KIDILLデザイナー末安弘明が語る
「情熱を形にし続けた10年間」。
15名のKIDILLラバーのスナップも!

2024.02.21

ファッション好きの若い世代を魅了し、今年、設立から10周年を迎えたKIDILL(キディル)。ブランドを手がけるデザイナーの末安弘明(すえやすひろあき)さんに10年間を振り返る特別インタビューを行いました。また、ブランドにゆかりのあるゲストが招かれた10周年記念のパーティーに装苑ONLINEが潜入。KIDILLの最新コレクションをまとったゲストスナップを合わせてお届けします!

photographs : Norifumi Fukuda(B.P.B.) / interview & text : SO-EN
Courtesy of  KIDILL

 この記事の内容 

p1 末安弘明さんと振り返る、10年間のコレクション

p2 インタビューで解き明かす、進化し続ける末安さんのマインド
p3 10周年パーティーに潜入!KIDILLだらけのゲストスナップ

KIDILL10年間の
エポックメイキングなコレクションとは?

最初の4シーズンは自分の“好き”を消していました。

――KIDILL設立から10周年になります。この10年間を自己分析していただけますか?

末安弘明(以下、末安)10年間、本当にあっという間でした。こんなに早いんだという感じ。振り返ると、KIDILLのファーストコレクション(2014-’15年秋冬)の発表の場所は、いきなり東京コレクションでした。当時のPRの方に東コレに出ればいいじゃん!とさらっと言われて、じゃあ出てみるか!と。当時はモデルオーディションなど初めて尽くしで、こなすだけで精一杯でしたが、この時に色々な仕組みを知りました。

2014-‘15年 秋冬

2015年 春夏

2015-‘16年 秋冬

2016年 春夏

――2014年当時はノームコア全盛期でファッションに個性を取り入れないスタイルが流行したタイミングでもありました。このデビューコレクションでは、そうしたシンプルでリアリティのある服にどのような思いを持っていましたか?

末安今思えば、最初の4シーズンくらいは自分の好きなカルチャーを消していました。どのメディアを見ても自分が好きなものとは違うものがおしゃれとされていたので、自分なりの表現は隠したほうがいいのかもと葛藤していたんです。自分を乗せきれず、時代に合わせて変に器用になろうとしていたかもしれません。ブランドを継続しながらも、売り上げが伸び悩んだり、クリエイションもどこか煮詰まっている感じがしていました。

 2017SS Collection 

末安その後シーズンを重ねていき、鶯谷にある「東京キネマ倶楽部」でショーを行った2017年春夏ごろから、KIDILLの洋服をどういう方が着ているかが見えてきて、自分の色を服に落とし込んだほうが人に伝わるんだなと気がつきました。

この頃から、モデルのストリートキャスティングも始めました。プロのモデルの方もいれば、セレクトショップのCANNABISで働いている方や、当時、モデルやDJとして活動しだしたばかりの小山田米呂君をキャスティングしたりも。写真家のデニス・モリスさんに出会って、セックスピストルズのボーカリストだったジョニー・ロットンの写真なども使わせていただけるようになったのもこのくらいの時期で、ターニングポイントだったと思います。

 2018SS Collection  

末安東京での最後のコレクション発表となった2018-’19年秋冬コレクションでは、バンドの「ザ・ダムド」とコラボレーション。この時は700人を超える方々が来場してくださり、会場に入るための大行列ができるほどでした。

――KIDILLを始める前に手がけていたブランド“HIRO”(2004〜2014年)では、ロンドンでも活動されていました。2018-’19年秋冬コレクションを経て、KIDILLとしても海外進出を意識し始めたのでしょうか?

末安当時は日本で揉まれている最中で、海外に行く考えは全くなかったんです。けれど東京都主催の「2017年度 Tokyo新人デザイナーファッション大賞」のプロ部門で最高点をいただき、そのビジネス支援でパリやロンドンでの展示会をご提案をいただいて。これがきっかけで再び海外で挑戦することにしました。

 2019-’20AW Collection 

末安そして、パリで初めてショーを行ったのが2019-’20年秋冬コレクション。パリコレの公式スケジュールには入れなかったので、勝手にインスタレーションをやりました。プレスをつけず、宣伝もせずにやったので、一日に30人くらいしか来なくて(笑)。こんなに人って来ないものなんだ、とちょっと挫折しましたね。ただ、“HIRO”でロンドンコレクションのオフスケジュールで発表をした時も、お客さんは30人くらいだったのでそれを思い出し、初心にかえることができました。

 2024-’25AW Collection  

――2024-’25年秋冬パリ・メンズファッションウィークにて発表した、アーティストのジェイミー・リードさんに捧げた最新コレクションについても教えてください。

末安ジェイミー・リードさんは、青春時代に猛烈な刺激を与えてくれたクリエイターの一人。中学生の時に初めて買ったCDのジャケットが彼のデザインだったり、ヴィヴィアン・ウエストウッドのアートワークを担当していたりと、ファッションと音楽とアートが混ざって新しいカルチャーが生まれた時代を牽引した人であり、ブランドを始めてからは親交もあったので、僕自身、特別な思い入れがある人です。昨年、逝去の知らせを聞いて追悼の意を込めたショーをやることに決めました。

自らブリーチやパッチの縫い付けを施したというジャケットとワンピース

――今回のコレクションで、新たな挑戦や発見などはありましたか?

末安実は、年末くらいに急遽お蔵入りになってしまったルックがあって、足りない服を補わなくてはいけなくなったんです。ショーの日程もパリに向かう飛行機も決まっているのに、年末年始で工場も動いていない状況。足りない分の服は自分の部屋にゴミ袋を広げてスプレーしたり、お風呂場でハイターを使ってブリーチしたり、自分でパッチを縫い付けるなどして手作業で作りました。切羽詰まった状況でしたが、むしろそれがよかったんです。短期間で自分の手で全部作るという体験によって、パンクの原点に帰れたと感じました。

2024-’25年秋冬コレクションのレポートと全ルックはこちら

NEXT10年間進化し続けてきた、末安さんのマインドとは?