシュに感動できることをずっと失わずにいたいです。
Yuumi Kawai
2000 年生まれ。東京都出身。2019 年デビュー後、数々の新人賞を受賞。2022年は第14回TAMA映画賞<最優秀新進女優賞>、第35回日刊スポーツ映画大賞<新人賞>、第44回ヨコハマ映画祭<助演女優賞>を受賞。主な出演作に「サマーフィルムにのって」、「由宇子の天秤」、「ちょっと思い出しただけ」、「愛なのに」、「女子高生に殺されたい」、「冬薔薇」、「PLAN 75」、「百花」、「線は、僕を描く」、「ある男」など。公開待機作に「ひとりぼっちじゃない」(2023年3月10日公開)がある。
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小野莉奈
「いつもどこかに、自分を残したいという思いがあるのかもしれません」
styling : Yumiko Segawa / hair & make up : Yoko Fuseya (ESPER)
――小野さんご自身は、高校1〜2年生の頃に俳優になりたいという夢を持ち、オーディションをたくさん受けられていたそうですね。ご自身の高校生活はどんな日々でしたか?
小野:ダンス部に入っていて、活発に何かをするのが好きでした。チームを組んでダンスの発表をしたり、バンドを組んで楽器を弾いて卒業イベントで歌ったり。メンバーも自分で集めたりと、自分で自分を忙しくしている高校時代でした(笑)。なんでもやってみたい!というチャレンジ精神が強かったのと、人前に出て自分を表現するのが好きだったんです。
――小野さんが演じられていた後藤由貴と重なる部分があるんですね。
小野:実は、後藤には自分の学生時代の思いを詰め込んでいるんです。台本や原作から後藤の心情を汲み取っていくことはもちろん、それだけじゃなくて自分にしかできないお芝居をしたいと思ったときに、学生時代の記憶や辿ってきた思いなどをこの役に反映させようと思いました。
映画『少女は卒業しない』より
――後藤は人前では明るくふるまっていて、悩みも明るさで包んで見せないような女の子です。クラスメイトには「陽キャ」と認識されているかもしれませんが、内側には葛藤を抱えている。そのことが、小野さんの表情の一つ一つから伝わってきました。もしかしたら学生時代に「いつも明るくて元気な子」と思っていたあの子も、人知れず悩んでいたのかもしれない、と。
小野:後藤に対してそういう見方をしてもらえたならよかった、と思います。後藤は明るいしバスケ部で、いろんな人と仲が良くてーーという子。ただそういう子も、実は悩みや大きな葛藤を抱えているかもしれない。それを映画で見せられたらいいなと思っていたんです。後藤の二面性を伝えるため、映り方や全体像を計算しながら演じていたところがあります。
ここでこんな表情をしたら二面性を感じてもらえるかなとか、自分がこう思われたいという後藤像を考えて、そこにたどり着けるようにしていました。
――それは中川監督とのやり取りで掘り下げていかれたのでしょうか?あるいはご自身の経験から?
小野:監督には、現場で委ねられている感じがしていました。もちろん大筋でこうしてほしいということは言っていただいていましたが、後藤の内面や表情についてはほとんど何も言われませんでした。そこは自分で考えたものかもしれないです。
――小野さんの経験と、監督が演者を尊重する姿勢がバッチリ噛み合ったのですね。
小野:そうだと思います。だから演じやすかったです。あと、監督が気遣ってくださっていたと思うのですが、現場も学校みたいなムードが作られていたので、撮影中は本当に学校に行くような感覚でした。
――バスケの練習をすごくされたそうですね。
小野:しました!お芝居よりも、ある場面でシュートを決めてほしいということに、監督からの圧を感じていました(笑)。テイクを重ねるなかで、ゴールの端っこにボールが当たって落ちたことがあり、「これでもいいかな?」ってちらっと見たら、監督が無言で首を横に振っていて。
――違う、と(笑)。
小野:はい。シュッと入ってほしいんだと(笑)。だんだん日も暮れてくる中、次第に現場のスタッフさんからの「お願いします、小野さん・・・」という願いもひしひしと伝わってきて(笑)。なのでゴールが決まった後にわっと喜んでいる場面では、素の私が出ています(笑)。
不思議なのですが、私としてこのシュートを決めたいとボールを投げるよりも、後藤としてボールを投げた方がシュートが入りました。
映画『少女は卒業しない』より
――面白いお話です。どんな気持ちでこの作品に臨まれていましたか?
