第37回を迎えた今年のフェスティバルは10月13日から16日まで開催。最終日に各賞が発表された。
若手ファッションデザイナーの登竜門、イエール国際フェスティバル(International Festival of Fashion, Photography and Fashion Accessories in Hyères)の受賞者が決定した。
注目のファッション部門でグランプリ(Grand Prix of the Jury Première Vision)を受賞したのは、25歳のフィンランド人、ジェニー・ヒットネン(Jenny Hytönen)。
ジェニーは市民賞も受賞。昨年、ヘルシンキのアアルト大学を卒業した彼女は、パリのオリヴィエ ティスケンスでニットデザイナーを務める。
作品はナイロンニットとリサイクルレザーで構成されたユニセックスのコレクション。無数に取り付けられたグラスビーズ、工業用ボルトとナットの装飾によって、ロマンティシズムと過激なパンクのイメージが交差する。
ニットウェアは家庭用編み機で製作。ビーズを一つ一つ取り付けながら編み上げていくという気の遠くなる作業で作られた。
また、25歳のドイツ人、ヴァレンティン・レスナー(Valentin Lessner)が、Le19Mメティエダール賞 (Le19M Métiers d’Art Prize)とメルセデス・ベンツ サステイナビリティ賞(Mercedes- Benz Sustainability Prize)をダブルで受賞。
ヴァレンティンはデュッセルドルフ美術アカデミーを昨年卒業。
作品は、自身のルーツや地元バイエルンから着想されたメンズウェア。フォークロア、テーラリング、ストリートなど、様々なスタイルが融合し、異素材のミックス、スーパーポジションで遊んだボリューミーなシルエットが特徴。ひと捻りあるディテールにもオリジナリティを感じさせる。
Le19Mメティエダール賞は、シャネルが傘下に収めるメティエダール アトリエの技術を取り入れた優秀作品に授与される。ヴァレンティンはアトリエ モンテックスとコラボし、ウール糸を刺繍したデニムパンツを製作(写真3段目左)。
さらに今年は、2019年にシャネルの主導で設立されたラグジュアリー産業のリサイクル工房「アトリエ デ マチエール」のスポンサーシップがスタート。新設されたアトリエ デ マチエール賞(L’Atelier des Matières Prize)では、各候補者にデッドストックやリサイクルのマテリアルが提供され、作品一体を作ることが課された。
第一回目となった今回、受賞したのは30歳のフィンランド人、シニ・サーヴァラ(Sini Saavala)。
ヘルシンキ在住のシニはアアルト大学出身。
アトリエ デ マチエール賞のルック(写真上)とその他の作品。シニのコレクションは、使い古したTシャツ、ブラ、パンティなどで作られているがドレッシー。汚れたもののイメージの下着から美しいものを作りたかったのだそう。
ファッションアクセサリー部門では、23歳のフランス人、ジョシュア・キャノンヌ(Joshua Cannone)がグランプリ(Grand Prix of the Accessories Jury)を獲得。作品は、ニューヨークで育ったジョシュアが日常的に目にしていたネズミや路上生活者からインスパイアされたバッグのシリーズで、現代社会を生き抜く人間と動物の関連性が創作の背景にある。
受賞者のジョシュアはニューヨークで工業デザインを学び、パリのIFM(フランス・モード研究所)を今年卒業。
一番インパクトがあったのは、シリコンで作られたネズミ形のポシェット。表面には人毛が埋め込まれている。
Photos (Runway) : Arnel Ian Dela Gente / Courtesy of the Hyères International Festival for Fashion Photography and Accessories
Photos & Text : B.P.B.Paris
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