ニューヨークを拠点に活動し、今年ブランド設立から16年目を迎える「Sea New York(シー ニューヨーク)」。日本のSea Friends(Sea New Yorkのファンの総称)との交流を図るため、2024年にはスペシャルな企画を計画中。
2023年10月、Sea New Yorkを手がけるショーンとモニカが来日し、ブランドと親交のあるゲストを招いた交流イベントが行われた。「装苑ONLINE」ではSea New Yorkをかたちづくる要であるクラフトマンシップとSea Friendsへの想いに迫るインタビューを敢行。さらに、Sea New Yorkを普段から愛用するTsugumiさん、高山都さん、Umeさん、KEISHANさん、PRを担当するYuka Kugimaruさんの5名のみなさんに、Sea New Yorkを纏った素敵な着用写真とあわせて、それぞれが思うブランドの魅力について伺いました。
photographs: Norifumi Fukuda(B.P.B.)
Sea New York(シー ニューヨーク)● Monica Paolini(モニカ・パオリーニ)とSean Monahan(ショーン・モナハン)がデザインを手がけるニューヨーク発のブランド。モダンでフェミニンなワンピースやセパレーツを中心としたアイテムが特徴的。近年ではフランスの大人気ブランドSezane(セザンヌ)やGucci Vault(グッチ ヴォールト)とのコラボアイテムを発売したことも記憶に新しい。
WEB:https://sea-ny.com/ Instagram:@seanewyork
Sea流「Victorian Mountain」を展開した24SSコレクション
Sea New Yorkを象徴するのは、乙女心をくすぐる緻密なアイレットレースや、パッチワーク、刺繍といった細やかで繊細なテキスタイル。2024年春夏コレクションでは、それらの変わらないSea New Yorkのエレメントを残しつつ、さまざまなテイストを取り入れた実験的なコレクションを展開した。デザイン面を担うモニカいわく、ヨーロッパのヴィクトリアン調をベースに、スポーティーかつボーイッシュな要素をミックスしたSea流「ヴィクトリアン マウンテン」がテーマとのこと。
Sea New Yorkデザイナー、ショーン&モニカにインタビュー。
24年春夏コレクションで、新たに挑戦した点や、注目してほしい技法はありますか?
モニカ:24年春夏コレクションは、ディテールの細かなアップデートに注目してほしいです。例えばスポーティーなウィンドブレーカーは、23年秋冬コレクションでも登場しているシルエットですが、今回はステッチの部分がクロシェ編みになっていて、スポーティーさとかわいらしさをミックスしています。
モニカ:インドの村に住むアーティストが制作した絞りのアイテムは、ひとつずつ手作業で作っているため、模様が1点1点異なっているところに注目してください。伝統的な手法と一緒にレースを取り入れているところはSeaらしいポイントです!
また、レイヤリングを想定してデザインしたアイテムもあります。総レースのトップとロングパンツは、別々にコーディネートするのはもちろんですが、セットで着るとドレスのようにエレガントな着こなしが叶います。そういった新たなシルエットの提案もチェックしてほしいです。
毎シーズン、幅広いテイストのデザインを展開するSeaですが、日々どんなところにアンテナを張っているのでしょうか?
モニカ:一番のインスピレーション源は、ヴィンテージや各地の伝統的な刺繍です。以前、チェコで大量の種類の刺繍コレクターに出会ったことや、ファブリックを探しに出向いたインドでさまざまな種類の刺繍生地を目にしたことなど、実際に自分の足でリサーチをしてインプットしたものがアイデアの元になることが多いです。
ひとつのアイデアを元にまず作ってみて、そこから別のアイテムに派生していきます。今回のコレクションに登場した、ティーカップモチーフのひとつひとつに違う柄のキルティングを配したジャケットは、そうして誕生したアイテムですね。
ショーンの1番のお気に入りアイテムだというティーカップジャケット
モニカ:あとは、世界中にいるSeaフレンズの着こなしからもアイデアをもらっています。同じアイテムでも国によって滲み出るスタイルがあるので、それを敏感にキャッチしようと常に努力していますし、何よりみなさんの着こなしが見ていて楽しいんです!
Seaの世界観や、魅力を伝えるために工夫していることはありますか?
