mukcyen(ムッシャン)2026-’27年秋冬コレクション-
マリー・アントワネットやカフカの小説を着想に衣服の実存を物語る

2026.04.13

2026年3月16日(月)〜21日(土)の会期で開催した「Rakuten Fashion Week TOKYO 2026 A/W」。JFWO設立20周年を迎え「世界の継ぎ目となれ」というテーマを掲げる今季では、全33ブランドによる新たな20年への一歩を刻むクリエイションが披露されました。
装苑ONLINEでは、東京のファッションシーンを牽引する実力派から、今季デビューする注目のニューカマーまで、個々の美学が放たれる最新のコレクションを、独自の視点でお届け!


デビューから2年、ムッシャンは昨年の春夏コレクションで初のショーを開催、今季はファッションウィーク最終日のラストを飾りその存在感を印象付けた。

インフルエンサーやモデルとしても活動するデザイナーの木村由佳さんは、複数の役割の狭間で葛藤し、自身の在り方を模索し続けてきた。その揺らぎは、ブランド設立以前から続いているという。

今季はマリー・アントワネットやカフカ『変身』を着想源に、「実存」と「不条理」をテーマに据える。“フランス国王ルイ16世の王妃”という役割を背負いながらも、宮廷のファッションアイコンとして生き、革命による不条理な死を受け入れることで一人の人間へと回帰したアントワネットの姿が木村さんの心情と重なった。

ショーの幕開けを飾るファーストルックは、純白の総レースドレス。首元には中世ヨーロッパの貴族のようなラフカラーを取り入れ、弱冠16歳でオーストリアからフランスへ嫁いだアントワネットのあどけなさと気高さを想起させる一着。

続いて、ファーストシーズンから継続して展開されているコルセットを取り入れたルックが現れる。オールホワイトのレイヤードで構成されたスタイリングは、たっぷりとしたオーバーシルエットをコルセットや裾のドローストリングでシェイプさせることで、視覚的なメリハリを生んでいた。

ロココ時代を想起させる、アイコニックなアイテムやディティールも登場。ファブリックの使い方やフォルムの強調といった当時の“精神”を抽出し、現代的なバランスへと落とし込んでいる。

また、生地の再利用を前提に、はぎ目を極力つくらなかった当時の背景を踏まえ、今季は色彩に頼るのではなく、素材そのものの魅力を引き出すことに主眼を置いた。白、黒、グレーを基調としたミニマルなカラーパレットのなかで、素材の質感やレイヤリング、アイテムの組み合わせによって、多様なスタイルが提示されていた。

美容への関心が高いデザイナーが、シーズンごとにアップデートを重ねてきたシグネチャー「セカンドスキン」にも注目したい。今季は、繊維にビタミンEを練り込み、より肌に寄り添う存在としてインナーを展開。洗濯を繰り返しても効果が持続しやすい加工が施されている。

本コレクションでの下地にある「実存」とは、あらかじめ決められた役割ではなく、自分の選択や行動によって「自分が何者か」を形づくっていくという考え方のこと。衣服を選ぶという行為そのものが、自分自身を形づくる神聖な営みであることを、静かに、しかし力強く訴えかけた。

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