ヴィム・ヴェンダース監督が
新作の映画『PERFECT DAYS』への思いを語る。
Wim Wenders Interview

2023.12.15

ロードムービーの名手と謳われ、『パリ、テキサス』(1984年)、『ベルリン・天使の詩』(‘87年)、『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』(2011年)など、数多の名作映画を手掛けてきたドイツ映画の巨匠ヴィム・ヴェンダース。彼が手がけた最新作『PERFECT DAYS(パーフェクト・デイズ)』が、12月22日(金)から遂に公開される。本作は、今年5月、第76回カンヌ国際映画祭で高い評価を受け、主役を演じた役所広司が最優秀男優賞に輝くなど、世界から大きな注目を浴びている。

text : Sachiko Tamashige

©PeterLindbergh2015

ヴィム・ヴェンダース Wim Wenders
1945年生まれ。70年代のニュー・ジャーマン・シネマ時代を生み出した一人でもあり、現代映画界を代表する映画監督。数々の賞を受賞し、『パリ、テキサス』(‘84年)、『ベルリン・天使の詩』(‘87年)、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(’99年)、『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』(2011年)、『ローマ法王フランシスコ』(‘18年)など、斬新なドキュメンタリーなども手掛けている。また、映画監督だけではなく、プロデューサー、写真家、作家としても活躍。現在は妻ドナータ・ヴェンダースと一緒にベルリンに在住。’12年に夫婦はデュセルドルフにNPO財団「ヴィム・ヴェンダース財団」を立ち上げ、作品の復元作業などと共に、若いアーティストに「Wim Wenders Grant」を授与するなど、次世代を支える活動も行っている。

平山(役所広司)が渋谷区内の公衆トイレを清掃作業する合間、利用者とのささやかな交流も微笑ましい。

『PERFECT DAYS』で描き出された
清掃員の静謐な日々

 主人公の平山(役所広司)は、渋谷区に点在するユニークな公共トイレの清掃員。彼は東京の下町、押上にある昭和風の懐かしい雰囲気が漂う古い二階建てのアパートで一人暮らしている。

 簡素なアパートの2階の寝室で寝起きする平山。毎朝、夜が明ける前に、老女が道を竹箒で掃除する音で目覚める。薄い布団を畳み、歯を磨き、髭を剃り、顔を洗って、ブルーの清掃用の制服を着て、植木や盆栽に水をやる。車のキーと小銭とガラケーをいつものようにポケットに入れて部屋を出る。アパートの扉を開けると、空を見上げ微笑む。新しい1日の始まりに感謝するように…‥。

(左)ある日、平山の若い姪・ニコ(中野有紗)が家出をしアパートへ押しかけてくる。仕事の休憩時、公園で木漏れ日を見上げる笑顔の二人。(右)四畳半の部屋で眠くなるまで本を読むのが日課の平山。

 朝食がわりの缶コーヒーを自販機で買い、軽トラックに乗り込み、目的地の公共トイレに到着すると、手作りの掃除用具を取り出し、手際よく掃除を始める平山。散らかった紙くずを手で拾い、便器を黙々と丹念に洗い磨く。その姿は、作務に勤しむ僧侶の姿のようにも見える。

 同じ時間に目覚め、同じように支度をし、同じように働く。その毎日は同じことの繰り返しに見えるかもしれないが、同じ日は1日としてなく、男は毎日を新しい日として生きている。映画のタイトルにもなった背景に流れるルー・リードの曲『Perfect Day』の歌詞の通り、彼にとって、変わりばえのしない日々が「日々好日」、完璧な日々なのだ。

タカシ(柄本時生)が深い仲になりたがっている、ガールズ・バーのアヤ(アオイヤマダ)。

 その平穏な日常の中で、ちょっとした人との関わりがあり、揺らぎが起こる。それは、まるで、季節の風が木の葉を揺らすようなささやかな変化だ。自らが身を置く場所で、「知足」の精神で、ささやかな日常を生きる平山の姿が、木々のあり方と重なる。木漏れ日の美しさに、観る側も、心を揺らされ、幸せの本質へと誘われる。

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