メッセージをユーモアに表現した
着る人が楽しむファッションを提案
『装苑』2024年5月号 掲載
「二面性」をコンセプトに、ユーモアと社会批評性を持ったコレクション展開するTSTS。デザイナーの佐々木拓也さんは留学先のアントワープ王立芸術アカデミーで体感したヨーロッパ式のクリエイションに大きく感銘を受けたという。
「アントワープでは、美大ということもあり、ファインアートが存在する意義を考え、『世の中でこの服はなぜ必要?』といった思想を育むことから始まりました。服が作れるかより、服をどう未来に残していくか、何を伝えたいかを明確にすることが大切でした。そういった学びの経緯もあり、自然とTSTSも意義の強いブランドになっています。2024年春夏では、僕自身が"死"と向き合う場面が多かったこともあり、『生と死』をテーマにしています。マイナスな死を綺麗に扱う現代芸術家クリスチャン・ボルタンスキーの作品を参照し、デザインに落とし込みました。カラフルな色やラメなどの光る素材で、重い題材をポジティブに解釈しています」
コットンとポリエチレンの混紡生地に対して、光のプリズムから抽出した瑠璃色をイメージした青いラメコーティング加工を施したコート¥176,000、中に着たシャツ¥48,400、パンツ¥88,000
ファーストシーズンに引き続き、新潟のファクトリーブランドG.F.G.S.と制作した、オーガニックコットンを100%使用したボーダートップ¥36,300、パンツ¥88,000
毎コレクション、強いテーマに対し、素材や質感、ディテールなどでキャッチーなテイストに仕上げるのは、服は楽しくあるべきと考えるから。
「自分が想像をしていなかった着こなしをしてくれるお客さんを見ると、すごく感動します。自由に楽しんで着てもらえることが本望です。それでこそファッションだと感じています」
京都のマクラメ編み職人が、光ファイバーを日本の伝統的な七宝編みで制作したトップ¥880,000
ポリエステルのオーガンジー素材に匿名の死者の目をおぼろげにプリントし、ゴーストのような雰囲気を演出したトップ¥39,600
ブランドのアイコンにもなっているギンガムチェック。シャツのセットアップには、子どもと大人を感じさせるサックスブルーを採用。シャツ¥42,900、パンツ¥39,600
リフレクター素材を使用し、生と死の狭間にある光を表現したコレクションのラストルック。リフレクターアウタージャケット¥96,800、パンツ¥49,500
アイデアやテーマ、思想、デザイン画や素材など自身の頭の中をより鮮明にするために、学生の頃から毎シーズン作成しているワークブック。’24SSのもの。
ファーストシーズンのもの。映画『独裁者(The Great Dictator)』とチャールズ・チャップリンをモチーフに緊張と緩和の二面性を表現。
ブランドプロフィール
Takuya Sasaki 佐々木拓也○1990年生まれ、青森県出身。文化服装学院卒業後、アントワープ王立芸術アカデミーに進学し、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンクらに師事。2016年の帰国以降はサカイのインターンや、友人とのブランド立ち上げなど、複数のコレクションブランド勤務を経験し、’23-’24AWコレクションから、パタンナーの井指友里恵とTSTSをスタート。Instagram @tsts_official
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EUCHRONIA/ ユークロニア デザイナー
文化服装学院卒業の宮崎さんと佐藤さんによって立ち上げられたブランド。おのおのアパレル企業のデザイナーとして勤務した後、共にイギリスへ留学。2023年4月にユークロニアをスタートさせた。 Instagram:@euchronia_official