Perfume特別インタビュー。
「夢物語!」な衣装展『Perfume COSTUME MUSEUM』で再確認した思い、近年の衣装のこと。

『Perfume COSTUME MUSEUM』を訪れた、内覧会でのPerfume!

Perfume初となる大規模衣装展『Perfume COSTUME MUSEUM』が、「兵庫県立美術館」にて現在開催中(2023年11月26日まで)。
2005年のメジャーデビューから、2022年の最新曲までの衣装170着以上を展示する本展は、2020年に刊行された“Perfumeの衣装本”、『Perfume COSTUME BOOK 2005-2020』(文化出版局刊)をもとにしたものだ。
この展覧会のオープンに先がけ、会場を訪れたPerfumeのあ〜ちゃん、かしゆか、のっちに『装苑』がインタビュー。『Perfume COSTUME MUSEUM』を見て改めて3人が感じた衣装のこと、そして、近年の衣装のことについても、特別に教えてもらいました!

photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.)

『Perfume COSTUME MUSEUM』第4章展示風景より

衣装に込められた「愛」の大きさを感じた展覧会

装苑:『Perfume COSTUME BOOK』の撮影をしているときは、こんな立派な展示に結実する未来を想像もしていなかったので、本当に感慨深かったです。作った本が公立美術館での展示になる。それがPerfumeというグループと、Perfumeの衣装の力なんだと深く感激しました。展覧会を見て皆さんが感じられたこと、本との感じ方の違いも教えてください。

『Perfume COSTUME BOOK 2005-2020』装苑編集部編 文化出版局刊

のっち私も、展覧会を見て素直に感動しました!衣装本では多くの衣装を見てもらえますが、やっぱりどうしても平面ではありますよね。それが展示では、現実のものとして目の前に衣装があって、着ていた私自身も新鮮に感じました。展覧会ならではだな、と思ったのは、最初の部屋で最新曲「Spinning World」(2022年)と、メジャーデビュー曲「リニアモーターガール」(2005年)の衣装が並んでいたこと。あの部屋にあと10分長くいたら、泣いていました。こんな経験ができるのは展覧会ならではだと、ありがたく思いましたね。

「リニアモーターガール」の見開き。
『Perfume COSTUME BOOK 2005-2022 e-book edition』より
©︎ 文化出版局

 Spinning World
© 文化出版局

かしゆか展示からは、衣装制作に携わってくれているスタイリストさんや縫製の方が、本当に私たちの衣装を愛してくれていることが伝わってきました。皆さんそれぞれ、たくさんのアーティストを抱えて、目まぐるしくされていると思うんです。それなのに、これほど長い期間お世話になっていること。私たちは、いつも結果(完成した衣装)を受け取るので、1着が出来上がるまでにどれだけスタイリストさんと縫製の方との間にやりとりがあるのかもわからないですし、パターンも見たことがなかったんです。それを今回見られたことで、衣装に込められた膨大な時間と愛の大きさを感じました。

そして、私たちの衣装に重きを置いてくれている人が、私たち以外にどれほどいるのかということですよね。いつ、日の目を見るかもわからなかった膨大な衣装を保管してくれていた事務所や、それを展示の形にしてくださったキュレーターの久慈(達也)さん。そのおかげで、昔着ていたものが使い捨てられることなく、グループや楽曲の背景とともに愛着を持って見ることができました。貴重で特別な体験だと思いました。すごく嬉しかったです。

あ〜ちゃん衣装本から県立美術館の展示まで来られるなんて、誰が想像していたんだろう?というくらいの夢物語です。

この未来を、(内澤)研さんは想像していただろうか。あの当時縫ってくれていた方達が聞いたらどんな反応をしてくれるだろうか……。初めての「NHK紅白歌合戦」の衣装(2008年)なんて、あれほどのビーズを一個一個、手縫いでつけているんですよね。ビジューからもレースからも、「これが最後かもしれない」という皆の渾身の力や執念みたいなものが伝わりました。あの頃、毎回が試験のようだったのは私たちだけではなかったんだ、って。この展示を通して「こんなお仕事があるんだな」とか、「こんなプロフェッショナルもいるんだ」ということを知ってもらえたら嬉しいです。

あとは、私の髪型がポニーテールになってからつけるようになった髪留めを、並べて展示してもらえたのも嬉しかったです。私だけの楽しみだと思っていたものまでフィーチャーしていただけるなんて!と感激しました。

変化は、案外気づかないもの

『Perfume COSTUME MUSEUM』第3章展示風景より

装苑:先ほど、かしゆかさんが「衣装から時代背景が見える」と言ってくださったように、この展示は皆さんの表現の変遷と同時に、皆さん自身の趣味嗜好の変化も感じられるのかなと思ったのですが、いかがでしょうか?

