LVMHプライズの合同ショールーム開催。日本人のセミファイナリスト２人もパリへ

若手ファッションデザイナーの育成・支援を目的としたLVMHプライズ（LVMH PRIZE）。10回目を迎えた今年もセミファイナリストがパリに集められ、ファッションウィーク期間中に合同ショールームが開催されました。

今回、選出されたのは22組のデザイナー。国籍は16か国におよび、その中には日本人の桑田悟史（くわた・さとし）さんと富永航（とみなが・わたる）さんの姿も。

LVMHプライズのセミファイナリストに選出された富永航さん（左）と桑田悟史さん。

同プライズを主催するLVMH執行委員会のデルフィーヌ・アルノー氏は、候補者たちの動向ついて「母国の文化や職人技を取り入れたデザイン」「革新的な素材やリサイクル素材の使用」「よりローカルで倫理的な生産システムの採用」を挙げています。

ファイナリストの発表は間もなく。優勝者には賞金30万ユーロ（約4,000万円）と、LVMHチームによる1年のメンターシップが授与されます。

LVMHプライズの合同ショールームの様子。

今年のセミファイナリストの中から、いくつかのブランドをご紹介！

「SETCHU」桑田悟史
京都出身、ミラノを拠点に活動する桑田悟史さんのブランド「セッチュウ」は和洋折衷からネーミング。その名のとおりに、和と洋を掛け合わせたデザインが特徴で、派手さはありませんが「普通のものに付加価値を加えた服、長く着てもらえる服」を製作しています。手仕事の継承、優れた機能性、上質な素材も軸にあり、フラットに折りたためる “折り紙ジャケット”、洗えてすぐ乾くシャツ、複数の着方ができるアイテムなどを提案。

写真左：「SETCHU」のコレクションより。右：デザイナーの桑田さん。

ピエール・カルダンの仕事をしていた叔母を持ち、小さい頃からファッションが身近にあったという彼は「ビームス」の販売員を経て渡英。サヴィル・ロウの老舗「ハンツマン」でテーラリングの技術を学びながらセントラル・セント・マーチンズに通いました。パリのジバンシィ、ディオール、ジョン・ガリアーノなどで経験を積み、自身のブランドを立ち上げたのは2020年。パンデミックで送料が高騰した時期だったことが、コンパクトになる服の発想に繋がったといいます。

昨年は才能ある次世代のデザイナーを発掘するイタリアのコンペティション「WHO IS ON NEXT ?」の最優秀賞を獲得。４シーズン目の発表を終えた現在、着実に業績を伸ばし、業界人から個人オーダーが入るなど、好評を博しています。

コンパクトにたためる“折り紙シャケット”。

「WATARU TOMINAGA」富永航
東京をベースにコレクションを発表する富永航さんは、2019年に設立したブランド「ワタルトミナガ」でセミファイナリストに選出。カラフルでポップなユニセックスのワードローブを提案し、ファンタジーのあるテキスタイルにオリジナリティが光ります。プリントなどのモチーフに使われるメルヘンチックなイラストやユニークなキャラクターもデザイナー自身が手がけたもの。

写真左：「WATARU TOMINAGA」のコレクションより。右：蛍光色を効かせたアクセサリーもポップ。

古着を使ったクリエイションもあり、子供服やエプロンに見られる家庭的な生地でマニッシュなアイテムを作るなど、コントラストを効かせているのもこのブランドの特徴です。「フェニミンになり過ぎないように気をつけています。Tシャツにフォークロアをミックスするなど、僕にとってはコントラストが大事」と富永さん。

武蔵野美術大学、文化服装学院を経て、2015年にセントラル・セント・マーチンズを卒業。翌年チェルシー・カレッジ・オブ・アーツの修士課程を修了した富永さんは、同年、イエール国際フェスティバルでグランプリを受賞し、シャネルの協力のもと作品を製作。フランスの現代美術館「パレ・ド・トーキョー」の招待アーティストとしてパリで制作活動をした経験もあり、現在も複数のプロジェクトに参加。マルチな才能を発揮するデザイナーです。