デニムから広がる、新たな“可能性”とは?
デニムが紡ぐアート展『SETO INLAND LINK』
出展した津野青嵐さん、八木華さん、藤原裕さんらに
直撃インタビュー&デニム加工工場の取材レポートも!

2023年10月7日(土)~9日(月・祝)までの3日間、岡山県倉敷市美観地区にて開催されたアート展覧会『SETO INLAND LINK(セト インランド リンク)』。出展したデザイナーの津野青嵐さん、八木華さん、「BerBerJin(ベルベルジン)」ディレクターの藤原裕さんを現地取材し、本展の目的である、デニムを通して広がる新たな可能性について探った。

国産ジーンズの聖地として知られる岡山県倉敷市児島地区。児島にてデニムの製造加工工場を構える、癒toRi18(ユトリイチハチ)株式会社の主催により、デニム産業と地域の活性化を目的に開催された本展。

歴史的建造物が立ち並ぶ倉敷市美観地区内の児島虎次郎記念館、旅館くらしき、倉敷物語館の3会場にて展示が行われ、それぞれ異なる視点でアプローチした個性溢れるデニムのアート作品などが並んだ。

1.アーティスト・津野青嵐さんが考える、
大切な人への思いから生まれるクリエイション

中央にあるのが津野さんが祖母を思い、デニムと3Dペンで制作した作品。その周りに子供たちが児島のデニムを使って自由な発想で考えた大切な人への服が並んだ。

津野青嵐さんは、発達に遅れや不安を抱えた児童を対象とした倉敷のデイサービス「パントーン・フューチャー・スクール」に通う子供たちとともに、大切な人のために作る服をテーマに制作したインスタレーションを発表。デニムの廃材などを使い、子供たちの純粋な発想から生まれた自由な世界観が空間に広がった。

精神科病院にて看護師の経験を積み、現在は自身の祖母の為に衣装制作を行いながら、コントロール困難な自身の身体との付き合い方を研究している津野さん。今回スクールの子供たちとの共同制作を経て、何を感じたのか?

困難との上手な付き合い方をファッションを通して見出していきたい

子供たちとの共同制作は初の試みだったという津野さん。子供たちを始め、様々な人との関わりから自身の創作活動に向き合うきっかけにもなったと語る。

「今回の制作では、スクールに通う子供たちの服作りに対する力強いエネルギーにとても驚かされました。また、子供たちや周りのスタッフみんなで支え合い、生まれるものづくりの素晴らしさにも大きな感動を覚えました。」

本作のテーマは、大切な人のためにつくる服。津野さんが大切にしているのは、絶対的な祖母の存在だという。

「私は大好きな祖母への服を作っている時が、一番心がときめきます。祖母の存在こそが、私の創作の原動力になっています。なので、同じように子供たちが一番大好きな、大切な人の存在を紹介し合うことから始めました。その人の身になってデザインを考え、喜ぶ姿を想像しながら手を動かす楽しみを共有してみたかったのです。子供たちと大切な相手との関係が垣間見える表現や、想像以上に熱中して作る姿を見て、自分がクリエイションを通して表現したいことを改めて実感できました。今は、病気や障害のみならず、生活上のあらゆる困難さを抱える人々が、どのようにその困難さと付き合っているのかを、ファッション表現のプロセスを通して研究しています。今回出会った子供たちも含め、彼らを前向きにサポートできるような社会や環境づくりを、今後もファッ ションを通して追求していきたいです。」

津野青嵐(ツノ セイラン)
1990年生まれ。看護大学を卒業後、精神科病院で約5年間勤務。病院勤務と並行して「coconogacco(ここのがっこう)」で学ぶ。2018年、欧州最大のファッションコンペティション“International Talent Support” にて日本人唯一のファイナリストに選出され、3Dペンで作った服が注目される。’19年より“当事者研究”発祥の地である北海道“浦河べてるの家”(精神障害当事者等の地域活動拠点)へ勤務。’21年より東京工業大学修士課程入学。伊藤亜紗教授の研究室で学びながら、「ファット」な身体との付き合い方を、衣服の共同制作を通して研究中。  
Instagram:@seirantsuno 

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