【篠原ともえさんのインタビューも】
文化服装学院×HOTSOXのコラボアイテムが発売!

先輩、篠原ともえさんから文化服装学院の学生たちへ。そして自身のクリエーションのこと

― 今回の文化服装学院の学生たちの作品で気になったのはどれですか?

ゴッホのタッチを切り取ってアプローチしていた靴下があったのですが、あるものにをただダイレクトに取り入れるではなくて、もう一つアイディアを加えていたのが良かったですね。ミロのヴィーナスをモチーフにした靴下もそう。ミロのヴィーナスの商品は既にあるのですが、蛍光イエローのアクセントをプラスしてみたのもオリジナリティがありましたね。アートとコミュニケーションをしている。そういうものに惹かれました。

― 個性がそういうところに出てくるわけですね

やっぱりオリジナリティを求めて手に取るアイテムだと思うので、作り手も楽しんでデザインし、買ってくれる人がどんなコーディネートをしようかとわくわくできるようなものがいいのだと思います。それがきちんと出来ているのが素晴らしいですね。

― もしそれらを篠原さんが履くとしたら、どのようなコーディネートをしますか?

私はデザイナーなので、コーディネートだけではなく一枚絵のように世界観を考えます。靴下に合わせてオリジナルスタイルとか、背景も同じ柄にしてみたりとか。どのように見せるとそれぞれのアイテムが際立つかを、トータルディレクションし組み合わせたいですね。

― 「HOT SOX」はSDGsのことをきちんと考慮したモノづくりをされていますが、篠原さんがもし靴下の製作にこのようなことを求められたらどのようなことを考えますか?

最近制服のデザインをさせていただいているのですが、必ずといっていいほどサステナブルな取り組みを求められます。すでにそれが一つの条件になっているんですね。今、再生ポリエステルってとても進化していて、例えばポリエステルの生地は、ペットボトルなどを再利用した再生ポリエステルに変えようとする動きが繊維業界の中でもあります。制服の中にもそのようなものを取り入れているんです。なので、素材から考えていくのはいいかなと思います。再生ポリエステルで靴下を作って、それにつける付属のアイテムもリサイクルのパーツをつけたり。同素材のパッケージもいいですよね。買ってくれた人の手もとに届くまでを考えないといけないと思います。

― 最近は買い物をしてもパッケージされない状態で渡されることが多く、少し買い物をすることにわくわく感が薄れているような気がします。

こうでなければいけないということにとらわれないで、自然とサステナビリティに繋がっていくのが理想ですね。そのようなことは学生さんたちも向き合っていかなければいけないと思いますが、学生さんたちはとても柔軟な考え方を持って対応していくんだと思います。私が学生の時は、ウェアラブルコンピューターなど、とても想像しがたいものを服にするということがあったんですけど、今は地球にやさしくとか、環境にやさしくという身近なことがテーマとなっているので受け入れやすいですね。

学生時代にしておくべき大切なこと

― 文化卒業の先輩として、この先社会に出た時のことなどを考えて今やっておくべきことなどアドバイスをするとしたら?

すごくシンプルなのですが、授業で出された課題ときちんと向き合うことです。今回のコンペもその課題の一つだと思いますが、私自身卒業して20年以上たった今でも、自分がやった課題をみることがあります。それは自分でも愛すべき作品。エネルギーにも満ちていています。一切課題に手を抜くことはしませんでした。デビューもしていましたし忙しかったはずなのですが、仕事の合間にこなすのではなくきちんと課題と向き合う時間をとっていました。それがまたメディアに出るときのアイディアソースになっていたんです。課題をきちんと丁寧に仕上げたことが、今もデザインの仕事に生きているんです。仕事やプレゼン資料に向き合うことに直結しています。授業が終わっても先生に課題を見せて、先生に助言をいただくのはとても大切なことだと思います。

― 時間がない中大変なことでしたね。

そうですね。ただ、やっぱり好きなことだったから。好きということが続けさせてくれたのだと思います。

― 辛いこともあったと思いますが、学生時代楽しかったこと嬉しかったことは?

それも課題づくりですね。作業がとても楽しかった。課題って自分にとって未来なんですよね。自分と向き合う時間の中で、自分がどういうものが好きで、どういうものを世の中に届けたいかっていう、原体験を探るようなことにもなっていたんです。クリエイティビティを育ててくれましたね。

― 具体的にどのような課題がありましたか?

いちばん大変だったのが“1000枚ドローイング”。その名の通りドローイングを1000枚描くのですが、矢島 功先生というモード・ドローイングの先生がいらして、矢島先生の授業はとても大切にしていました。一番大変だったので、そのドローイングは今でも宝物です。A3ぐらいの画用紙に1年生の時はモノクロでデッサン、その後人物のデッサンも。仕事の現場では俳優さんの手のデッサンをしたりもしました。テレビの現場ではいろんなモチーフがあふれていたので、時間があれば描いていました。そこからライブの衣装のデザインが浮かんだり。出来上がったドローイングは矢島先生に見ていただくのですけど、かなり具合的に直していただいて。矢島先生は本もたくさん書いていらして、出会えて本当に良かったと思っています。

これからの創作活動について

― 今日の服はご自身で作られたものですが、今気になるファッションはありますか?

自分が気になるのは着物からインスピレーションを得た服。着物は四角いパターンで作られているので、大胆なパターンでできている服は魅力を感じますね。渋谷ヒカリエで開催した個展「SHIKAKU」展がスタートです。余剰を出さないという考えから始めた服作りです。

― バイヤスになる部分ができるので、動いたときにきれいな表情が出ますね

ありがとうございます。それはやっぱり松任谷由実さんや嵐さんの衣装を手がけた経験が生きていますね。それこそ学生時代に、ポーズをとったり動いている瞬間のデザインを描いていたからだと思います。大学の矢島先生の授業が生きているんです。それも学んだことの一つで、服と一緒に世界観もアートディレクションします。

― アーティスト、デザイナーとして一番大切にしていることは?

ルーツですね。私の祖母が着物のお針子さんだったんです。学生の頃は好きな物ややりたいことがいっぱい溢れていて、どの方向性に定めるか選択肢がたくさんあったんです。でも今は気持ちが研ぎ澄まされてシンプルになりました。長く愛されるものをつくりたいという気持ちが、自分のルーツから生まれてきたものだと確信が持てました。いろんなところからアイディアソースを取り入れるのもいいけれど、自分のなかに存在するものをもう一度見つめ直して、それを膨らませる。そこに気づけたのは良かったです。

― 今後挑戦したいことは

ファッション以外も挑戦したいと思っています。ユニフォームはやらせていただいていますが、今後プロダクトだったり、空間だったり。アートディレクターの部分を広げていくのが私の課題です。

photograph:Norifumi Fukuda(B.P.B.)

篠原ともえ Tomoe Shinohara

文化女子大学短期大学部服装学科ファッションクリエイティブコース・デザイン専攻卒
1995年ソニーレコードより歌手デビュー。歌手・ナレーター・俳優活動を経て、現在は衣装デザイナーとして活動。2022年、デザイン・ディレクションを手掛けた革きものが、国際的な広告賞であるニューヨークADC賞のブランドコミュニケーションデザイン部門でシルバーキューブ(銀賞)、ファッションデザイン部門でブロンズキューブ(銅賞)を受賞。
同作品は東京ADC賞にも選ばれ、銀座クリエイションギャラリーG8で開催中の『日本のアートディレクション展2022』にて、11月30日(水)まで展示されている。

HOTSOX
WEB:https://www.hotsox.shop/
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WEB:https://prop-bunka.com/
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