CFCL(シーエフシーエル)は、人の手技とコンピューターニットの融合で新規軸を打ち出す。
2025年春夏パリ・ファッションウィークより

2024.09.25

2024年9月23日から10月1日まで、9日間の日程で2025年春夏パリ・ファッションウィークが開催され、100以上のブランドが公式スケジュールで新作を発表。今シーズンの必見ブランドをご紹介します

高橋悠介がデザイナーを務めるCFCL(シーエフシーエル)が、パリ・ファッションウィークの公式スケジュールで2回目となるランウェイショーを発表。会場は前回と同じく、ファッションウィークの中心地であるパレ・ド・トーキョーのギャラリー「Saut du Loup」。無機質な会場の中央に敷かれたランウェイは鮮やかな暖色のグラデーションで、真夏の太陽や夕暮れの強い光を想起させる。やがてバンジョーをはじめとする弦楽器による即興的な音楽が響き渡り、会場は一気に異国情緒あふれるムードに包まれた。この音楽を手がけたのは、スロベニアの現代音楽トリオ「Širom」(シーロム)だ。

最近、文化人類学に興味を持っているという高橋さん。フランスの社会人類学者、クロード・レヴィ=ストロースが提唱したブリコラージュ(器用仕事)の概念をインスピレーション源とし、まずは手を動かして、型にはまらないものづくりを試みたという。そうして生まれたコレクションは、自由で大胆なムードに満ちていた。

コレクションの前半は、平面的な造形によって、肩や袖にスクエアの布の余白が生まれたアイテムで彩られた。体から離れた余分の布は、時にドレープの落ち感を伴ってひらひらしたりパタパタしたりと風によって表情を変え、モダンでエレガントな印象に。

中盤ではCFCLのシグネチャーである立体的な造形のニットが登場し、前半とのコントラストを成す。ミドル〜ロング丈が主流のこのブランドにおいて、ワンピースとスカートの膝上丈も新鮮に映えていた。

さらにコレクションが進んでいくと、オーロラの光を放つ装飾つきのシャツやスカート、ショートパンツがセットアップで登場。あくまでも日常着の範疇を逸脱しないモードなアイテム作りを貫いてきた同ブランドにおいて、こうした生地表面への装飾は新機軸。

さらに驚かされたのは、プリミティブな印象を受ける原色の柄のルック。「ボーダー、ストライプ以外の柄を初めて作った」というCFCL。島精機によるホールガーメント(R)などコンピューターニットを用いた創作で知られるデザイナーの高橋さんが、今季は伝統的な手仕事に着目し、注染やイカット(絣布)の手法で柄作りを行ったという。イカットは織物を指すが、リサイクルポリエステルのニットを制作するCFCLでは、これを「ニカット」(ニット×イカットの造語)と呼んでいるそうだ。

スカートやドレスに展開されたフリンジニットの野生的な力強さを経て、コレクションは有機的な形が連なる透かし編みのドレスでフィナーレを迎えた。フリンジニットも透かし編みのアイテムも、コンピューターニットをプログラミングする際に、あえて最多2,000ほどの穴を設計することで制作したものだという。フリンジアイテムは、さらにその空いた穴に人の手で同素材のフリンジを通していくという、途方もない手仕事で作られている。

「コンピュータープログラミングと人の手、それぞれでしかできないことを融合した。伝統の染め技法で柄を作ることも含めて値段が張ってしまうことも行っているが、面白いものが出来上がった。そういうものを作っていくようなフェーズに(ブランドが)来たかなと思う」と、ショーの終わりに高橋さんは語った。

Courtesy of CFCL 
photographs : Koji Hirano
text : SO-EN

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