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リーバイス®501®のユーズドストックをクリエーターがアップサイクル
「デニム de ミライ~Denim Project~」

三越伊勢丹、阪急阪神百貨店、岩田屋三越、エスティーカンパニー、ファッションコアミッドウエスト、佐藤繊維 (GEA)の6社が、サステナブルなファッションの実現を目指して業界の垣根を超えてスタートしたスペシャルプロジェクトです。素材となる<リーバイス® 501®>のユーズドストックを提供したのはアイロンプレス会社として高度な技術を長年培ってきたヤマサワプレス。手作業によって洗浄されたデニムを、国内外の約60以上のブランドやクリエーター、アーティストの手を介しアップサイクルしました。服をはじめバッグやシューズなどのファッションアイテム、家具などのライフスタイルアイテム、アートに至るまで200型以上のアイテムが提案されています。

 この記事の内容 
クリエーターがアップサイクルしたアイテム
伊勢丹新宿店 「リ・スタイル」バイヤー神谷将太さん、リーバイ・ストラウス ジャパン ディレクター橋本裕芳里さんインタビュー
三越伊勢丹×文化服装学院の作品
阪急阪神百貨店×大阪文化服装学院の作品

クリエーターがアップサイクルしたアイテム

今回のプロジェクトでは、国内外約60ものブランドやクリエーター、アーティストが参加しています。その中から代表的な数点を製作者のコメントとともに紹介します。

minä perhonen ミナ ペルホネン
(左)デニムの色や表情の違いは誰かの暮らしの痕跡。デニムが通ってきた時間を想像する喜びを感じながら新たな形から生まれる記憶を重ねてもらいたいです。
(右)普遍的なデザインを大切に作り続ける「Artek(アルテック)」のものづくりと、今回のコンセプトに共通する部分を感じたので、ものづくりのゲストとしてお迎えしました。

ANREALAGE アンリアレイジ
ファッション業界の環境負荷は、1ブランドで解決することはできません。同じ志を持ったみんなと作っていくというのは魅力的で、一過性ではなく、続けていくことに意義があると思います。

AKIRANAKA アキラ ナカ
誰かによって育てられた素材を使用して、新しい物を生み出すというプロセスは非常に貴重な体験でした。このような企画がある事で、捨てられる物に新しい価値を創造する事が出来ますし、新しい意識も生まれるのではないかと感じています。

AKANE UTSUNOMIYA アカネ ウツノミヤ
作業着として着用をされていたデニムの歴史から、世界のどこかで履かれていた味のあるデニムに手を加え、世界に1つとして他に同じものがないこのプロジェクトはとても”現在”に寄り添ったプロジェクトだと思います。

肥塚 毅
「自由は楽しいが奥が深い」 昨日までよりも、自由な物の見方を見つけたと思ったら、またすぐに次の自由な発想が浮かんで来る。これを永遠に繰り返す。

伊勢丹新宿店 「リ・スタイル」バイヤー神谷将太さん、リーバイ・ストラウス ジャパン ディレクター橋本裕芳里さんインタビュー

本プロジェクト「デニム de ミライ~Denim Project~」がスタートしたきっかけを、神谷さんと橋本さんにそれぞれの立場からのお話を伺いました。

神谷将太(かみや しょうた)
伊勢丹新宿店 「リ・スタイル」バイヤー 
2009年に伊勢丹(現在は三越伊勢丹)に入社。 伊勢丹新宿本店で婦人服の店頭販売やアシスタントバイヤーを経験し‘15年よりバイヤー職。インターナショナルデザイナーズなどを担当し‘19年より、同店「リ・スタイル」のバイヤーに就任。「ファッションの伊勢丹」を象徴する空間を担当する

橋本裕芳里(はしもと ゆかり)
広告代理店を経て、メーカーでのグローバル・マーケティングを経て、リテール業界へ。2017年10月より現職

――今回のプロジェクトのきっかけは

伊勢丹バイヤー 神谷将太さん(以下 神谷)2020年9月、ある知り合いの方から“東京の竹ノ塚に、とにかくデニムがたくさんある面白いところがある”という情報をいただきました。普段ならファッションウィークで海外出張の時期なのですが、コロナ禍ということもあり海外にも行けず国内でいろいろ情報を探していたところで、リサーチがてら訪れたのがきっかけです。

――それがヤマサワプレスですね?

神谷 はい。それまでは全く知らなかったんです。当時倉庫には6トン(全体では20トン近く)ぐらいの古着のリーバイス®の501®があって、ぐしゃぐしゃの汚れたものもあれば、洗濯が終わってきれいになっているものもありました。

――そこにあるものは廃棄するものもあるのですか

神谷 ヤマサワプレスには、状態が悪すぎて、世界中の古着マーケットでも買い手がつかないような501®のデニムが集まっていたというのは事実。世界中の古着やさんに売られていくので、そのような状態ではなかったものがアメリカに集まっており、それをヤマサワプレスが買付けていました。

――それを見て今回のプロジェクトのアイディアが?

神谷 リーバイス®の501®自体、価値のある素材だと思っていたので、これを使ってお客さまに新しい提案をしたいと思いました。

――橋本さんは最初このプロジェクトをどう受け止められましたか?

