デニムから広がる、新たな“可能性”とは?
デニムが紡ぐアート展『SETO INLAND LINK』
出展した津野青嵐さん、八木華さん、藤原裕さんらに
直撃インタビュー&デニム加工工場の取材レポートも!

2.ファッションデザイナー・八木華さんが考える
固定概念の破壊、再構築から見出す新たな価値観

東北地方に伝わる、使い古した布をつぎはぎさせた衣服の“襤褸”をテーマにした八木さんの作品。

児島の工場で出たデニムの廃材などを赤く染め、赤い襤褸(ぼろ)のドレスを制作した八木華さん。デニムと“襤褸”がもつ既存のイメージを取り壊し、新たなアプローチから再構築した表現に挑んだという。

人の手から生まれるものづくりの、圧倒的なエネルギーを体感してほしい

「これまでも“襤褸”をテーマに制作をしてきましたが、今回は、本展の目的である可能性の広がりという点から、固定観念に縛られない発想からデニムと襤褸に向き合い、赤いドレスに昇華させました。本作は工場で出たホワイトデニムの廃材を赤く染め、縫い付けていくという工程を手作業で行い、ダイナミックに仕上げています。」

作品に近づくと、緻密な針仕事が分かり、圧巻される程の力強いパワーを感じた。

「人の手から生まれるクリエイションの迫力を、細かいディテールを間近で見て、感じてもらいたいという思いがあります。どうしてここまで細かく針を刺しているのかという、背景にある人のエネルギーを感じてくれたら嬉しいです。普段の制作は基本一人で行っていますが、今回はデニムの職人さんたちとも関わりあいながらものづくりができ、クリエイションの広がりを感じられました。今後は一つ一つの制作と向き合いながらも、コラボレーションするなど、人とのつながりも広げながら新たな表現の可能性を見出していきたいです。」

八木華(ヤギ ハナ)
1999年東京都生まれ。都立総合芸術高校卒業後、「coconogacco(ここのがっこう)」で学ぶ。2017年、新人ファッションデザイナーの登竜門・装苑賞ファイナリスト選出。’18年、第19回グラフィック「1_WALL」審査員奨励賞(保坂健二朗選)を受賞する。’19年、“International Talent Support”(通称ITS)ファッション部門のファイナリストに最年少19歳で選出。主な展覧会「fragments」(2021年/art space traffic [東京・自由が丘])、「seam」(2021年/I SEE ALL[大阪・船場])など。
Instagram:@hannah.yagi

津野さんと八木さんの作品が展示された同会場では、地元の専門学生たちとデニム加工職人の手により共同で制作された、迫力ある作品の数々も並んだ。

3.「BerBerJin(ベルベルジン)」ディレクター・藤原裕さんが考える
温故知新の精神から広がる新たなクリエイション

藤原裕さんが選定したヴィンテージデニムと、デニム加工職人の手により再現されたヴィンテージデニムが並べられた。

藤原裕さんは、本展のためにヴィンテージデニムを厳選。癒toRi18株式会社のデニム加工職人により、それらを再現した作品とともに並べて展示された。

癒toRi18と以前より親交が深い藤原さん。今回、ヴィンテージデニムとリプロダクトとして新たに生み出されるデニム、それぞれが価値を高め合うことで、デニム業界の発展に繋げていきたいという。

本展の目玉ともなった藤原さんが所有する、一着700万円を超えるLevis 506XXE 1942sモデル。

デニムの価値を伝えることから文化と産業の向上を目指す

「児島のデニム工場に通うようになり、生産現場での高い技術力を実感しました。ヴィンテージの風合いを生み出す再現力は、20年以上この業界にいて、日本が断トツだと感じています。この誇るべき日本の技術とデニム文化を、より多くの人に広めていくべきだという思いから、今回、ヴィンテージデニム最大の魅力である、色落ちの素晴らしさがわかるジーンズとGジャンを展示しました。」

藤原さんが大事にしているのは、ヴィンテージとして長年愛され続けるものと、新たな技術から生み出されるものそれぞれの良さを認める価値観。

「時を経ても尚たくさんの人に評価され続けるヴィンテージデニムと、古いものへのリスペクトから生まれた新たなデニム、それぞれの良さを見て感じてもらい、デニムに興味をもつ一つのきっかけになってくれたら嬉しいです。まずは様々なジーンズを見て、どうやったらこの色落ちになるのかという些細な疑問から、歴史や背景、児島などの産地にも目を向けていってください。私自身も今回の展示を出発点に、自分の知見や所有するヴィンテージデニムを通して、素晴らしい日本のデニム文化を発信していければと思います。」

藤原裕(フジハラ ユタカ)
原宿の老舗古着屋「BerBerJin(ベルベルジン)」ディレクター。店頭に立ちながらも、ヴィンテージデニムアドバイザーとして多岐にわたりデニム産業全般に携わる。コアなマニアからの信頼も厚い、近年ヴィンテージブームの立役者。自身が配信するYouTubeの総再生回数は480万回を超える。
Instagram:@yuttan1977

ジーンズとGジャンがズラリと並んだ会場の様子。

さらに、ヴィンテージデニムの愛好家でもある、三代目 J SOUL BROTHERSの今市隆二さんが所有する、年代の古い貴重な二点も展示され、注目を集めた。

今市隆二さんの所有コレクション。Levis 501 XXの1922sモデルのジーンズとLevis 213のGジャン1930sモデルが並んだ。

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