ショーン:Seaの一番の魅力は「Consistency(変わらないもの)」。一貫した世界観を持ち続けるSeaを好きでいてくれるファンが多いので、基本的な方針は変えずに技術やブランド価値を向上させようと努力しています。
ブランドの魅力を伝えるために一番大事にしているのはコミュニケーションです。インスタグラム上で、コレクションのストーリーをはじめとした自分達の考えをコンスタントに発信していくことはもちろん、オフラインでの対話も欠かせません。
ニューヨークのキャナルストリートにあるSeaのアトリエ兼スタジオでは、立ち寄ってくれた人と会話を交わすことができる機会が頻繁にあるので、そういった直接人と関わる時間を大切にしています。世界中のファンとは、先日コペンハーゲンで行ったようにポップアップイベントを通して、コミュニケーションをとっていきたいと思っています。
Seaのファッションを通してみんなに伝えたいメッセージはありますか?
モニカ &ショーン:一番大事なことは、お洋服に着せられるのではなく、着ていて居心地が良かったり、楽しい気分になること。だからSeaの服は気楽な気持ちで身に纏って欲しい。それがブランドやクリエーションを通して一番伝えたいことです。そしてSeaのお洋服を着ていただいたら、会話によってフィードバックを得たい。みんなからの意見を新たなものづくりに還元したいと思っているし、そうしています。
お二人にとって、ものづくりをすることの魅力とはなんですか?
モニカ:私は手を使って一つのものを作り上げるという姿勢そのものにリスペクトの気持ちがあります。特に女性の手仕事には惹かれるものがあって、そのクラフトマンシップを大切にしていきたい。人が手を動かして作ったものから、自分に無かったアイデアを得ることも多いですね。
ショーン:レースや刺繍など伝統的で歴史のあるものづくりを、新たな形で伝えることができるということは素晴らしい魅力だと思っています。
ニッティングが得意なモニカの長男のシッターさんが制作したというニット
細かなステッチ刺繍にクラフトマンシップを感じるスカート
日本のハンドクラフトから影響を受けたものはありますか?
ショーン:今回のコレクションの中に、日本の「刺し子」からインスピレーションを受けたデニムパンツがあります。防寒や補強、破れた部分の修繕を目的に行う伝統技法ですが、その過程で個性を出して楽しむことって、とってもおしゃれで、まさにファッションの魅力を体現していると思うんです。ファブリックでいうと、日本のデニムもとっても魅力的だと思います。
ファッションとして楽しく表現することと、商業的な製品としてのバランスについてはどう考えていますか?
モニカ:もちろん製品として売れるものを作ることは大事で、バランスってすごく難しいですよね。だけど、常に私たちの頭の中にあって大切にしているのは、Seaのお洋服を着てくれるのはどんな子で、その子はどんなものが好きなのかということです。何よりもファンを大切にしていきたいし、みんながハッピーになる服を作ることが絶対に第一の優先事項です。
『装苑』読者の多くは10代から20代で、まさに夢を追いかけている世代です。ファッションを学んでいる人や、クリエイターを目指す人も多いのですが、そのような人たちに向けてメッセージをください。
モニカ:ファッションの世界は特に、アップダウンが激しいですよね。ですが、好きなことならば自分を信じて、ポジティブに進んでいってほしい。前の日にものすごく嫌なことがあっても、次の日はもしかしたらすごくいい出来事が起こるかもしれないですよ!そして、私たちにとっては大事なパートナーを見つけることもポイントだと思います。私とSeanが紆余曲折を乗り越えた中で産まれた絆が、Seaの真髄なんです。
そんなお二人は、お互いがお互いの才能についてどう考えていますか?
ショーン:モニカは、とにかくハードワーカー。ものづくりに対して、惜しみない愛とパッションを注いでいます。自分のセンスを信じ続けながら、どんなものが可愛いのか常に研究することを辞めない努力家。あとは、洋服や着用してくれる人に対するリスペクトを絶対に忘れない。そんなところも含めて本当に尊敬する人です。僕は全然働かないから、僕の分まで働いていると思います(笑)
モニカ:私は、かなりシャイな性格なんです。だから、ショーンが前に立ってブランドをよくするために働きかけてくれることがすごく助けになっている。クリエーションはもちろんですが、ブランドの認知度を上げることは同じくらい大事なことなので。
最初にブランドを始めて、ビジネスの仕方について何も分からなかった時、ショーンがさまざまな場所で積極的にコミュニケーションをとってくれたおかげで今のSeaがあります。あとは彼が居てくれるというだけで心強く、エモーショナル的な支えにもなってくれています。改めてベストフレンドだなと思いますね。
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