小野:自分の年齢を考えても、制服を着て友達と他愛もない話をして恋愛で悩んで・・・という、学生にしか味わえないような役を演じることが、またあるかどうかは分からないと思ったんです。私は演じたいと思っていても、それはやっぱり巡り合わせなので。
「絶対これに出たい!」と思うような青春映画に出会えることがもう二度とないかもしれないと思ったとき、絶対に後悔がないように取り組もう、と思いました。事前に抜かりなく後藤の気持ちや内面を追っていき、本番ではただ後藤として存在したいな、と。後藤としていられることが本当に楽しいと思えることが大事だと思っていました。
――この映画は、圧倒的な区切りにどう向き合うかを描いていますが、小野さんが決して区切りをつけたくない、卒業したくないと思う物事はなんでしょうか?
小野:自分らしさです。私は、良くも悪くも人に言われたことに影響を受けやすいタイプで、それは気にしなくていいんだよって言われるようなことも、真面目に考え込んでしまう時があります。俳優の仕事には「聞く力」が必要なのですが、それを使いすぎると私は自分を見失いがちになり、ちょっと削れちゃうんです。その塩梅をうまくコントロールできるようになれたらいいなと思っています。
先ほど、後藤に自分自身を反映させたとお話ししましたが、反映したのは中学生や高校生の頃の自分。昔の写真を見て当時抱いていた希望や夢を思い出し、それを後藤に投影させていたんです。なので完成した作品を観たとき、「これは私だけど今の私ではない」と明確に思いました。この映画に過去の自分を残せたのはうれしかったです。いつもどこかに、自分を残したいという思いがあるのかもしれません。
Rina Ono
2000年5月8日生まれ、東京都出身。2017年にデビュー。テレビドラマ『中学聖日記』(TBS)での好演が話題を呼ぶ。’19年、『アルプススタンドのはしの方』で初舞台にして初座長を務め、’20年には同作を城定秀夫監督が映画化。’21年にはNHK大河ドラマ「青天を衝け」に出演した。主な出演映画に『POP!』(21/小村昌士監督)、『左様なら今晩は』(22/高橋名月監督)など。待機作に『真夜中のキッス』(23年公開予定/佐向大監督)。
小宮山莉渚
「成長には苦しみがつきもの。それを教えてくれたのがこの映画です」
styling : Masami Matsuo / hair & make up : HIROKO (Secession)
――小宮山さんは『ヤクザと家族 The Family』に続き、この作品が映画出演2作目ですね。実際のご自身よりもちょっと年上の役柄でした。
小宮山:はい。1歳年上の役でした。
――ご出演が決まった時はどんな気持ちでしたか?
小宮山:今まで高校生を演じることが少なかったので、より自分の私生活に注目しようと思いました。それがそのまま役につながると思ったんです。
――実際、ご自身の高校生活を振り返ってみて、どんなところが役に立ちましたか?
小宮山:私は友達と仲がいい分、友達に合わせすぎてしまうところがあって、それが今回演じた神田に似ています。なので、そうなった時の自分の反応や、周りの雰囲気、空気感をできるだけ自分の中で掴んでおいて演じたいと思いました。
映画『少女は卒業しない』より
――小宮山さんが実際に過ごしている高校生活と、映画の中の神田の高校生活は近いものだったのでしょうか?
