2025年春夏オートクチュールウィークが1月27日から4日間の日程で開催。
今シーズンの必見のショーや気になるトピックスをご紹介します。

ヴァレンティノは、アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)が手がける初のオートクチュールコレクションを発表しました。
タイトルは「ヴェルティジニュー(VERTIGINEUX)」、副題は「リストの詩学」です。ヴェルティジニューは、フランス語で目がくらむような感覚を意味します。ショー会場の座席に置かれていたのは、A4紙に印刷された分厚いリスト帳。そこには、まもなく登場するオートクチュール48点に関するワードが、ルックごとに書かれていました。



ミケーレは、イタリアの記号学者ウンベルト・エーコの著書『芸術の蒐集』(原題:Vertigine della lista/リストのめまい)で考察されるリストの概念を引用。エーコはリストが単なる情報整理の手段ではなく、それが持つ「秩序を生み出す役割」と「無限を示唆する役割」という二重の性質に注目し、人間の思考や文化に根ざした表現形式であることを示しています。

「私にとって初めてとなるオートクチュールショーの準備期間中、これらの考えが私を支えてくれました」とミケーレ。
「それらは途切れることのない、潜在的に無限にある言葉のカタログとして、ユニークで限りある、つまり蓄積と並置によって進む非文法的なリストとして、ふたつとないドレスを想像するよう私を促しました」

例えば、ファーストルックのドレスのリストには「1300時間の手仕事」「プレイフル」「中世」「四角形」「クリノリン」「チュール」など、約80のワードが列挙。物質的な要素と非物質的な要素が共存し、最後に「エトセトラ」を付け加えることで、終わりのない無限性を表しています。

「それぞれのドレスは単なる物体ではなく、むしろ重要な網の結び目であり、視覚的で象徴的な記憶の痕跡を残す生きた地図です。それは、ありそうもない組み合わせが調和を見出し、さまざまな時代、文化を思い出し、過去の物語の残響が現在に共鳴する物語のアーカイブなのです」


ショーではステージに立ったモデルの背景に番号とリストのワードが掲示され、フィナーレにはストロボライトの中を全員で駆け抜けるという演出。オートクチュールの崇高さをまといながら、ミケーレ流のマキシマリズムはさらに研ぎ澄まされ、まさに目がくらむようなコレクションでした。


ショーのフィナーレ。

ラストに登場したミケーレは、舞台中央で深くお辞儀。
























多種多彩なプリーツやフリル、リボン、水玉、ヴァレンティノ・レッドなど、コレクションにはメゾンのコードがしっかり組み込まれている。18世紀風クリノリンドレスやベニスのカーニバルを思わせる豪華なマスクが秀逸。
















































Photos : Courtesy of Valentino
Text:B.P.B. Paris