『YUIMA NAKAZATO Beyond Couture』より。写真は、2023-’24年秋冬コレクション「MAGMA」。
フランス屈指のレース博物館「レースとモードの都市(CITÉ DE LA DENTELLE ET DE LA MODE)」で、日本人デザイナーの中里唯馬さんのエキシビション『YUIMA NAKAZATO Beyond Couture(ユイマナカザト クチュールを超えて)』がスタートしました。
2021年春夏コレクション「ATLAS」。義足のモデル、ローレン・ワッサーとの対話から生まれた作品で、困難を乗り越えていく彼女とコロナ禍を経て新しい時代に向かっていく人類の今を重ねた。
自身のブランド「YUIMA NAKAZATO」のコレクションを発表する傍ら、バレエやオペラの舞台衣装を手がける中里さんは、現在、パリのオートクチュール・ウィークに参加する唯一の日本人。本展では、その初回となった2016年-’17年秋冬から’24年春夏までの作品約50点を集め、アクセサリー、デザイン画、写真、ビデオなどとともに、シーズンのテーマやコンセプトを解説しています。
オートクチュール・ウィークのデビュー作、2016-’17年秋冬コレクション「UNKNOWN」。アイスランドの氷、海、オーロラなどが着想源に。ホログラムフィルムを使用した近未来的な作品。
「オーダーメイドを多くの人に広めたい」というビジョンを持つデザイナーは、最新のテクノロジーと職人技が融合するクリエイションを展開。環境へも配慮したファッションを提案しつつ、ファンタジーあふれる独自の世界観のなかで、現代社会へのメッセージを込めたコレクションを発信しています。
写真上:アクセサリーのコーナー。下:「UNKNOWN」より。
エキシビションの開催にあたり「Beyond Coutureという素晴らしいタイトルをいただきました」と中里さん。
「クチュールはフランスの文化であり歴史。クチュールにファッションの未来があると信じて、ここまでやってきました。今回、このフランスという場所で、展覧会ができるのをとても意義深いことだと思っています」
2017年春夏コレクション「IGNIS AER AQUA TERRA」の3Dプリントで作られたサンダル。
4年の歳月をかけて準備したというエキシビションは、キュレーターのシャズィア・ブシェ(Shazia Boucher)さんがオートクチュール・ウィークで「YUIMA NAKAZATO」のショーを観たことがきっかけになり実現。
「フランスの文化がすごく大きな壁になって見えていましたが、今回は彼らから声を掛けていただけました。ずっと自分から挑んでいるイメージだったのが、迎え入れてもらえた。この展覧会はそのように思える機会になりました」
ファッションの未来に向けて挑戦し続けるデザイナーの姿勢には、まさにオートクチュールの精神が宿っています。
2017-’18年秋冬コレクション「FREEDOM」。“全ての人に一点物の衣服を”の概念から、あらゆる素材同士を自由に結合できるシステムを考案。体型や趣向に合わせてシルエットを作ることを可能にした。Show Photos : Shoji Fuji
2021-’22年秋冬コレクション「EVOKE」。過去に使用したユニット構造を随所に織り交ぜながら、クジラの声の周波数から布に立体的な凹凸を表現。Spiber社が開発した人工タンパク質素材Brewed Protein™の収縮する特性を用いたBiosmocking技術が使われている。Show Photos : Shoji Fuji
2022-’23年秋冬コレクション「BLUE」。地球の青からイメージした作品で、デッドストック素材を使用。写真左:Brewed Protein™を使いつつ、伝統的な藍染によってBiosmocking加工を施している。右:Photo Eddie Wray
中里唯馬(なかざと・ゆいま)
1985年生まれ、東京都出身。芸術一家のなかで育ち、高校卒業後にアントワープ王立芸術アカデミーに入学。卒業作品が複数の賞を受賞する。2009年に自身の名前を冠したブランド「YUIMA NAKAZATO」を立ち上げ、2016年7月よりオートクチュール・ウィークのゲストデザイナーとして、パリでコレクションを発表する。
YUIMA NAKAZATO Beyond Couture
2025年1月5日(日)まで。
CITÉ DE LA DENTELLE ET DE LA MODE
135 quai du Commerce, 62100 Calais
+33 (0)3 21 00 42 30
公式サイト
Photographs:濱 千恵子 Chieko Hama
Text:B.P.B. Paris