【もっと知りたい!フランスの田舎のミュージアム ⑤】
シャネルが構想した新たな複合施設 / 番外編パリ

フランスの地方には、意外と知られていないステキなミュージアムがいっぱい。その土地に根づいた伝統工芸、アート、モードと共に、町の魅力も発見してみて。

La Galerie du 19M – Paris
ラ ギャルリー デュ 19M – パリ

今回は番外編として、パリの北部に誕生した新たな複合施設「le19M」のギャラリースペースをご紹介します。

「le19M」とは、シャネルが傘下に収めるメティエダール(伝統技術による熟練した仕事)のアトリエを結集させた施設。昨年春から刺繍の「ルサージュ」、金銀細工の「ゴッサンス」、帽子の「メゾン ミッシェル」、羽根細工の「ルマリエ」、プリーツ加工の「ロニオン」など、11メゾンがここに集められ、現在約600人の職人が働いています。

エントランスには「le19M」で働く職人たちの写真が展示されています。シャネルはこれらのアトリエを傘下に収めることで、後継者問題の解決に貢献し、モード界の財産ともいえる伝統技術を保護してきました。

名前の19は、この施設があるパリ19区に由来する数字ですが、ガブリエル・シャネルが生まれたのも19日。シャネルにとっては重要な数字なのです。

昨年12月には、シャネルのメティエダール コレクションがここで発表され、「le19M」の建物からインスピレーションを得た刺繍が数多く見られました。

そして、今年1月には一般人も訪問できる(要予約)ギャラリースペース「ラ ギャルリー デュ 19M」がオープン。創造、革新、伝承を柱に、エキシビションやワークショップが開催されています。

「La Galerie du 19M」の展示の様子。

その第一弾となったのは『l’Ouverture(フランス語でオープニングの意味)』と題されたエキシビション。その内容は、11メゾンの世界観を伝えるインスタレーションをはじめ、「le19M」が協賛するイエール国際フェスティバルやファッションフォトグラフィーのコンペティションの作品展示などで、ここで実際に働く職人たちのアドバイスのもと、モノ作りの体験ができる刺繍コーナーも設置されました。

靴工房「マサロ」と帽子工房「メゾン ミッシェル」 の展示。

写真左はフルー(薄手の生地を使った服の仕立て業)専門の工房「パロマ」の展示。右は金銀細工の「ゴッサンス」。

プリーツ加工の「ロニオン」の展示。使われているのはプリーツを作るための厚紙の型ですが、とっても芸術的!

イエール国際フェスティバルの受賞者とファイナリストの作品展示。独創性に富むこれらは「le19M」のアトリエとのコラボレーションで制作されました。

PICTO財団が主催するファッションフォトグラフィーのコンペで受賞したLucie Khahoutianの作品展示。

エキシビションの観覧者が自由に参加できる刺繍コーナー(水曜と土曜の午後のみ)。パリ北部の巨大マップを製作中で、「le19M」(写真中)や「ムーラン・ルージュ」(下)などのパリのランドマークが刺繍で表現されています。

また、水曜と土曜の午後には「le19M」が提供するマテリアルを使って自身の作品が制作できるワークショップ(参加費15ユーロ / 約2,000円)も開催。参加希望者は公式サイトからご予約を!

La Galerie du 19M
住所:2 place Skanderbeg, 75019 Paris
LE19M 公式サイト:https://www.le19m.fr

*エキシビション『l’Ouverture』は5月7日まで開催(要予約)。

この辺りは再開発が進められている地区で、かつては工場地帯でしたが徐々に様相を変えています。近くには運河が流れていて、ちょっと田舎に来たような気分に。ラ・ヴィレット公園までの定期船もあり、無料で利用できます。

Photographs:濱 千恵子 Chieko Hama
Text:B.P.B. Paris