小宮山:はい!近かったです。なので不思議な気持ちになることがありました。特にホームルームのシーンは、エキストラの皆さんが本当のクラスメイトみたいで。明るくギャーギャー騒いでいる子もいれば、静かな子もいるリアルなクラスの雰囲気のなかで、「ああ、これは学校だ」と思いました。普段の生活と重なるリアリティがありました。
――登場人物と同世代である小宮山さんが聞いて、心に残っているセリフはなんでしょうか?
小宮山:神田が言う、「森崎は森崎だから」というセリフです。神田が森崎(佐藤緋美)のことを大事に思っている分、ここには葛藤があり、さらに我慢や優しさなど様々な感情が込められていたと思います。
森崎との場面は印象的なところが多いですが、自転車の二人乗りをするシーンも注目していただけたらうれしいです。
映画『少女は卒業しない』より
――小宮山さんは、どんなことを感じながら「卒業」の物語を演じられていたのでしょうか?
小宮山:この映画は、4人の少女が卒業に向けて成長していく過程を描いた作品です。だからこそ、別れがあって前に進む時の気持ちの変化をしっかり見せたいなと思っていました。後半、神田が勇気を出してある突飛な行動を取るのは、神田が変わろうとしている変化の表れ。それを演じたとき、私自身の中に強い違和感があったんです。そのことで、成長とともに「崩れ」もあるんだなということを実感しました。その「崩れ」を整えていった先に成長があるんだ、って。成長には苦しみがつきもの。それを教えてくれたのがこの映画です。
――ご自身は、どんな卒業式を迎えたいと思いますか?
小宮山:今、芸能活動と学生生活を同時進行しているのですが、一つ一つの授業や友達との会話をもっと大事にしたいと思いました。今まではそれを当たり前のようにしていたなって。友達と放課後を楽しんだり、高校生らしい時間を大切にして、卒業の日を迎えたいです。
――どうか楽しい高校生活を送ってくださいね。小宮山さんが卒業したくないなと思うものや思いはなんですか?
小宮山:学校で、友達とお昼休みにご飯を食べる時間がすごく好きなんです。高校を卒業したら一人でご飯を食べる時間がもっと増えると思うのですが、誰かと一緒にご飯を食べることは忘れたくないですし、卒業したくないです。
でも、私が一番卒業したくなかったのは給食です(笑)。中学生になった時、大好きだった給食と離れたことが悲しかったです。
――確かに大人になると、大人数でご飯を食べるのは、いつも約束を伴うものになります。
小宮山:きっとそうですよね。当たり前にみんなでご飯を食べるって、学生時代にしかない貴重な時間だと思います。それに、コロナになってからはみんなで食べるということ自体がなかなか難しくて……。どうしても私達の世代はコロナと付き合いながらの学生生活になり、楽しみ方は自分達で見つけていくしかなくて。友達と試行錯誤しながら、楽しく生活していきたいと思っています。
Rina Komiyama
2005年生まれ、宮城県出身。’20年のソフトバンク「5Gってドラえもん?」シリーズCMのしずかちゃん役ほか話題の企業CMに出演。’21年には『ヤクザと家族 The Family』で映画デビュー、主人公の娘役を演じ注目を浴びる。22年にはダンスボーカルグループ「MISS MERCY」のRINAとして、Da-iCE工藤大輝氏による作詞作曲の楽曲「Cinderella」で歌手デビューも果たし、雑誌「non-no」の専属モデルにも抜擢された。映画への出演は本作が2作目となる。
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中井友望
「何かを表現するということ自体が、私にはとても大切です」
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――中井さんは公式のコメントで、演じた作田には最初から寄り添えた、と書かれていました。作田は中井さんから見てどんな女の子でしたか?なぜすぐに寄り添うことができたのでしょうか?
