FETICO(フェティコ)’80年代のノスタルジックなムードからミステリアスな女性像を描く
Rakuten Fashion Week Tokyo 2025 S/S レポート

2024.09.06

舟山瑛美さんがデザイナーを務めるFETICO(フェティコ)が、Rakuten Fashion Week TOKYOで2025年春夏コレクションを発表した。会場は東京タワーのふもと、「STAR RISE STUDIO」。楕円状の大型モニターに、まるで水中にいるような波打つ映像が投影され、そこに今シーズンのテーマである「The Secrets」の文字が浮かび上がると、ランウェイがスタート。

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今季は、舟山さんがパリのヴィンテージショップで見つけた1980年代のビスチェとテーパードパンツをきっかけに、’80年代のデザインに魅了される理由を探り始めたことが出発点。’80年代に活躍したスーパーモデルで俳優のヴェロニカ・ウェブをミューズに据え、彼女の可愛らしくも洗練された雰囲気を落とし込んだ。また、もうひとつの着想源となったのが、ピーター・グリーナウェイ監督によるサスペンス映画『Drowning by Numbers(邦題:数に溺れて)』(’88年)。この映画の淡く儚い空気感や、クラシカルな衣装の要素も色濃く反映している。

今季、目立ったのはヴィンテージライクなポルカドット柄のアイテム。マキシ丈ドレスは大胆に胸元をカットし、太ももの付け根のラインに沿って柄を切り替えることでフェミニニティを加速させている。キュプラツイルにシワ加工を施すことで、古着の質感を表現。また、ベルト付きのウエストバックも制作し、’80年代らしいウエストマークのスタイルを現代的に取り入れている。

随所に見られるバラのモチーフは、『数に溺れて』から影響を受けて制作。立体的なバラのモチーフが浮かび上がるビスチェやオーガンジーで作った大ぶりのヘアアクセサリー、ノスタルジックなバラのモチーフを散らばせたセットアップワンピースなどが登場。

また、岡山で加工したオーガニックコットンのデニムシリーズにも、バラ柄を織り上げた。ジャカードデニムのコルセット風のキャミソールやハイウエストパンツ、エプロンドレスなどに展開。

ブランドが得意とするテーラードは、今季も健在。クロップドジャケットとシースルーベストを重ねた3ウェイのテーラードジャケットをはじめ、立体的な薔薇のビーズ刺繍をのせて胸元にギャザーを寄せたベスト、取り外し可能なサスペンダー付きのワンピースなど、造形的でユニークなディテールの数々が目を引いた。中でも、脇腹から大胆にカーブしたカッティングを施したダブルジャケットは80年代のモードな雰囲気を漂わせている。

カラーパレットはブラック、ホワイト、ブラウンなど落ち着いた色を基調に、レトロな淡いブルー、ライムグリーン、ラベンダー、ピンクを差し色にプラス。コレクションをロマンティックに彩った。

また、ブランド初となるスニーカーが登場。本革ボディに2連のベルクロストラップを施し、底には「Vibram(ヴィブラム)」の履き心地に優れたソールを合わせている。スクエアトゥのすっきりとしたフォルムで、フェティコ流のスニーカーを作り上げた。このスニーカーはブラック、ホワイト、シルバーの3色が登場した。また、前シーズンから継続してアイウェアブランド「BLANC (ブラン)」とのコラボレーションサングラスも制作。’80年代のムードを意識したテレビジョンカットを採用している。

ラストルックには、チュールをふんだんに使ったマキシドレスが登場。オフショルダーにコルセットのディテールを組み込み、ブランドらしくフェティッシュな印象に。絶妙な透け感がミステリアスな色気を放つ、今季らしい締めのルックとなった。

ショー後の囲み取材では「最近はSNSを通じて自分をより良く見せようとしたり、色々とさらけ出すことが良しとされる風潮ですよね。だからこそ、私生活が分からない秘密めいた人に惹かれました。同時に、誰しもがそういった部分を抱えていると思い、それはとても魅力的なことだと感じています」と舟山さん。’80年代のノスタルジックな雰囲気が醸し出すミステリアスな色気を、ブランドが得意とするボディコンシャスを存分に生かして表現しつつ、さらにそれを現代的に昇華したコレクションとなった。


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