のっち時代による私たちの変化というのは、この展示で初めて自覚しました。「ここが衣装の転換点です」と言われて、「そうなのかな」と思いながら展示室を進んで次の章のお部屋に行くと、「確かに違う!!」って。その時、その時で自分たちが変化していることには、案外、気がつかないものです。

あ〜ちゃんここで変化しましょう!といって今までやってきたわけではなく、曲と演出があって衣装も変わっていってるから、それが当たり前だよね。

かしゆか曲もあるし、年齢もあるよね。ここに展示されているのは、10代〜30代の私たちが着てきた衣装。「見せたいPerfume像」もその時々でありますし、昔は、あてがってもらっていた衣装を「一生懸命着るぞ!」という気持ちだったところから、「よりよくダンスが見えて、もっと向上するには(衣装を)どうしたらいいんだろう」と、自分たちも参加して考えるようになりました。

「袖のデザインが同じで、長いほうが振りがそろって見えるんだ」とか、「同じ側のフリルが同じように揺れることで振り付けがきれいに見えるんだ」という発見を重ねてきた結果、今の形にたどり着いたというのはあります。あとは、丈が長いほうが色気が出るんだ!という発見もありました(笑)。“隠す美しさ”を感じるようになってからは、衣装が日本人女性らしさを体現するようにもなったと思います。

『Perfume COSTUME MUSEUM』第3章展示風景より

あ〜ちゃん5年間ば〜っと活動して終わり!っていうグループのお衣装ではなく、10代から30代の衣装ですから、そりゃ変わっとるじゃろうねっていうのは一つありながら、自分たちも気づかなかったところを展覧会で分析していただいて、「こうですよね?ここが変わり目ですよ」って言われると、どんどん身ぐるみをはがされていくみたいで「怖いっ!」みたいな気持ちも(笑)。「2016年の『FLASH』、ここからが第3章です」って言われて、ええっ!ていう。

装苑:あはは!確かにそうですよね。

あ〜ちゃんおもしろいのと怖いのとで、いろんな気持ちになりました(笑)。

のっちなんか美術品になった気分だった!

あ〜ちゃんそうそうそう!ね!

のっち絵描きさんの「●●期」みたいなのを、衣装でやってもらえた感じでしたね。

あ〜ちゃん巨匠“ピカソ”みたいな。亡くなった後に支えていた人たちによって紐解かれていくアート展みたいな(笑)。ほんとありがたいですよね。

装苑:それってまさに皆さんがおっしゃる「その時々にベストを尽くしてきた結果として衣装がある」というお話そのものですね。あとは先日(9月1日)リリースになった衣装本の電子増補版を編集していて感じたのですが、ここ2〜3年の衣装にはワンカラー・ワントーンの衣装が多いですよね。「Moon」(2023年)も3人3色のプリーツドレスです。そのあたりはいかがでしょうか?

Perfume「Moon」MV

かしゆか確かに、特にシングルでは際立った1色を使うことが増えましたね。

あ〜ちゃんMIKIKO先生が「赤じゃわ」みたいに言って、色から衣装が決まることが結構あるかも。でも「Time Warp」(2020年)は、監督が想像してくれたMVのイメージありきで、そこから「ツートーンカラーの、ちょっと懐かしい感じのテーラードジャケットのようなワンピースにしてみよう」とか「ちょっとメンズライクにしてみよう」みたいなところから入ってるけど……確かに、何色も衣装に使うみたいなのは今はライブくらいかな?

Perfume「Time Warp」MV

かしゆかでもライブでも、いっぱいの色を合わせるみたいなことは減ったもんね。

あ〜ちゃんそうだねぇ。

かしゆかそれはスタイリストさんの今のムードとか、そのスタイリストさんの強みの部分っていう理由もあるかもしれないです。あとは楽曲をもらってからMVやジャケットのイメージを話し合う時に、ステージがこうなるから衣装はこうで……と皆で連想していくことが多いのですが、最近は、カラーがいっぱい入っているような世界観ではないのかもしれないですね。

のっちそのぶん、ライブで思いっきり色が入ってる衣装が着たい!と言ったりします。

三田さんの良さも、タケダさんの良さも、めっちゃ知ってる

装苑:面白いです。ありがとうございます。三田(真一)さんもタケダ(トシオ)さんも10年以上Perfumeと一緒に歩んでこられていて、製作のSAQULAI, Incの櫻井(利彦)さん、内藤(智恵)さん、村田(菜穂)さんも長年ご一緒されていますね。スタッフ陣と積み上げていく面白さや良さを教えていただき、これを最後の質問とさせてください。