リーバイ・ストラウス ジャパン ディレクター 橋本裕芳里さん(以下 橋本) このような素材で何かできないかと、神谷さんから今回お話しをいただきました。今、お客様同士で個人の服の売買が増えてきています。幸いなことに、リーバス®はたくさんのお客様に愛されていて、古着のマーケットなどで、私たちの知らないところで売買が進んでいるのも事実。その中で廃棄直前までいったものを、ヤマサワプレスが救い出してくれているんです。だとしたら、伊勢丹さんを介してたくさんのブランドさんとのコラボレーションというのはとても素晴らしい提案だと思いました。

――リーバイス®としては、新しい服も売らなければならないですよね。そのあたりはどうお考えでしたか?

橋本 古着を否定しているわけではないんです。実際デニムはとても長持ちする素材で、それゆえにヴィンテージとして売られるのだと思います。リーバイス®としても、できるだけ長く着てほしいという理由で、日本に5店舗のテーラー・ショップがあります。そこでは、いつ買ったものでもいいので持ってきていただけると、補修やトートバッグなどアイテムを作り変えるサービスなどをしています。

――もともと作業着の素材であったデニムはとても丈夫ですよね?

橋本 デニム素材の魅力は経年変化を楽しむところ。膝のスレやひげの出かたなど、時間を経ていいものになるんですね。皆さん“デニムを育てる”とおっしゃいます。

――今回いろいろなアイテムに変化しています。丈夫だからいいところと、丈夫すぎて逆に扱いが大変だったところがあるのでしょうか?

神谷 デニムは素材が丈夫だから時代を超えて着用されます。誰もが知っている身近な素材で人種や性別、年齢も問いません。ファッションとしてのリスペクトがリーバイス501®にあるからこそ、このような取り組みができたと思います。やりはじめて意外だったのは、デニム素材を使用して洋服を生産する縫製工場が少なかったこと。ブランドのみなさん工場探しに苦労したようです。生地が厚いのでミシンが特殊なんですね。

橋本 普通のアパレルの工場だとデニム用のミシンはない場合が多いですから。そもそもデニムに関しては、色落ちや移染の関係上工場を別にすることが多いんです。ものによりますがパンツの股あたりで最大で6枚の生地が重なります。

神谷 ミナペルホネンの刺繍の生地は、はぎ合わせた布の縫い目をひらいてプレスして刺繍を施さないと針が刺さらない。なるべくうすくなるようにヤマサワプレスがやってくれました。

「ミナペルホネン」のタンバリンの刺繍を施したデニム

――ブランドは全体でいくつぐらいですか?

神谷 海外のブランドも含め60以上になりますね。洋服はもちろん、「セルジオロッシ」や「ゴールデングース」など靴や家具、アートも。同じアイテムを作る場合でも、デニムのダメージ具合で色が違ったりするので唯一無二のアイテムになります。

――ヤマサワプレスからはデニムのかたちで各ブランドにお渡しするのですか?

神谷 デニムのままものもありますし、足の部分だけ切り落としたレッグパーツや指定された大きさにパッチワークしたものなど。ブランドの要望に合わせています。

――神谷さんからブランドに要望はあったのですか?

神谷 例えば、「ミナペルホネン」の皆川 明さんとは“服だけではなくインテリアなども考えられますよね”という話をしました。あとは、ブランドらしさ。デニムを使うということだけが目的にならないようなクリエーションを。そして、個性を出してもらえるようにと。

――リーバイスさんから見た印象に残る作品は?

橋本 やはり普段は服を見ているので、興味深かったのはアーティストの方々の作品や、インテリアですね。

――今回のプロジェクトで、忘れられないエピソードはありますか?

神谷 まず最初に橋本さんに話をするときは本当に緊張しました。普通501®をリメークしたいから許可してほしいなんて言えないじゃないですか。しかもそれを販売につなげようとしているのです。なかなかハードルが高い話ですよね(笑)。

――橋本さんは神谷さんのお話をどう受け止められましたか?

橋本 リーバイ・ストラウス ジャパンに利益があるわけではないのですが、素直にやりたいと思いました。501®は私たちにとって子どものような存在。だからきちんと見届けておきたかったんです。個人的には、このようなことがもっとあっていいのにと思います。
リーバイス®で販売するすべての製品が、自社の認定工場で生産されなければならないのです。工場の認定を行うことは、ブランドとして環境負担の軽減やSDGSを実現していくためのステップとして重要であると考えています。リーバイス®のUSでは、お客様から買い取った古着をもう一度ネットで販売することもやっています。そしてイギリスでは販売することができなかった商品の一部を、アップサイクルを行い、販売することも始めています。

――今回は日本ならではの新たなこの取り組みに?

橋本 日本でもまだまだこのような機会は考えられるし、とてもいいきっかけになれたのかなと思います。

――このプロジェクトは今後も続きますか?

神谷  デニムの生地はまだあるので、続けたいですね。あと今回は6店舗の小売店だけの展開ですが、このプロジェクトをする中で、参加したいという他の企業さまからのお声もいただいたので、広げていけたらいいですね。そして今回のことがきっかけで、ご自身のコレクションで使いたいと言っていただいたブランドもありました。デニムを売ることが目的というより、あくまでファッションを軸に、こういう考えかたで作られたさまざまなアイテムが、それを通してお客様に広がって、この先いいかたちで進化することができたらと思っています。

photographs:Josui Yasuda(B.P.B)

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