渋谷の街からファッションとアートを発信するイベント「渋谷ファッションウイーク 2022 春」が閉幕。今回のハイライトとなりフィナーレを飾る3月31日のランウェイショー「SHIBUYA RUNWAY」には、渋谷のユニークヴェニューから、デザイナーの岡﨑龍之祐が手がける新進気鋭のファッションブランド「RYUNOSUKEOKAZAKI」が登場。最新コレクションをオンライン配信にて発表した。
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2021年9月に、東京ファッションウィークで発表されたコレクション「000」は、日本古来の土器の造形や装飾、自然と対峙する人々の営みに着想をうけた〈JOMONJOMON〉と、自然界に存在する色彩やフォームを想像した〈Nature’ s Contours〉のふたつの立体的なドレスシリーズによって、岡﨑のクリエイションの根幹に通底する「PRAY(祈り)」と「人と自然の調和」というラディカルなテーマを明らかにした。
連番で記される今回のコレクション「001」は、「000」と同様に「手を動かし続けて初めて発見できるかたちや湧き上がる昂揚感」にならび、素材の探究とフォルムの再考を経て、彼が直観的に志向する造形にまつわる美学を、より明瞭に表現することに力が注がれた。
デザイナーが生まれ育った広島にあり、たびたび家族と訪ねたという厳島神社の鳥居、少年期の岡﨑さんが絵日記に描き続けた昆虫や葉脈の姿形など、知見を得る以前に吸収していたナチュラルなインスピレーションが、シンメトリックな均衡を誘引。軽量のチューブで畝畝とした輪郭がかたどられ、生産が終了したテキスタイルの中から厳選された薄いカットソーやベロアのファブリックが、しなやかなテンションをもって視覚的な驚きを生み出した。大きく伸びるトレーンがリズミカルかつダイナミックに揺れるさまは見る人の心を掴んで離さない。
伝統的なファッションエデュケーションの外側で、視覚伝達(ヴィジュアルコミュニケーション)に関連するさまざまな領域 を学んでいた自身の創作の手段として服作りを選択した岡﨑さんにとって、身体を中心とした造形は「3Dグラフィック」と言い換えることができる。身体とファブリックのあいだに存在する間(ま)も、人の歩みに連動する動的なシーケンスを想像し、空間的に捉えられている。「001」では、巨大なドレスのフォルムに緩急を与えるだけでなく、ガーメントの内側にある空間的余白への関心も浮上。新たに、ハードチュール素材を湾曲的にカットし、ロックミシンでトリミングすることで生まれる輪郭線の重なりと、光の反射の具合で、ドレスの立体性を強調する試みにも注目したい。
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東京・渋谷の建築中の巨大ビルの中を、23のドレスをそれぞれ身にまとう23 名のモデルが、煌々と光を放つ壮大な照明に向かって、真っ直ぐに地を踏みしめて歩いていく様子はまさに圧巻。「昆虫が街灯に引き寄せられているみたい」と岡﨑さんは笑いながら、「強烈な光は未来のようでもあります。もしかしたら、目がくらむほどです。まだ未完成ながら力強い骨組みが圧倒的なパワーを発する空間に、祈り、平和、人の営みについて思考し続けながら手を動かしたドレスが現れることを想像しました。そこには、未来を生きることへのエネルギーが、刻々と立ち現れていくはずです」と語った。
「祈りが込められたものは人の心に強く作用し、想像力に寄与し、感情を動かすことができる」と信じる岡﨑さんにとって、ファッションを介した対話ともいえるそのどれもが、未来の創作の活力に変換されていく。今後の活躍にも期待大のデザイナーだ。
岡﨑龍之祐
「RYUNOSUKEOKAZAKI」1995年生まれ、広島出身。2021年に東京藝術大学大学院研究科デザイン科を首席で卒業。在学中から人間と自然の調和をテーマに作品を制作し、「コミテコルベールアワード2018」でグランプリを、「第69回 東京藝術大学 卒業・修了作品展」で買上賞を受賞する。21年9月には22年春夏シーズンの「楽天ファッションウィーク東京」に参加。
WEB : https://ryunosukeokazaki.com/
Instagram : @ryunosuke.okazaki