あ〜ちゃん人生を共にしている感覚があります。だから、三田さんの良さも、タケダさんの良さも、めっちゃ知ってる。それぞれにこういう衣装を作ってほしい!というのがあって、三田さんは、私たちが想像もできないような衣装をデザインする人。だから言ってることがまったくわからなくて、じゃあって絵を描いてくれるけどそれもまったくわからない(笑)。三田さん自身も「作ってみないとわからないと思うので」って言うくらい(笑)。1回目の試作段階でも、まだ私たちには「なんだこれ?」なんですが、そこから2回目でぐーッと完成に近づいていって、「すごい!こんなの見たことない!」っていうところにいくのが三田さんです。

タケダさんは、やっぱり私たちの胸キュンポイントを押さえていますね。着ている私たちにしかわからないような、テンションがぶち上がるスイッチをタケダさんに握られているような感じ。毎回毎回、あがってくる衣装の“タケダイズム”がすごいツボで、それは繊細な色彩感覚と曲線美。二人の良さを知っているからこそ、それを活かせる私でありたいですし、衣装が似合う自分でありたいと思います。二人の人柄もめちゃくちゃ好きです。

一緒にやってきた10年以上の歴史があることで、外から聞いたら暗号のように会話が進んでいると思います。「『レーザービーム』(2011年)のオーガンジーのひらひら~っていうあの感じがあったらすごい素敵ですね」みたいにいつも会話していて、それがデザイン画にしっかり反映されているんです。これは私たちにしかできないラリーかなと思います。

かしゆかタケダさんと三田さん、お二人がずっと一緒にやってきてくれているからこそ、挑戦的な衣装にも信頼がおけます。「タケダさんが言ってくれるならやってみよう」とか、「三田さんが言ってくれるなら着てみよう」と思えるのは、やっぱり積み重ねてきたから。新しいスタッフさんにイチから作ってもらうのもきっと刺激的ではあると思うのですが、結構、3人とも慎重な部分があるので——。私たちは時間をかけないとものを作れないけど、お二人への信頼があるから短いスパンで衣装を完成させることができています。

そして縫製の方は、3人の体を熟知してくれています。「踊るときにこういう動きをするよね、こういう体の使い方をするよね、肩の骨の入り方はこうだよね」ということもすべて知ってくれているんです。そこにも信頼がありますし、ライブ衣装を任せられる大切な存在です。

のっちPerfumeに携わってくださっている方は、中田(ヤスタカ)さん然りMIKIKO先生然り、長い方が多いんです。だからこそPerfumeがやっていないPerfumeらしいことができるのかなと思っています。

\ 好評発売中!

『Perfume COSTUME BOOK 2005-2020』
¥3,960(税込)文化出版局
2005年のメジャーデビューから、15年間のPerfumeの衣装クロニクル。250を超える衣装は3人分で761着。CDジャケット、ステージ写真と共に、全衣装ディテールまで解説。あ〜ちゃん、かしゆか、のっちのインタビューはもちろん、内澤研、Toshio Takeda、三田真一、櫻井利彦(SAQULAI, Inc)のインタビューも収録。
WEB:https://books.bunka.ac.jp/np/isbn/9784579304578/


『Perfume COSTUME BOOK 2005-2022 e-book edition』
¥3,960(税込)※電子書籍のため変動あり
文化出版局刊
Kindle、楽天Kobo、U-NEXTほか各電子書籍ストアにて発売。

衣装展『Perfume COSTUME MUSEUM』の開催を記念してリリースされた、好評発売中の『Perfume COSTUME BOOK 2005-2020』の電子増補版。『Perfume COSTUME BOOK 2005-2020』の内容が全て電子版となっているほか、書籍刊行後の2020年「“P.O.P”(Perfume Online Present)Festival」から2022年の「第73回NHK紅白歌合戦」までに着用された衣装132着、全48ページを加え、合計893着を掲載。衣装展の予習・復習として、また、図録がわりにもぜひ。
WEB:https://books.bunka.ac.jp/np/isbn/9784579304579/


Perfume COSTUME MUSEUM
期間:開催中〜2023年11月26日(日)
時間:10時〜18時(入場は17時30分まで)
月曜休(9/18、10/9は開館。9/19、10/10休館)
会場:兵庫県立美術館
   神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1【HAT神戸内】
TEL:078-262-1011(兵庫県立美術館)
観覧料:一般 ¥1,800(前売券 ¥1,600)、大学生 ¥1,400(前売券 ¥1,200)、高校生以下無料
WEB : https://www.artm.pref.hyogo.jp/
会場のレポート記事はこちら

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