中井:原作を読んだ時と台本を読んだ時で、私の中の作田のイメージが全然違っていました。原作では明るい女の子の印象があったのですが、台本を読むとそうではなく、まずクラスに馴染めない部分があって。みんなと普通に話したいのにうまくできない、不器用だけどまっすぐな17歳の少女という印象を受けました。
中川監督と初めてお会いして話した時、監督が、この映画を観た人が登場人物の誰かに共感したり、感情移入してほしいと言っていたんです。そのなかで、陰と陽でいう陰の部分は、作田に担ってほしいと。それで「あ、作田は私がやりたい」と思いました。私も学生時代、あまり学校が好きじゃなかったですし、人と関わることに躊躇する気持ちがよく分かりました。
映画『少女は卒業しない』より
――作田の支えになっていた図書室のような、「これがあるから大丈夫」と中井さんが思えるものはありますか?
中井:作田とちょっと似ているのですが、私も本がすごく好きです。好きになったのはこの2〜3年なので、私も作田みたいにもうちょっと早く、学生の時に好きな小説に出会っていたらなって思いました。本を読んでいて、一節の言葉に救われることが多いです。
――好きな作家さんはいらっしゃいますか?
中井:それこそ朝井リョウさんはすごく好きで、あとは西加奈子さん、宮本輝さん、吉本ばななさんが好きです。
――物語に触れることを喜びにされている中井さんにぜひ伺いたいのですが、俳優として物語を表現する楽しみはどういったところにありますか?
中井:私は子供の頃から「表現」がとても苦手でした。言いたいことが言えなくて、もどかしくて泣いちゃうけど、どうして泣いてるの?と聞かれてもなんにも言えない。そういうことが多かったので、何かを表現するということ自体が、私にはとても大切です。こうして今お話ししているのもそうですが、昔は、当たり前かもしれないことを当たり前にできなかった。それがこの仕事をしていくうちに少しずつ、自分の中でできるようになってきたのがうれしいです。
――作田は多くの時間を図書室で過ごすので、図書室の先生を演じられていた藤原季節さんとの場面が多かったのが他の方々と違う点です。そこで得たものや興味深かったこと、学んだことはありましたか?
中井:藤原季節さんの存在そのものに安心感をもらっていました。最初に一言、二言、挨拶を交わしてから変な緊張感が全く無く、ずっと柔らかい雰囲気でいてくださったんです。立ち居振る舞いを含めた存在自体に、安心感を与えてもらっている感覚がありました。それに、私が想像していた先生像とちょっと違う可愛らしいところがあって。それで「ああ、こういう部分を作田は好きになるんだな」と納得しました。藤原さんの人間性と、演じていらっしゃる役を通して図書室が大切な場所になりましたし、それを心から思わせてくれるすごい俳優さんだと思いました。
映画『少女は卒業しない』より
――映画を観終わった時、「みんなに幸せになってほしい」という気持ちが強く沸き起こったのですが、それは作田のパートの力が大きかったと思います。もしも、毎日図書室で一人本を読んでいる子に中井さんが声をかけてあげるとしたらなんという言葉をかけますか?
中井:無理しなくていいよ、でしょうか。
一人でいることは悪いことじゃないし、本当にしたいことがあれば、行動できる日も来る。焦らなくてもいいからって。
――ありがとうございます。中井さんが決して卒業したくないと思うことはなんですか?
中井:漠然としてしまいますが、少女の純粋な気持ちです。驚かされて驚く、感動して泣く、面白くて笑う。そうした反射的な反応として現われるような純粋な気持ちを、ずっと忘れずに持っていたいなと思います。
Tomo Nakai
2000年生まれ、大阪府出身。’18年開催の「ミスiD 2019」でグランプリを受賞し芸能活動を開始。’20年のテレビドラマ「やめるときも、すこやかなるときも」(NTV)で俳優デビュー。’21年には映画『かそけきサンカヨウ』(今泉力哉監督)、『シノノメ色の週末』(穐山茉由監督)、『ずっと独身でいるつもり?』(ふくだももこ監督)に出演。音楽×映画の祭典「MOOSIC LAB[JOINT]2021-2022」のイメージモデルを務めた。待機作に映画『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』(阪元裕吾監督)、『炎上する君』(ふくだももこ監督)、初主演映画『サーチライト-遊星散歩-』(平波亘監督)など。
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